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イゼル動乱 その6

修正しています。


 魔馬の動きが一瞬とまったのをミッタマイヤは見逃さなかった。


「いまだ! ヲルフガング流決闘術奥義”真・破連脚”」


―――ガガガガッ―――


 魔馬に対して無数の蹴りが撃ち込まれた。

 それは残像を生じさせるほどの高速連撃。

 激しい衝撃はケイトにも襲い掛かった。

 

「きゃぁ!!」


 衝撃で空中に投げ出されたケイトは姿勢を正したが着地することはできず、肩から地面に叩きつけられた。


―――ガシャンーーー


 地面に叩きつけられたケイト。

 鉄製のヘルムが脱げるとそこに長いウエーブのかかった緩めの髪が乱れていた

 ケイトの体は土ぼこりを被り傷だらけになっていた。


「くっ! まだよ!」


 ケイトは上半身を起こしミッタマイヤを見上げた。

 獣人がとてつもなく大きく感じられた。


「……そうか女子オナゴであったか……殿シンガリを務めるほどの実力者であるならば、男だと思っていたが……」


 大きく肩で息をしながらも目はあきらめることなく鋭い光を放つ女性。

 ミッタマイヤはケイトに視線を合わせた。


「ふぅ……貴方、無礼にもほどがあるわ! そうよ。私は女よ。でも実力を示すのに女、男は関係ないでしょう?」


 ミッタマイヤは目の前の女騎士から正論をぶつけられた。

 力が物を言う世界において、男、女と言うのは相手に対して侮辱ともとれる行為だった。


「ふむ……我の失言であった。汝は騎士であったな……では全力で行かせていただく」


 ケイトはいまだ肩で息をしながら、胸の鼓動は激しく打ちつけられていた。


 「……」


 「……」


 二人は目線を合したまま、動くことなかった。

 そして少しの時が流れた


――――カタッ……―――


 ケイトが動いた。

 そして繰り出されたのは必殺の刺突術。


「はぁ!!」


「ふん!!」


―――ギィン―――


 ケイトの魔槍とミッタマイヤの指剣が交じり合い音を立てた。


「……ふははは……」


「……うふふふ……」


 ミッタマイヤとケイトから笑みが、こぼれた。

 二人の笑い声は、苦笑いのように感じた


「貴女はつよいな」


「貴方もね」


 ミッタマイヤは先ほどまで相対し命をかけて戦った女性にシンパシーを感じた。

 それは、命のやり取りをした者同士が分かち合うことができる奇妙な信頼感だった。


「もう私も立てれないし……貴方の手に掛かるのは癪だけど覚悟はできてる……さぁ」


 ケイトは髪をたくし上げ、首を晒した。


「では……」


―――トンッ!―――


「はうぅ……」


―――ドサッ――――


「このまま朽ちるのはもったいなかろう? なぁに別に命のやりとりでは無いならば……な。 それに昔のような思いはしたくないのだ。我も……」


 ミッタマイヤがケイトに手刀で意識を刈り取った直後……

 街の中心部で爆発が起きたのだった。




――――ドゴォォンン――――


「なんだあの獣人は?」


 爆発は町にある一番高い館から起きた。

 その爆風を背後に立つのは、青い獣人ロイエル魔人族ツヴァンツィヒ達。


「……来たのか。ということはケイトは……」


 レイジィは手の魔剣に力をこめながら獣人をみた。

 そして魔剣を構えロイエルに尋ねた。


「貴様! ここが第八騎士団アレースの居場所とわかっているのか?」


「ウム。街を把握するには最も俯瞰できる場所を押えるのは当然であろう? ならばこの街で最も高い建物がある場所こそ街を支配する魔法師たちがいる場所と考えるのは当然ではないか」


「なら……貴様は私に対峙する者と言うことだな……神人族の魔法師に対峙するということは我ら神聖帝国ウィルヘイムに弓引くという事だぞ……さては貴様はヴィスタ帝国の者か!」


「直接の関係ではないがな……我が弟子ルルカッタの国だ…まずは、この街を返してもらうぞ?」

 

