クライクラスト商会 後編
9月28日
中身を書き直してます。
一夜明け、二人は総務室にいた。
「あら、変わったスキルを持っているのね?」
愛子の持つステータスプレートを見たコリーは、思わずつぶやいた。
「’看護師’なんてスキル初めてみたわ。固有魔法も多いし、こんなスキルは’真魂職百科’にも載っていないわよ。おそらくだけどこの世界で初めてのスキルじゃないかしら。」
クライクラスト商会の秘書兼副支部長のコリーは、そう告げると’真魂職百科’を開いて愛子に見せた。
「この世界で確認されたスキルが、網羅されている本ってルル君は言ってたわ」
愛子はコリーが開いた、真魂職百科’を見てつぶやくとコリーは続けた。
「そうこの本は世界で確認されたスキルが、すべて書かれていると言われているわ。一説には神代の王たちが、編纂したともいわれているわ。」
「神代の王たち?」
愛子はコリーに聞き返した。
「ええ、この’真魂職百科’は誰が作ったのかわからないの。それこそ遙か昔、世界に六王とよばれた王がいた時代に作られたものという噂が立つくらいに。もっとも今は六国教騎士団という奴らが、それぞれの国で作って売っているわ。」
そう言うとコリーは、本の最後の貢をみせた。
そこには第6000版と書かれていた。
「この私が持っているのは、ウィルヘイムで印刷されたものよ」
そしてコリーは、本の表紙を愛子にみせた。
本の表には、鷲のマークが押印されていた。
「まぁ、珍しいスキルだということは、わかったわ。それに魔法も使えるみたいだし、良かったわ」
愛子はステータスプレートをコニーに手渡して、ソファーに腰を下ろした。
「それにしても、この屋敷すごいわね。まるで要塞みたいね」
「それはね。ここがクライクラスト商会でも一部の者しか使うことができない場所だからよ。だから貴女達はココのことを話してはいけないの。絶対にね」
眼が笑ってない笑顔で、コリーは愛子達をみた。
愛子の今の服装は、トートバッグに入っていたワンピースタイプナース服。
靴は完全に壊れたので、ブーツをもらって履いている。
そして下着もトートバッグに入っていた物を新しく着た。
ルルカッタは、半ズボンとシャツスタイルは変わらないが、
服が体に合ったものに変わっていた。
コリーは愛子たちの服を見ながら言った。
「それに貴女達の服が合って、良かったわ」
「コリーさん、耐魔法付与までしてもらって申し訳ないです」
ルルカッタは申し訳なさそうにコリーをみた。
「いいのよ。まぁ商品開発みたいなものだし。それに貴女達の、給金から引いておくから」
笑顔でコリーはルルカッタ達に向けて告げた。
―――えっ好意ではないんですか―――
ルルカッタの顔色はさらに青白くなった。
「それに、ニコラの考えだし、まぁ元はただの布だし、付与魔法’付与’で耐魔法を施しただけの特殊な’魔法装具’なんて、使いたい人そんなに居ないからね」
そんな二人を尻目にコリーは机の上にある、ステータスプレートをみた。
ステータスプレートには、今の愛子とルルカッタの情報が記されていた。
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名前 青山 愛子 29歳
レベル 12 スキル「看護師」ジョブ「子持ちパート」
固有魔法 深淵の魔眼’完視’
固有魔法 深淵の守護’絶躰’
重力魔法 ’圧縮'
技能 '言語理解(全種族対応)'
技能 ’闇連脚’
エクストラ ’深淵の狂気’
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名前 ルルカッタ・ヨル・ヴィスタ 130歳
レベル44 スキル「召喚師」 ジョブ「司祭件パート」
固有魔法'獣召喚'
雷撃魔法 '電撃'
火炎魔法 '火炎'
エクストラ’眠れる狂戦士’
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「アイコさんのステータスだけを見れば、立派な魔法師なんだけどね。よくわからないスキルってこと以外は」
「’看護師’はそんなにめずらしいの?」
「ええ。さっきも言ったけどレアすぎて、何ができるか全くわからないのよね」
―――なにができるかわからない―――
愛子の表情が固まった。それを横目で見たルルカッタがオロオロしていた。
そんな二人を見て、コリーは言った。
