<Prologue>
【本文の前に・・・】
本作品『ParALyze~蒼眼の魔導師~』は、
現在公開している『ParALyze~パーアライズ~』シリーズの本編と並行して進んでいる物語になっています。
時系列的にはこちらの方が、本編の第一話より、少し前になります。
こちらから読んで戴いても問題は無い――と思います^^;
一部内容は2018年2月24日現在まで投稿している
ParALyze 1話~4話と連動していますので、
ネタバレな部分や、本編で登場させてる人物を知っている前提で構成されております。
宜しくお願い致しますm(_ _)m
どうしてまだ震える。どうしてどうして……覚悟は出来ていたはずだ。
もう一回。もういっかい……やってみればいい。
――いつだって、人は未来を予知できない。
どんなに失敗しないように頑張ったとしても。
どんなに不幸に会わないため、気を付けたとしても。
人間に未来が見えなければ、回避は出来ない。
幸も不幸も……その瞬間に、実感として表れるまで。
――待ち受けている未来は、誰にもわからない。
運命というものが、もし本当にあるのだとしたら、
なぜ、そのような道筋が出来上がってしまうのだろうか。
様々な過程を経て、結果として表れるのか。あるいは突発的な事象によって引き起こされるのか。それは人的なものから超自然的な種類と、多岐に存在しているのか。
もし仮に……未来を予見することが出来たとしたら、どうだろう?
あらゆる万死さえも遠ざけることが可能なのだろうか。
選び出す選択や答えを、あらかじめ知ることができたら、全てを救えるだろうか。
今更になって考えてしまう。この選択は――間違っていなかったのか、と。
間違えないようにすること事こそが、そもそもの間違いなのではないだろうか。
全てを避けられる可能性があったとしたら、自分はどう行動したらいい?
――いや、どんなに予見が可能であったとしても。死を回避する術があろうとも、全てを助けることはできないと思う。自分は神様ではない。だから正解かどうか判断できないからコレが正しいと思える行動を取ったまで。
必死になって、巻き込まれる人間に警鐘を慣らそうと、誰も信じてはくれなかった。
説明しても、首を傾けて理解をしてくれる人は居なかった。
本当を話せば、自分のことを異常者だと指さして笑った。
……〝運命の交差点〟は必ず訪れる。
この大きな流れは、自分一人では変えられない。
一つ避けても、また別の運命によって区切られてしまうのだ。
確定してたとしても、明確な証拠も根拠もないのが『未来』である。
噛みつかれ、牙を突き立てられ、痛みとして知覚して……初めて人は『運命』というものを痛感する。噛みつかれては遅いのだ。一度食らい付かれれば、その顎を力尽くでこじ開けることは出来ない。ソレが運命の卓越した強制力であり、絡め取ってくる因果の糸であり、未来という名の怪物なのだ。
――多くを助けるために。何をすればいい?
大災害が起こることなど知る由もない、新宿のど真ん中へ行けば良いのか?
自分は叫び回って、逃げろと周囲の人々に向かって促すのか?
あるいは、自分の知っている人を、大切だと思えるたった一人だけを、
災厄から回避させるために尽力することこそが、最善の選択なのか?
…………わからない。わからない。どっちが正しいのか。
…………ずいぶんと長く。考えすぎた。
…………考えたぶんだけ、多くを失った。
…………いいや、まだ何も失ってないのか。
…………でも心だけは、喪失の全てを持っている。
…………考えるまでもない。
…………ココに立っているのなら。
…………自分は、なにも変わっていない。
遠くにある新宿が地獄へと変わりゆく最期の喧噪を胸に浮かべ。
多くの死を嘆かず。惜しまず。悲しまず。顧みず。悼まず。
――――たった一つの命のために……自分は前を向いて歩き出す。