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「そんなに動揺しなくても良いのに……ヘヘヘ。面白いヤツ」
「――――にぶちん」
「……へ?」
「なんでもないよン」
馬鹿話を掘り下げすぎたと思った七代は本題に戻し、後ろ手の体勢。優しい目で宗二郎を見る。
「改めてあんがと。……もし、ナナヨだったら、同じ事はできない。……あの時だって、最初に行動をしたのはトードーだった。みんな何もできない中。トードーだけが、動いた。コレは三人しか知らない事実だよ。無かったことだったとしても、君が否定的だったとしても、ナナヨはありがとうを言う……ほんとうに、ありがとう」
「……………………………………っす」
納得は仕切れていないが、真剣に言う七代に、宗二郎も顎を突き出して返事をする。
「どうやっても割り切れないのだろうけど、君の選択は、間違いじゃないって――今日を過ごせるみんなが、その証明じゃないのンかな?」
過ぎ去ってゆく生徒の流れ。全てではないが、救えた人間がいたのだとしたら。
それは――自分が目指したものであって。
この命が――ようやく生きている価値を見出せた瞬間でもあった。
「んで、さっそくだけど……まだ刻印を使った罰は生きていまして」
宗二郎は膝から崩れた。なんだか壮大な気分に浸っていたというのに。ぶち壊しである。
七代は背負っているバッグから携帯端末を取り出し、なにやら操作する。
すると、宗二郎のポケットの中で、端末が通知を知らせた。
見てみると、公正委員会からの正式な通達。個人の差出人の名は出ていないが、七代であるのは一目瞭然だった。
「……メールじゃなくても、口頭で言えば良いのに」
「気にすんなぁ。……ちなみに、異形を倒したヒーローでも、まだチミの刑期は残っている事を忘れずに。にげんなよぉ」
「へいほい。わかってますよぉー」
携帯端末の画面には、明日の集合場所。
――放課後。橋を渡った先に集合。
「あれ? 明日……? 今日はなんかやらなきゃいけないんじゃないんですか?」
「さすがに今日は養成所もバタバタしてるだろうし、部活動や委員会も含め、生徒主体で行っている活動は全部お休みさぁ~」
「ふぅん。そうなんですか。……なにやるんです?」
「それは行ってからのお楽しみさ」
含みのある言い方。立ち尽くす宗二郎を残し、七代はようやく関原養成所にむかって歩き出した。
すこし離れたところで振り返り、
「次は委員会に目をつけられんよう、上手くやりなよン――東堂ぉ東堂ぉ。本当に良い友達を持ったな。大事にしなよ」
彼女は去り際、何かを投げてよこした。キャッチした宗二郎が見てみると、石蕗祈理と初めて出会った時に取り上げられた学生証だった。
霧の中に消えてゆく七代。
学生証を片手に持ったまま、しばらく彼女の『大事にしなよ』が意味するところを考えてみたが、遅刻ギリギリの時間になるまで、ついに解ることはなかった。




