ヴィスタ奪還 その9
メイド好きですか?
階段を愛子は下った。
「あれっ?ここってもしかして石牢の場所に繋がっているのかな?」
愛子の目に見えたのは、見おぼえのある扉だった。
「もしかしたら誰かいるかもしれないし、入ってみよう」
―――キィ―――
愛子は扉を開けてほの暗い石牢の通路をすすんだ。
―――カツンカツン―――
「あっ!いた!貴女達、確かルル君のお部屋で、お茶を持ってきてくれた人たちよね?」
「貴女様は……ルルカッタ様とルドルフ様と一緒におられた…」
愛子の目の前には、黒いロングスカートのワンピースに白いフリルのエプロン、頭にカチューシャを付けたメイド達が居た。
「ここからだしてくれますか?」
「ルルカッタ様は、大丈夫ですか?」
「お願い出して!」
4人のメイド達は、それぞれ石牢の格子を持ち懇願した。
「わかったわ。少し離れて!’喰らえアヴァリーティア’!はあぁ!!」
薄紫の魔法力光を浴びた刀身が光かがやき振り下ろされた。
―――ザン―――
鉄で出来た格子は、まるでバターナイフで切るバターのように滑らかな切り口で斬られた。
―――ドン!―――
愛子が4か所を斬ると格子は後ろに倒れた。
「ありがとうございます。えっと……」
「私は青山愛子。アイコでいいわよ」
「ありがとうございました。アイコ様」
深々とおお辞儀をするメイド達。優雅だ!と愛子は思った。
「アイコ様、ルルカッタ様は無事逃げられたのでしょうか?」
メイドの一人が愛子に聞いた。愛子は首を横にふるふると振った。
「ルル君も、お姉さんたちを助けにきたわ。ねぇ貴方達、お姉さんたちがどこにいるか知らない?」
愛子が尋ねると、一人のメイドが答えた。
「わたし、聴きました。確か南の塔に幽閉したって」
「本当!?本当ならすごい助かる情報よ!それ」
「私、たまたま聞いたんです。この前に見回りに来た神人族が言ってました」
メイドはそう告げた。
そして愛子は魔道具を起動させた。
―――ピィ!「はい。アイコ様どうしました?」―――
魔道具にコンソールが浮かび、小さな空中魔法陣には、ルルカッタの顔が映った。
「あっルルカッタ様だ」
メイドの一人が気が付いた。その魔道具に!
「ルル君、愛子です。石牢でメイドさんたちを見つけたわ。それといい情報よ。南の塔にお姉さんたち居るみたい。行ける?」
「アイコ様!教えてくれて、ありがとうございます。僕は南の塔に行ってみます」
「気を付けて!魔剣を持った神人族もいるからね」
「わかりました」
―――ピィ!―――
通信を切ると、愛子はメイド達を連れて元の場所に戻った。
そして古い下水道の通路に連れて行くと、愛子はメイド達に告げた。
「貴女達はこの通路をでて逃げて。王都の隣にある森の中の建物に出られるから」
「ありがとうございます。アイコ様、これを!」
そう言って一つの紙を、愛子に差し出した。
「これは?」
「これはヴィスタ城の地図です。この通路を右に行って階段を上り切ったら玉座の間に出られます」
「ありがとう。えっと、貴方の名前は?」
「申し遅れました。私はヴィスタ城メイド隊のリーダーをしているシイネ・ブリドールです」
そう告げた背の低い魔人族の女性は愛子に伝えた。
「アイコ様、ルルカッタ様をどうかお守りください。そしてどうかこの城を神人族から取り返してください。王座の間にいけば、きっと神人族がいるはずです。」
「わかったわ。私が少しでも力になれるなら。王座の間にいってみるわね」
そういうと愛子はシイネに礼をして通路を右に進んだ。
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