ヴィスタ奪還 その18
回答編です
「はぁ? 何を言っているんだ?」
グリモアは要領を得ない表情で、ルルカッタを見つめ問いただした。
そんなグリモアを尻目にルルカッタは告げた。
「魔法の三大理論ご存知ですか? その一つに『魔法は魔法力によって形作られている』
という物があります。つまり魔法力で形作れるものは何でも可能ということです。そんな理論を利用して作ったのがこの魔法’幻影零現体’です」
グリモアが驚きを隠さずに問いただした。
「そんなばかな! 物質的な手ごたえはあったぞ! 零体と言うなら手ごたえはないはずだ? それに零体を斬ったなら、肉体にも影響があるはずだ!」
「そうですね。 ただの零体を斬られれば、最悪、消滅するでしょうね。 ただし…僕が作ったのは限りなく肉体に近い物ですからね」
そしてルルカッタは杖を構えて告げた。
「もっとも貴方が知っている厄災という忌み名は、僕が魔法をうまく使うことができなかった時…そう魔法学院の時代の話ですね。 僕が魔法学院に居た時は魔法力をうまく抽出できませんでした。……魔法を上手く扱えなかった僕は考えました。」
ルルカッタが唇を上げて全てを射抜くような瞳でグリモアと視線を交えた。
「どうすれば魔法を使えるのか! その為に必死で魔法を改造して理論を新たに作り上げました。最もそれを行っても当時の僕は魔法を使うことができませんでした……しかし…僕は変わりました! もう、僕を欠陥魔法師とは言わせません!!」
ルルカッタの周囲の温度が下がったようにグリモアは感じがした。
そしてルルカッタの前に二つの違う魔法陣が描かれた。
「右に極滅電撃! そして、左に極滅火炎! 合わせて ’神滅雷炎撃!」
ルルカッタの唱えた魔法は二つの魔法陣が融合し一つの輝かしい魔法陣となった。
そして魔法陣から青い電撃を纏った火炎の柱がグリモアに襲い掛かった。
グリモアが右の刀を構えた。
「くっくっく! 忘れたのか? この魔剣は魔法を食うのだぞ! それくらいの魔法は……!?」
―――パキィ―――
グリモアの持つ魔剣にヒビが入った。
そしてグリモアが握ったままに砕けてバラバラになった。
吸い込み切れなかった魔法がグリモアを襲った。
「ぐあぁぁ!」
避け切れず体の半分が焼け焦げたグリモアがそこに居た。
「くっ! ぐはっ! まさか、魔法を喰いきることができずに砕けるとはな…」
「さぁ! チェックメイトです。 おとなしく捕まってください!!」
ルルカッタが告げた。
それを聞いて不敵に笑うグリモア。
「くくくっ! どうやら、ここまでのようだな。 厄災よ……また会おう! 転移!!」
グリモアが唱えると左の魔剣が輝いた。
そして全身に赤い魔法力を纏うと強い光を放った。
「くっ!」
「「きゃぁぁ!」」
余りのまぶしさに目を瞑んだルルカッタと二人の姉。
次の瞬間、ルルカッタが目を開けるとグリモアの姿が消えていた。
「…逃げられました……」
悔し気に声をだすルルカッタ。
そして思い出したように二人の姉に近寄った。
「ライラック姉様、ケイラ姉様。 大階段の後ろに森の奥への逃げ道があります。どうか、逃げてください」
ルルカッタは二人の姉の脚についていた魔法具を壊した。物理的に
二人の細い足首から地面に魔道具が落ちた。
「ルルカッタは? 一緒に逃げましょうよ」
ケイラはルルカッタの手をとり伝えた。
それを聞いて尚、首を左右に振るルルカッタ。
ルルカッタの答えはケイラの思っていた答えと違っていた。
「ケイラ姉様。僕はこの国を救うと約束したんです。 その約束を反故にはできません……」
ルルカッタが思いを告げた。
その時。
――プルルル、プルルル!―――
ルルカッタの魔法具がなり響いた。
「はい。 アイコ様、どうされたんですか?」
「ルル君! ここには来てはダメよ!!」
緊張を告げる愛子の声が、ルルカッタの魔法具から聞こえた。
そして画面に映し出されたのは…愛子とある人物だった。
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