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――檜山に対し『予言者』が告げた『未来予知』について。彼は一定の理解をしていた。
本来であれば〝予知〟や〝予言〟というものを信用してこなかった檜山。
彼がそれらを信じないのには、他にも訳があった。
異界から帰還した二番目の子供――のちに強力な固有刻印と天性とも呼べる魔術センスから、士征一位と魔導一級師、二つの最高位を得る存在へと成長をする。
現在は『百拳赤手』と呼ばれている。中枢機関の中でも重要な戦力となっている少女。
少女は人類が初めて閉ざされた異界の中で叛旗を翻した『開拓者』の中心人物。
なぜ、彼らメンバーは他の自警団が行わなかった『爆心地』への特攻を行ったかというと、全ては少女が授かったという『神託』と呼ばれる謎の声によって導かれたからだという。
彼女は未来を視て――一度も訪れたことの無い土地――新宿に次元の孔がある事を読み取った。
どこまで、周りの人間の信用を集めたのかは知らないが『開拓者』の作戦に参加しなかった帰還者の証言によると、二十は下らない優秀な刻印使いが参加したそうだ。
当時……まだ対異形武器である『魔術兵器』が開発されていなかったことを考えると、ほとんど生身の状態で爆心地まで到達したことになる。
異形についても、現在よりさほど数はいなかったと推測されるが、第一次異形進攻で人類が手も足も出なかった上位種が、中心地には多く点在していたはずだ。
まだ異界化が進んでいなかったとはいえ……彼女たちの功績は言葉通りの奇跡である。
誰もが賞賛する中――ごく数名は、それら功績に対して不信を感じていた。
多くの刻印持ちが特攻を仕掛け、生き残ったのは少女一人だけ――残りは全て全滅。
しかも、両目を失った状態で爆心地から生還したのだ。
檜山が所属することになった『第一期対異形征伐試験小隊』で初めて見た印象は、ただの子供。
彼女曰く『神託』は彼女自身も詳しく知らない。誰から与えられる言葉は、もう聞こえてこないらしい。
どうして神託が受けられなくなったのか。どうして爆心地に特攻など仕掛けようと思ったのか。
説明を聞いても、全てが曖昧にして矛盾に塗れていた。
己が歩んできた人生観もあって、檜山は神がかった超常を信じない。ましてや都合のいい流れと筋書きにはきっと〝タネ〟がある。消えるコインの奇術と同じ。コインは決して消失しない。同じ物を複数用意した錯覚にしか過ぎない。少女が『開拓者』を結成したのにも、我々が想像も付かない裏があるのではないかと勘繰っている。
…………未来は、誰にも読み取ることはできない。
そう簡単に、世界の行く末が見えてたまるか。
見えているのならば、どうして内界の状勢は改善されない?
見えていても、進んで動こうとしないからか?
仮に未来を視る人間がいたとして、傍観しているだけならば、それは見えていないに同じだ。
行動し、主張しなければ『予知』などは存在証明されない。
訪れるかどうか判別できない、来るであろう時間の先を告げられたとして、だれが全幅の信頼を注ぎ込めるというのだ。
固定観念に近い檜山の思いは固くあって。『百拳赤手』に対し、欺瞞を振りまく存在。妄想と現実の垣根が解らなくなった狂気の啓発者として見ていて、冷たい扱いをし続けてきた。
……そんな檜山であったが、ここに来て疑念そのものが揺らぎ始めていた。




