表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
74/325

<5>-4


 ――檜山に対し『予言者』が告げた『未来予知』について。彼は一定の理解をしていた。

 本来であれば〝予知〟や〝予言〟というものを信用してこなかった檜山。

 彼がそれらを信じないのには、他にも訳があった。



 異界から帰還した二番目の子供ディセンバーズチルドレン――のちに強力な固有刻印と天性とも呼べる魔術センスから、士征一位(ファースト・サイファ)魔導一級師(グレードワン)、二つの最高位を得る存在へと成長をする。

 現在は『百拳赤手(ハンドレッド)』と呼ばれている。中枢機関の中でも重要な戦力となっている少女。

 少女は人類が初めて閉ざされた異界の中で(はん)()(ひるがえ)した『開拓者(トレイルブレイザー)』の中心人物。

 なぜ、彼らメンバーは他の自警団(コロニー)が行わなかった『爆心地(グラウンド・ゼロ)』への特攻を行ったかというと、全ては少女が授かったという『()()』と呼ばれる謎の声によって導かれたからだという。

 彼女は未来を視て――一度も訪れたことの無い土地――新宿に次元の(あな)がある事を読み取った。

 どこまで、周りの人間の信用を集めたのかは知らないが『開拓者(トレイルブレイザー)』の作戦に参加しなかった帰還者の証言によると、二十は下らない優秀な刻印使いが参加したそうだ。

 当時……まだ対異形武器である『魔術兵器(A・U・W)』が開発されていなかったことを考えると、ほとんど生身の状態で爆心地(グラウンド・ゼロ)まで到達したことになる。

 異形についても、現在よりさほど数はいなかったと推測されるが、第一次異形進攻で人類が手も足も出なかった上位種が、中心地には多く点在していたはずだ。

 まだ異界化が進んでいなかったとはいえ……彼女たちの功績は言葉通りの奇跡である。



 誰もが賞賛する中――ごく数名は、それら功績に対して不信を感じていた。



 多くの刻印持ちが特攻を仕掛け、生き残ったのは少女一人だけ――残りは全て全滅。

 しかも、両目を失った状態で爆心地から生還したのだ。

 檜山が所属することになった『第一期対異形征伐試験小隊』で初めて見た印象は、ただの子供。

 彼女(いわ)く『神託』は彼女自身も詳しく知らない。誰から与えられる言葉は、もう聞こえてこないらしい。

 どうして神託が受けられなくなったのか。どうして爆心地に特攻など仕掛けようと思ったのか。

 説明を聞いても、全てが曖昧にして矛盾に塗れていた。

 己が歩んできた人生観もあって、檜山は神がかった超常を信じない。ましてや都合のいい流れと筋書きにはきっと〝タネ〟がある。消えるコインの奇術と同じ。コインは決して消失しない。同じ物を複数用意した錯覚にしか過ぎない。少女が『開拓者(トレイルブレイザー)』を結成したのにも、我々が想像も付かない裏があるのではないかと勘繰っている。



 …………未来は、誰にも読み取ることはできない。

 そう簡単に、世界の行く末が見えてたまるか。

 見えているのならば、どうして内界の状勢は改善されない? 

 見えていても、進んで動こうとしないからか?

 仮に未来を視る人間がいたとして、傍観しているだけならば、それは見えていないに同じだ。

 行動し、主張しなければ『予知』などは存在証明されない。

 訪れるかどうか判別できない、来るであろう時間の先を告げられたとして、だれが全幅の信頼を注ぎ込めるというのだ。



 固定観念に近い檜山の思いは固くあって。『百拳赤手(ハンドレッド)』に対し、()(まん)を振りまく存在。妄想と現実の垣根が解らなくなった狂気の(けい)(はつ)者として見ていて、冷たい扱いをし続けてきた。

 ……そんな檜山であったが、ここに来て疑念そのものが揺らぎ始めていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