古の神殿 その7
ルルカッタはルイカの手を引いて階段を登った。
中央階段を登った先には白い大きな扉があった。
ルルカッタは扉を開き中に入った。
―――ギィィ―――
扉の先には玉座に一人も魔人族の男性が座っていた。
「兄王様失礼します! ルイカ様をお連れしました」
玉座に座ったままギンゲムは書類から目を離してルイカを一瞥した。
そしてルイカに尋ねた。
「俺は皇帝ギンゲムだ。 ルイカと言ったか?貴様が弟がいっていた神話時代の姫か?」
ギンゲムは切れ長の瞳でルイカを見た。
まるで値踏みしているような表情だった。
そして視線をルイカから離した時だった。
―――カツカツカツ―――
「…えい! ……ふしゃふしゃ!!」
いきなりルイカがギンゲムの髪の毛を乱した。
ギンゲムは虚をつかれたせいなのか不機嫌にルイカを履き剥がした。
「無礼者ぉ! 貴様ぁ! いきなり、何をする!? 一体全体、貴様は何を考えているんだ!」
「ル……ルイカ様ぁ!?」
ーーーギィィーーー
「ちょ!? いきなり何してるの? ルイカちゃん!?」
愛子が階段を上がってきたときに目にしたのは、髪の毛を下ろしたギンゲムがルイカを引っ剥がしていた姿だった。
愛子はギンゲムの姿を見てある人物を思い出した。
「あっ……その姿はアビスさん?」
愛子が見たのギンゲムは【エレダン】で転移した時、ある広場にいた魔人族の青年にそっくりだった。
「くくくっ……貴様ぁ……覚悟は出来ているんだろうな!? 俺の髪を触るなど万死に値する!!」
ギンゲム王は口を歪ませルイカを見つめた。
そして激情のままに怒りの感情が表情に出ていた。
が、それを無視してルイカはギンゲムに抱きついた。
「……その姿は……私です! ルイカ・ヨル・ヴィスタです! 私がお分かりにならないのですか? 貴女の娘のルイカです!」
「娘ぇ!? ……ちょっと…ギンゲム王? すこぉぉぉし……そう……すこぉぉぉしで良いので、お話があります……」
ギンゲムの後ろに控えているメイド長のシイネがギンゲムの肩をつよぉぉく、そうつよぉぉぉく掴んだ。
ーーーギリギリギリギリーーー
シイネは唇をひくつかせながら、笑った。
とても笑顔とは思えない表情でギンゲムを見ていた。
「いたた!! シイネ? 違うぞ? 俺はこんな娘など知らんぞ!!」
「まぁ……ギンゲム様……確かに私に隠しごと……そう、娘様がいることを黙っておられた事以外に、なにが違うというのです? それに私は貴方のメイド。 貴方は私の主人。 それ以外に何か?」
シイネが表情を変えることなく、ギンゲムを見つめていた。
何かシイネの背後に圧力を感じた。何か圧力が形を持って迫ってくるようにギンゲムは感じた。
「おっ…お前も聞いていただろう? こいつはルルカッタが精霊のダンジョンで拾ってきたヤツだと」
「んっま! 王ともあろうものが、隠し子を弟君に押し付けるのですか? 度量の狭いことこの上なしですね……見損ないましたよ……ギンゲムさま?」
明らかにシイネの背後にある圧力の輪郭が愛子達にも見えた。
般若面の女性がシイネの後ろに立ちギンゲムに食って掛かっているように見えた。
「だ~か~ら! 違うと言うている!!」
ギンゲムは玉座から動けない。
そしてルイカがさらに波紋を広げる発言をしていた。
「父上様、父上様ですよね? 何が違うのですか?」
「あ~お前も! 俺はこの国の皇帝になってまだ2年だ! お前の父親がいた時代は神話の時代だ!!それに俺はルルカッタの兄だ! お前などしらんと言っているだろうが!?」
愛子は思わずつぶやいた。
「……これって…修羅場?」
愛子とルルカッタは眼が点になった。
ルルカッタと愛子は、ルイカをギンゲムから引っ剥がした。
「ちょっと! ルイカ様、落ち着いてください…それに兄王様も!!」
「ちょっと、ギンゲムさん? ルイカに何か伝ることがあるって言ってなかったけ?」
ルルカッタはギンゲムに落ち着くように声をかけた。
愛子はギンゲムにルイカを呼んだ目的を伝えるように告げた。
「くっ……そうだ。 ルイカ嬢よ。 これに見覚えはないか?」
「そ……それは!」
ギンゲムが差し出した手に握られていたのは、白い小さな鍵だった。
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