神人国魔法師の末路 その2
「さぁ諸君! われらの力を”ピーーー”どもに見せつけてやろう! 」
「ゼヒィーツェン隊はゼクス、ツヴァイ、フィーアを擁護しつつ、後方に撤退! ツヴェルフ隊は雷撃魔法で”ピーーー”を所定の位置で足止めせよ! 」
「サーーイェッサーーー!!」
アインスは指令を伝達魔法具を介して部隊の騎士たちに告げた。
命令を受け取ったツヴェルフ隊は雷撃魔法をくりだした。
「’真極電撃’」
「左側弾幕が薄い!何やってんの?」
「’真極電撃’」
ヘルメスの魔法師に電撃魔法を放ちながらアインスの言う所定の位置に追い込んだ。
「よぉーし! いいぞ! ではノインツェーン隊は指示通り、鳥かご作戦を開始せよ! 奴らを地獄に叩き落としてやれぇい!! 」
アインスは伝達魔法具を介してノインツェーン隊にむけて新たな命令を告げた。
「では各隊員、魔法回路’限定解放’!」
ノインツェーン隊の騎士たちは口角をニヤリと上げた。
そして手に持つ槍を地面に突き刺した。
その手に握る獲物に絶大の信頼を託して、騎士たちは新たな魔法を唱えた。
「’真極振動’!」
直後、神人族が防御陣形を構築している場所が陥没した。
―――ボゴォ!―――
「うわぁぁ!」
「なっなんだぁ?」
「地面が、足場が崩れているのか!?」
突如、浮遊感に襲われたヘルメスの騎士達が口々に悲鳴をあげていた。
―――ドガガガ―――ボゴォン―――
その場にいたヘルメス隊の騎士は隊長を除き全員が突如出現した地面の崩壊に巻き込まれた。
「なんだこの状況は! 我らは一体、何と戦っているのだ!? 」
体調の表情は驚きと苦悶に満ちていた。
「クククッ、いかがかね? われらが魔人族の騎士たちは? なかなかにぃお楽しみいただけただろうかな? いくら戦争とはいえ、無力な相手を一方的に嬲る行為を我ら良いとは思わないのだがこれは少々よろしくないな。」
アインスは周りを見渡した。
ヘルメスの隊長以外がすべて陥没した地面の崩落に巻き込まれていた。
―――ガラガラ―――
崩落した瓦礫からヘルメスの騎士たち姿を現したが、全身のひどい傷を負ってるようで明らかに戦意を喪失している様子だった。
「これほどの圧倒的な勝利と言うのは聊か弱い物いじめのようであまりよろしくないな。 そうおもわないかね? 魔法師の隊長殿?」
「ふん! これしきの事で勝ちを拾ったと思わぬことだ」
ヘルメスの隊長がアインスに返した。
「どんな強気な言葉を言っても現状が物語っているだろう? それにこれでは私の品性がうたがわれてしまうな。」
「……貴様は一体何者だ!? ただの街の長ではあるまい? 何をかくしているのだ?」
ヘルメスの隊長が怒気を孕んだ声で告げた。
それに呼応するように聞こえた返事は隊長を驚愕の表情にさせた。
「いや、なぁに。 ただのしがない魔人族だよ。 ただし、貴様らが一方的に占拠したフェザの街のだがな!! あの地獄で私は生まれ変わったのだよ……」
怒りを瞳に宿し隊長を見つめるアドルフは一呼吸をつき冷静に話を始めた。
「貴様らの命はもはや我らの手の内だ。 貴様も一部隊を預かる長ならここが引き際だとわかるあだろう? もはや貴様らの負けだ。 とっとと自らの国へ帰るならよし! そうでなければ……あとは言わなくてもわかるな? 隊長殿?」
アインスは第10騎士団の敗北を告げた。
その上で撤退するならよしと告げたのだが、隊長殿は選択した。
最も愚かな選択を。
「クククっ 愚かなり魔人族! 我らは神の使徒だ! 貴様等に生殺与奪を決められるつもりはない。 我らはここから撤退するくらいなら、死を選ぶ! それが騎士団だ!」
そう告げると街長は腕の伝達魔法具に向けて最後の命令を告げた。
「総員、爆裂魔法準備! われら一同名誉ある死を告げよ! この場所を吹き飛ばすぞ」
ニヤリと笑うと不敵な笑みを浮かべた隊長。
そして隊長は右手に持つ魔法杖に魔力を集中させ術式を告げた。
「くらえ神敵に浴びせる神の息吹を! 勝ち誇っている貴様らに絶大な死をもたらそうではないか! ”真極暴爆”」
そう告げた隊長は魔法杖を自らの胸にあてた。
直後魔法陣が展開し部隊長を中心として強烈な閃光がアインスに襲い掛かった。
――――キィィン―――
上半身が杖に吸い込まれたように見えた後には杖を中心として爆風が沸き起こった。
―――ドゴオオォォォンーーー
「むっ!これはいかん! 各隊! 対閃光爆裂防御だ! いままのままでは死ぬぞ」
アインスは全員に言葉を告げた。
「防御魔法”真石粒壁”三重展開!」
石の壁が地面より生え三重にアインスの周囲を囲っていた。
その効果によりもっとも爆風に近い壁二つは吹き飛んだが、最後の壁がギリギリのところで神人族ヘルエスからの自爆攻撃から街長の身を守ったのだった。
「ぬぅ……なんとおろかな、自らを犠牲にするとは。 生き残った者を大事に考えるまでもなくこのありさまか……隊長なら責を果たすべきだろうに…… はっ! しまった! 」
「真極暴爆」
―――ドガァァン―――
爆発の中、アインスは新たな命令を告げた。
それは神人族隊長の最後命令に対抗する一手。
「ぬう! いかん! 総員第二術式展開! 杖を地面に刺し防御術式を流せ! 奴らの攻撃を封じ込めろ! 」
地面にぽっかりと開いた穴の中で神人族は最後の魔法を使った。
そのさなか地面の陥没から脱出したヘルメスの魔法師たちは杖を片手に見合った。
「隊長は天に召された。しかも偉大なお力を知らしめて! なら我らもその意に…神の真意の命ずるままに」
「真極暴爆」
「真極暴爆」
長髪の副隊長は魔法杖を地面に突き刺し、周りの魔法師と共に自らの胸に手をあてた。
地面に突き刺した杖を起点に魔法が網の目の様に繋がり魔法師の背後に魔法陣が展開された。
―――キイィィィン―――
―――イィィィィン―――
第10騎士団の騎士たちが魔法杖を地面に突き刺した。
手を胸にあて、魔法を唱えていく度に魔法陣が繋がり……大きな爆音と光が周囲を包んだ。
――――ドガガガァァァァァン―――
巨大な光の玉が出現した後には一瞬の暗闇と静寂が周囲を包んだ。
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