「……貴様には聞きたいことがある。 ここで打ち倒す!」


 レイジィが構え直して剣戟をロイエルに浴びせた。


第八騎士団アレース隊長レイジィ・クレイ! 貴様に地獄を見せてやる! クレイ流剣技’破邪断頭ザインスラッド!」


 ロイエルが腰から短刀を二本引き抜き、対峙した。


―――ギィン―――


「ほう……なかなか良い剣戟だ。 それに、その太刀……東国のしつらえと見たが……この時代でもまだあるのか?」


「何を言っているの?これは我が家の家宝、神話の時代から受け継ぐ物よ! そこらのなまくらと一緒にしないで」 


 ロイエルはレイジィの剣撃を賞賛した。

 それほどにレイジィの剣は真っすぐに振り下ろされていた。


「ではこちらからも行かせてもらうぞ! ヲルフガング流剣舞術’山茶花カメリア’」


 ロイエルの剣戟は二本の短刀…小刀で構えた。

 それは円天の構え。

 ロイエルの獣人を生かした脚力で一気にレイジィの下に詰め寄り、両手で切り薙ぎを放った。


「このぉ!!」


―――ギィンギィン!―――


 レイジィは魔剣で切り結び、薙ぎ放った。


「なんなのアレ? この私の剣で倒れていないなんて……」


 レイジィがロイエルの剣戟を何とか往なした。

 そのとき背後から声が聞こえた。


「レイジィ様!!」


「隊長!」


「私たちも戦わせてください!!」


「ケイト様の敵討ちです」


 其処には四人の騎士が居た。


「お前たち……レイン、アウロト、ロシル、グラミス……いいだろう!我と共に戦え!」


「「「「はい!」」」」


 5人は手に持つ魔剣と魔槍を構えた。


「ふむ…少々数が多いな…ツヴァンツィヒ隊。 4人を任せた」


「はっ!マスター」


「くはははっ…では……この演舞を楽しもうではないか……」


 ロイエルがニヤリと笑った。


―――ギィンギィン―――


 闇夜にロイエルとレイジィの剣戟が交差し火花が散っていた


真極電撃テラヴォルド


真極火炎撃テラヴェノス


 レインとアウロトの魔槍に魔法陣が描かれ電撃と火炎がツヴァンツィヒ隊に向けて放たれた。


「ヲルフガング流決闘術’風穴牙’」


「ヲルフガング流決闘術’真空牙’」


 魔人族の騎士たちが電撃と火炎を引き裂いた。

 そして刺突された剣戟を弾き飛ばした。


―――キィン!―――


 レインとアウロトが魔法を放った瞬間を逃さずロシルとグラミスが魔槍を持ち刺突を繰り出した。

 ツヴァンツィヒ隊の魔人族達は刺突された魔槍を籠手ではじき返した。


「あちらも中々の剛の者達のようだな?」


「そうね、私が信頼できる部下だ! 決して誰にも引けを取らない!」


―――ドガァン!ギィンギィン―――


 いたるところで爆発音と金属のまじりあう音が響いた。

 しかし一人一人と確実に倒れていった。

 それは神人族の魔法師だけでなくツヴァンツィヒ隊の騎士たちも同じようだった。


「くそがぁ!」


「てめぇ!つぇなぁ」


「てめぇもなぁ」


 神人族で最後まで残っていたのはレイン、ロシル、レイジィだけだった。


「さぁて……残ったのは我らと獣人たちか」


「ケイト様の仇です」


「ケイン隊長の仇です」


 レイジィ達はロイエルにさらなる気迫で殺気を放った。

 それでも三人の身体には、切り傷、やけどが出来ておりまさにボロボロだった。


「ふむ……ツヴァンツィヒよ。貴殿の部隊員はまだまだ育てる余地があるようだな?」


「マスター、申し訳ありません。このような失態をお見せして……」


 ロイエルには傷は無く、ツヴァンツィヒには体に切り傷が出来ていた。


「さぁ……行くか。 我ら死地に入る!」


「「はい!」」


 レイジィはロイエルに向けて魔剣を構えた。


「クレイ流奥義’龍頭極破断ドランファード’」


「ヲルフガング流剣舞奥義’幻想百合リーリウム’」


 レイジィの魔剣が横薙ぎの後に縦に振り下ろされた。

 ロイエルの持つ小太刀が揺らめき剣舞による刺突と斬撃が七連繰りだされた。


―――ギィンギィンギィンギィンギィンギィン―――ギィン―――


 そして決着がついた。

 レイジィの魔剣が折れた。


「レイジィさま!!」


「よそを見るな!貴女の相手は私だ」


 ツヴァンツィヒの小太刀がレインとロシルの意識を経った。


「「ぐぅ……」」


「峰打だ。子供は寝ていろ」


―――ドサッ、ドサッ―――

 

「レイン、ロシル!」


―――トン―――


 ロイエルの手刀がレイジィの首に直撃した。


「きさま……なぜ…それほどの力がありながら、あの国に加担する…神の意志に背く行為だぞ…」


 レイジィは意識が途切れそうだった


「ふむ……神か……貴女ほどの人が信じる神だ、さぞ素晴らしいのだろう…そう貴女にとってはな……それに神が常に正しいとは限らん」


「なにを……根拠に……」


「むかしには……そう言う者がいたのだよ……」


 ロイエルはレイジぃの首筋に再度手刀を当てて意識を刈り取った。


―――ドサッ―――


「さて、これで神人族の魔法師は抑えたぞ……フラン殿、水門ウィンドリンを頼むぞ」


 ロイエル達は倒れた神人族を一か所に集め縄と共に魔封じを付けた。

いつも読んでいただいてありがとうございます。

今回は一日遅れてしまいました。

今後とも感想、ご意見、誤字脱字があれば報告お待ちしています。


次回更新は不定期になりますが、必ず更新していきます。

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