「まぁそれよりも、二人のステータスプレートを、魔法具と同期させるわね。」
そういうと二人の腕から魔法具を取り外すと、それぞれのステータスプレートに乗せてコリーは詠唱を始めた。
「光と闇と機械の神の名において汝らのすべてを繋ぎ共に真実を照らし合わせよ”同期”」
するとプレートと腕輪が共に青い光に包まれ同じ輝きを持ち、そのまま光が中に入り込んで消えた。
腕輪とステータスプレートを、コリーは二人に渡すと続けていった。
「はい。これで出来たわよ。」
受け取ると早速二人はそれぞれ腕に付けてみた。
「コレうっすらと青く光ってて綺麗ね」
愛子が腕につけると、青く光って見えた。
見た目は陶器製の細い腕輪だが、その光がまるで愛子の知る電子機器のようだと思った。
「そうですね。僕がいままで見たことのある通信魔道具は、もっと大型のごつごつした腕輪のようでしたから」
「陶器っぽいのに冷たくないわ。それに重さもほとんどないのね」
愛子が、腕輪を宙に掲げてても重さが感じない事に驚いていた。
「うふふ、気に入ったようね。これには破壊防止の魔法と機械国の特殊セラミック技術が盛り込まれているから、特別な力でもなきゃ破壊されることはないわよ。まぁそのおかげでこの魔法具は名前もすんなりと決まったんだけど……
「名前?」
愛子が首をかしげて、コニーに聞いた。
「コレは、破壊を防ぐって意味をこめて’ブレイ’という名前になったのよね。まぁそれは別の話として……」
そしてコリーさんは二人の顔をみながら続けて言った。
「愛子さんは、レベルが低いけど魔法力値が高いから銅クラスね。ルルカッタ君は、レベルはそこそこだけど魔法力値が中くらいだからやっぱり銅クラスね。」
そしてコリーは、足を組みなおすと言った。
「じゃ当初の予定通りフリーとして用事や依頼は、こなしてもらうからね。それで、二人はどこか行くところがあるの?出会ったときは急いでいたみたいだけど?」
そういうとコリーは、にっこりとこちらを見ながら質問してきた。
「それは……」
愛子とルルカッタは二人で目を合わせるとうなずいた。
「僕たちは、街道沿い街の近くにある大樹に行く予定だったんです」
「なんかそこは、ダンジョンになっているらしいのよ」
これまでの話とこれから向かうダンジョンのことを伝えた。
コリーは目的地のことを聞くと目が輝き、舌が唇をチロチロと舐めまわした。
そして言った。
「ダンジョンですって!それは良いお話を聞きました。それでは私たちクライクラスト商会からの依頼です。ダンジョンの詳細を確認してきてください」
ポンと手を合わせるとコリーは、さりげなく依頼をぶっこんっで来てくれた。
「それはいいですけど、行って見ないと本当にダンジョンがあるかわからないのよ?」
愛子がそういうとコリーは手を合わせたまま、表情は変わらずニコニコしながら続けて言った。
「それも含めて詳細の確認です。必要な装備は会館の中の商店を使ってくださいね。お金がなければ、オーダークリアー後のツケで構わないですよ?」
そういうとコリーは会館の一階北側にある商店を教えてくれた。
愛子たちはオーダーを受注すると、一階の北にある商店にむかった。
『何でもそろうキタムヤ』
木彫りの看板がドーーンと出されている姿はさすがに商人だなぁと愛子とルルカッタは思った。
店内に入ると威勢の良い声が聞こえてきた。
「へいらっしゃい!嬢ちゃんと坊主、何がいるんだい?」
なんか聞いたことがある声だなっと愛子が思い視線を向けるとアッと驚いた。
「あぁーガタイの良いおじさん!!」
そう、愛子が街道で話を聞き耳立ててきいた神人族のおじさん、ガタイの良いほうのおじさんがそこにいた。
「んっ?なんだ嬢ちゃん、俺はあんたを知らないがどこかで知りあったか?俺は客ならだいたい覚えているんだが。」
そういうと頭をポリポリと書きながらガタイの良いおじさんは言った。
「まぁいいや、おれはガイ=タガイ。クライクラスト商会で卸の販売員をしているんだ」
「ところで、何が欲しいんだ?」
「じつは、ダンジョンに行く予定なんで、何がいるかきいてみようと思って……」
「ダンジョンだって?それなら……」
ガイは、二人がダンジョンに向かうことを伝えると装備を見繕ってくれた。
「嬢ちゃんは武器がいるだろう、ダンジョンなら先がみえねぇこともある。コレなんかいいぜ。
あと魔石剥ぎの為にはショートソードが必要だ」
