神人国魔法師の末路 その3
『爆発連鎖魔法”連結真極暴爆”』
この魔法は、本来巨大な無機物……大きな岩などを一度の爆裂魔法で壊すための物だ。
ヘルメスの魔法師は、連結した魔法同士で爆発力が変化するこの魔法の特性を自爆と言う形で使用した。
轟音と閃光に満たされ、一時の静寂に支配されたフェザの街
―――ガラガラガラガラッ―――
光が収束するとそこには、放射状に構築された石壁が立っていた。
静寂を破った物音は、壁の一部が壊れたときもたらされた。
そして、そこから出てきたのは魔人族の騎士たち。
「エルフィ殿、ツヴェルフ隊からノインツェーン隊まで損害無しであります」
「エルフィ様、我らツヴァイ以下5名ともに損害ありませんわ。 」
「爆裂魔法の中心地にいるアインス様はご無事でしょうか?」
魔人族の戦士たちは各隊の状況と心配事を一人の魔人族の女性に報告した。
「では貴方達はアインス様の当初の命令に従いフェザの街に撤退してください。 爆発の中心地の探索は私が行います。 では撤退開始!」
右手を大きく振り上げ、エルフィは次なる命令を下した。
「はっ! 」
魔人族の騎士たちはエルフィと呼ばれた女性に敬礼をすると、すぐに撤退準備を始めた。
その様子を見ながらエルフィと呼ばれた女性は足元に埋めてあったショートワンド引き抜き、土を払った。
そして手にしたショートワンドを愛おしそうに摩りながら呟いた。
「まったく、アインス様はよくこんな作戦を考えつくものね。 とくにこのマジックワンドを用いた作戦なんて誰も考え付かなかったわ。 これを埋めた場所をつないで、そこに術式を流すだけでこんなにも巨大な石壁を構築しちゃうんだもの。」
そういいながらエルフィは少しため息を吐いてさらにつぶやいた。
「あの方は、策士の才能がおありなのかもね…すこし三枚目なのが残念だけど惚れそうだわ」
エルフィは目線を手元の魔槍に移した。
魔力をためる宝玉を小さくし二つに分けてその間を魔力が円環する仕組みを組み込まれた魔槍
「こんなものも考案してつくってしまうんだもの…設計師のソウルスキルはすごわね…アインス様は本当にご無事なのかしら?」
アインスは先ほどの攻撃を予想した防御も考えていた。
『広範囲防御石壁』
地面に埋め込んだ魔法杖を連結し事前に構築した魔法建築にパスを通して顕現する魔法。
――ザッザッザッ―――
一歩一歩を踏みしめるように歩いてくる人の姿があった。
「エルフィ…状況を報告せよ……」
「はっ! アインス様。我らが住民も騎士も全員無事です。 我らは事前のご命令通り補給も兼ねてフェザに帰還したいと思いますがよろしいでしょうか?」
「……よろしい。 許可する。 よく働いてくれた。 礼を言うよエルフィ……いや回復師どの」
先ほどまでと違い優しい声でアインスはエルフィに告げた。
エルフィと呼ばれていた女性は、魔法師たちに凌辱された魔人族の女性の身体を癒した回復師の女性だった。
「私も街に戻ろう、そしてさらなる防護体制の構築をせねばな……手伝ってくれるのだろう?」
「ええ。貴方がそう望むなら私もぜひ手伝わせてくださいな」
「それにしても…この街に来た魔法師の数が少なすぎるな…我らは、救援体制を取った方がよいかもしれぬな…… 」
そうつぶやくとアインスはエルフィと共にフェザの街に帰還した。
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