イゼル動乱 その9
次話投降が遅くなりました。
その分楽しんで頂けるようにしますので読んでください。
「マイルーズ! 先に偵察に出た部隊はどうしてもどらない!!」
声を荒げる神人族の分隊長が机を叩きながら、部下の騎士に詰め寄っていた。
「ゲイト様、おそらく先ほどの爆発と関係があるのでしょう。なにか良からぬ事態が進行しているかもしれません。すぐに新たな偵察隊を出します。」
詰め寄られた神人族の魔法師は取り乱す上司に冷静に対応しながら、心の奥底では深いため息をついていた。
―――まったくこの程度ですぐに取り乱す。これだから貴族のお坊ちゃまは嫌いなんだ!―――
街で起きた爆発。
それはイゼルの街を占拠していた神人族の騎士たちを震撼させた。
最初の爆発は街の入り口たる巨門の外で起きた。
それはすぐに対応したと街中の部隊長より伝令が入った。
「マイルーズ、第八騎士団の奴らとは連絡がつかんのか」
そこまでは良かった。
ただ次に起きた爆発。
そこは自分たちの部隊長がいる街の中で起きた。
「はっ! 申し訳ながらゲイト様、おそらくこの街を襲った者に負けたのかと」
マイルーズは、すぐに上司たる隊長に報告した。
隊長は、二度目の爆発にオロオロするばかりで何も指示が出せなかった。
「貴様が行け!マイルーズ」
「はっ!」
仕方なく、副官の自分が指示を出して偵察部隊を確認に向かわした。
―――よくない事が起きている。 それは間違いない。 しかし爆発が起きた後のこの静寂はなんだ? なにかおかしい…―――
マイルーズは二度目の爆発後にすぐにこの場所の入り口を閉めた。
街中の爆発が何かの意図により起こされたのならば、この街において最も重要な施設を狙うだろう。
「この場所は締め切ります。おそらくここを狙う者がいるでしょう」
「そのようなことはわかるぞ!お前らはいけぇ」
「はっ」
自分たちが居るこの場所だと考えすぐに街と、この施設を分断した。
マイルーズの行動は副長として最も正しい行動だった。
この場所は今や陸の孤島と化していた。
彼女たちにとって最も最適なフィールドと化していると知らずに。
―――コンコン!―――
扉がノックされた。
「入れ! なんだ! なにかわかったか!?」
ゲイトが扉のノックに気が付き返答した。
「失礼します。ゲイト様、マイルーズ様、フラン様たちが戻りました。」
マイルーズは扉の奥から聞こえた報告に首を傾げた。
「フラン?何者だ?そんな名の部隊員はいないはずだが……」
マイルーズが必死に頭で考えながら目の前の部下に対応していると、扉が開いた。
―――ギイイィィィ!―――
扉の外には一人の騎士と魔人族の少女が立っていた。
騎士は自分たちの部隊員だとマイルーズはすぐに分かった。
それはマイルーズの直属の部下だったからだ。
「その隣の少女はだれだ?」
「貴方がこの部隊の隊長かしら? 」
「ふっ!」
―――チャキ―――
思わずマイルーズが後ろを振り返った。
そこにはポニーテールの女性がマイルーズの首に魔鎌を押し付けて立っていた。
マイルーズは体から汗が噴き出るのを抑えることができなかった。
「なっ! いつのまに!! 」
―――くそっ!いつのまに、気配が一切に掴めなかったぞ。こいつ何者だ!?―――
マイルーズが振り返ったまま動けずにいると、その場にゲイトの声が響いた。
「なんだ貴様は、私を誰だか知ってのことか!! 」
空気を読まないゲイトの叫び声が室内に響いた。
「もう!耳元で大声出さないでよ! えいっ☆! 」
「ギャブッ!」
可愛らしい声がゲイトの後ろから響いたあと、ゲイトのカエルがつぶれるような叫び声が響いた。
マイルーズが目を向けると隊長は膝から倒れ頭には大きなタンコブを作っていた。
頭のタンコブからチリチリと白煙を上げるゲイト。
ミディアムヘアの巨乳な魔人族少女が口元に手を当てていた
「くっ貴様らは何者だ? なぜこの場所がわかった? 」
マイルーズはあくまで冷静を保ちつつ、自らの置かれている状況を必死に探ろうとした。
そのとき扉の方から可憐な声が聞こえてきた。
「あらっ? そんなの簡単よ。この人が教えてくれたからよ。ねぇマインドさん? 」
「イエス、マム。私が教えました。」
マイルーズはマインドと呼ばれた直属の部下をみた。
マインドの目からは意思の光が消えていた。
「きさま、私の部下になにをした…? 」
なにかされたのかまるで分からないが、マインドが正気でないことは分かった。
マイルーズにはそれだけで大切な部下が裏切ったのではなく
動かされたことがわかってホンの少し安堵した。
「なにをって、私の固有魔法を使わしてもらったの。 もしかして貴方の大事な恋人だった? 」
マイルーズはフランを見つめると首を縦に振った。
「ああ。俺の大事な部下だ。俺がそいつの代わりになるから、そいつを助けてくれ。」
そう言うとマイルーズはフランの顔を一切の曇りなく見つめた。
フランはその様子をみて顔を真っ赤にしながら、体をくねらせていた。
そしてメガネが光り輝くとフランの口から言葉があふれた。
「あなたの大事な恋人に私ったら精神魔法をかけちゃったのね。そんなに大事な恋人なら私たちの言うことを聞いてくれたらちゃんともとに戻すわ!! 絶対に!! 」
フランが鼻息荒くマイルーズの手を取り、上下にブンブン上げ下げした。
「ああっ、わかった。君たちの言うことを聞こう。で要求はなんだ? 」
マイルーズが若干引き美味に返答するとフランは思わず正気に戻り小さ咳払いして告げた。
「簡単なことよ。この場所を占拠している部隊の責任者はだれ? 私はあなたじゃないかと思っているんだけど。」
そう人差し指をビシッとマイルーズに向けるとマイルーズは指をゲイトの方へ指して告げた。
「そうか残念だが違う。そこのかわいこちゃんが黙らせたのが、うちの第一騎士団の隊長だ。 」
その場のみんなの視線が、口から白煙を上げて気絶しているゲイトに向かう。
「えっ! 小物臭しかしない小太りなこいつが?」
フランがそう告げるとマイルーズは言った。
「そうだ! 小物臭しかない小太りなこいつが隊長だ!! 」
マイルーズもまじめに答えた。
一瞬の空白の後にフランが笑いながらマイルーズに提案を告げた。
「貴方とは話が通じやすそうね。ひとつお願いがあるんだけど? 」
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