そういうと愛子に細身なショートソードとロングウィップを渡してくれた。
「それに、ロープと光を放つ道具もいるだろ」
そういうとロープを渡してくれた。
「いいか、こうやって結べばしっかりと結べる。これを、もやい結びっていうんだぜ」
「あとちょっとした携帯食料とこれがいるだろうな」
ガイはウエストポーチみたいな物と携帯食料を渡してくれた。
携帯食料なんかは、見た目まんまカロ〇ーメイトそっくりである。
「この魔道具は、異空間収納の魔法を付与されているから、手軽にダンジョンのアイテムをもちかえられるぜ」
そういうとガイの歯が。きらりと光った。
「んで次は坊主だが、これなんか司祭ならいいんじゃないか?」
ルルカッタにも細身のショートソードと小ぶりな杖の先端に青い玉がつけられているマジックワンドを渡してくれた。
「あとは魔力回復薬と、残りは嬢ちゃんと同じでいいよな」
そういうと愛子と同じウエストポーチと魔力回復薬と携帯食料を渡してくれた。
そして告げた。
「いいか!ダンジョンでは生きて帰ることが第一だぞ!やばいとおもったら必ず逃げろ!死はすぐそこにあるんだからな。」
そういうと、ガイは笑顔でサムズアップすると元気に送り出してくれた。
会館を出る前に二コラさんに挨拶を済ます為に、執務室に声をかけた。
コンコンッ
「どうぞ」
「「失礼します」」
愛子とルルカッタは二人で手をつないで部屋に入った。
すると部屋の奥で黒光りする立派な彫刻が彫られた机を前にふかふかの柔らかそうな革張りチェアに腰をおろした二コラさんがそこにいた。
”似合ってる”愛子はそう思うと威厳たっぷりな表情で座り、目の前の書類を見ていた二コラは二人に視線を向けると立ち上がり近ずいていた。
「やぁ二人か、装備が整ったみたいだね、見違えたよ、最初はぼろ雑巾みたいだったのにね。コリーから聞いたんだけど、二人はこれからダンジョンに向かうんだって?」
首をさすりながら言う二コラさん。
少し嫌味が含まれているけど仕方ない。
「ええ。貴方が私たちを見つけて声をかけてくれたおかげよ。職も得たし、こんな装備も用意してくれて本当にありがとう」
愛子は魔道具をくれた事とパートとして商会に入れてくれた事を感謝していた。
「ははは。まぁ先行投資だとでも思ってくれ。それからダンジョンの新たなアイテムや、すばらしい技術などの確認、よろしく頼むよ。詳細は帰ってきてから報告書形式で出してくれ。動画もあれば助かる。」
そういうと腕輪を指さした後に、二人と握手をする二コラさん。
こういうところはさすが、クライクラスト商会の支部長である。
「ただし、『命を大切に』だ。死んでしまっては助けることもできないからね。無事に帰ってきてくれ。」
真剣な表情で愛子とルルカッタを見て二コラさんは言った。
そういうやさしさがあるところも慕われるところなんだな。と愛子は思った。
この商会は優しい人たちが多くて、居心地がすごくよかった。
いい人に出会ったと愛子はおもった。
そんな愛子をみて二コラさんはこういった。
「出会いは必然だ。無駄な出会いは存在しない。これは私の持論だ。君たちの人生に良きことが、訪れるように私は願うよ。」
あぁカッコイイおじさんだ
愛子はそう思うと言葉を返した。
「ありがとうございます。私たちは無事に帰ってくるつもりなので、今後もよろしくおねがいします」
そういうと頭を下げてあいさつした。
ルルカッタもそんな愛子をみて頭を下げた。
そして二コラの部屋を出ると愛子達は会館の出口に向かって歩き始めた。
「あら、見違えたわね。もういっぱしの冒険者みたいだわ。いい?必ず帰ってきてね。」
「はい。もちろん」
愛子たちは廊下でコリーに会ったので少し話をした。
そして二人は、出口から出ると足早に街道を進めた。
「アイコ様、まだ日が高いのでこのまま歩けば話に聞いた大樹までは昼過ぎには着くとおもいます」
ルルカッタは地図を見ながら言った。
「そうなのね。まぁいそぎましょ」
愛子は答えると、さらに歩みを進めた。
この時ふたりは、まだ気が付かなかった。
二人をつけ狙う”犬耳少女”の存在に・・・
いつも読んでくださりありがとうございます。
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出てきました。
ガタイの良いおじさん。
次は犬耳少女でてきます。
次の更新は火曜日の18時にアップする予定です。