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神人国魔法師の末路 その1


「なんなんだ……なんなんだこれは! なんなのだ!あの魔人族は!?」


 魔法師ソーサラー達は、目の前に広がる光景に怒りを露わにした。

 フェザを制圧した神人族は第10騎士団ヘルメスという神人族のみで結成されたエリート部隊だった。

 

「たかが街に入る為に我らが血を流さねばならぬのだ!」


 ヘルメスの隊長は自身の目前で繰り広げられている光景に驚愕した。

 赤い血華がいたるところで咲いていた。

 それを成しえたのは魔人族の騎士たちだった。


 その光景にヘルメスの隊長は、街の入り口に到着したときの事を思い出していた。

 

「ここがフェザの街か…おかしいな街には先発隊がいるはずだが……」


 街の入り口には、明らかに急造したであろうバリケードが設置されていた。


「…ようこそ、フェザの街へ……」


 バリケードの前に一人の女性が立ちふさがっていた。


 女性は体にフィットした戦闘服に身を包み、胸部には赤いメタルプレートを装備していた。

 そして手には、大きな鉈を持っていた。


「貴様は奴隷か? 一体なにをしている! 先にこの街を占拠した我が同胞はどうした?」


「奴隷がなぜ我らの前に立っているのだ?」


「我らの奴隷なら我らをひれ伏しながら迎え入れよ! さぁ!」


 ヘルメスの騎士たちが、交互に魔人族の女性を罵りながら訪ねた。


―――この街を占拠した先発隊はどうしたのかと―――

 

「……貴方達の疑問には答えられないわそれに声を発することさえ私たちには許しがたいわ」


 入り口に立つ魔人族の女性が声を発すると同時に神人族の部隊に向けて突進した。

 そして神人族の部隊に近づいたとき、女性の周囲に銀色の光が輝いた。

  

―――ザシュッ!―――


―――ザシュッ!―――


―――ザシュッ!―――


―――ザシュッ!―――


―――ザシュッ!―――


 空気を切り裂く音が神人族達に聞こえた。


「がっ!」


「ぐっ!」


「ぎっ!」


「ふっ!」


「ぐぁ!」


 直後、魔人族を罵った神人族達が絶命していた。


 その場には赤い血柱が数本立っていた、

 

「…豚でも、赤い色はきれいねぇ…たとえどんな者でもね……」


「だね、ゼクス?」


「もう、ツヴァイはすぐに自分の世界にはいるぅ…」


 魔人族の女性達によるピチュンが盛大に行われたのだった。

 

「なっ!貴様ぁ! 一体何をしたぁ!! 」


 いきなり目の前の同僚を殺された神人族は驚きと怒りの入り混じった声を上げた。

 そして憎しみの眼で魔人族の女性を睨みつけた!


 不敵な笑みを浮かべたゼクスと呼ばれた女性は右手を上げた。

 手に持っていたショートワンドから火炎魔法を空に向けて放った。


「’火炎撃ヴェノ’」


 神人族の魔法師ソーサラーは、ゼクスと呼ばれた女性を嘲笑った。


「はははっ! なにをしている、まともに狙うこともできないのか?」


「やはり貴様らは、ただの奴隷だな」


 彼らには、ゼクスが行った行為は、魔法を失敗したように映った。


「さぁ、一瞬油断したが、決して貴様らでは俺らにかなわない」


「行くぞ! 蹂躙の時間だぁ」


「一瞬の隙をついての攻撃などもう俺らには通用しねぇ」


 魔法師たちはゼクス、ツヴァイに威圧を掛けた。


「ふっ…あははは! この場にいるのが私たちだけだと思うのかしら? ねぇフィーア」


「…話すだけ無駄。 死ぬものに言葉は不要」


 その言葉が神人族の魔法師ソーサラーの最後に聞いた言葉だった。


「女だけなど我らの敵で…は…」


―――ザシュ! ザシュ!―――


 少々腕の立つ魔人族など神人族の魔法師ソーサラーの敵ではないと魔法師たちは思っていた。

 しかしそれは誤りだった。


―――ゴゴゴーーー


 バリケードが左右に開いた。

 第10騎士団ヘルメスがソレ等を目の当たりにし驚愕した。


「…ばかな……」


―――ザッザッザッザッ!―――


 バリケードの奥から現れた魔人族達が隊列を成して行進した。

手には槍を持ち、その槍からは青い魔法力マナと共に音声による命令が魔人族達に下された。


「ツヴェルフ隊は射撃体勢を維持しつつ進め」


「「「「「「「サーイェッサー!! 」」」」」」


「ゼヒィーツェン隊は、ツヴァイ、フィーア、ゼクスを援護し神人族の魔法師を駆逐せよ! 」


「「「「「「「サーーイェッサーーー! 」」」」」」


 バリケードから現れたのは、赤いベレー帽を斜めに被りフルメタルプレートを身に付けた魔人族達だった。

 魔人族の男性は、手に持った箱をツヴァイの前に置いた。

 するとそこから音声が第10騎士団ヘルメスに向けて鳴り響いた。


「よう~こそ! 我がフェザの街へ…歓迎しますよぉ? 神人族の魔法師ソーサラー達よ。 私はこの街の長、アインス・フェザです。 どうぞお見知りおきを…あぁ失敬失敬。 これから無くなる貴方達には無用の挨拶でしたね。 では……」


―――ブツン!――――


 箱からの音声は途切れた。


「ふっざけるなぁ! 我らの力を見せつけろ!各人魔法を使うんだ! ’火炎撃ヴェノ’」


―――キィン!―――


 神人族の魔法陣から放たれた火炎玉は宙で何かに切られたようにずれて消失した。


「ふぅやれやれ…戦いの合図としては少々、気品が足らんのではないですか…ねぇ魔法師ソーサラーどの?」


 魔法を斬ったのは魔人族の中年男性。

 その服装は赤いベレー帽に軽装のメタルプレートと手に魔剣…いや太刀のような反りのある剣をもち構えていた。


「いけませんなぁ…血がたぎりますぞぉ」


――ニィヤァ――

 そんな擬音が聞こえてきそうな笑い顔で魔人族の男性…アインス・フェザは魔法師を見つめた。

 まるで歴戦の猛者のような雰囲気をと圧力をかもちだすアインス。

 それはまさに、カウボーイハットをかぶった某軍曹の気迫のようだ。


「それはそうと…この街は私が居る限り、二度も貴様らごとき”ピーーーー”には指一本、いや髪の毛一本として触れさせはせんぞこの’ピーーーー’どもがぁ! おっと冷静に冷静に……さぁ掃除の時間だゴラァ!」


 覇気を纏って放送禁止用語と共にヘルメスにむけて決意を告げた。


「「「「オォォォ!」」」


 右手を上げた街長の右横から魔人族の男性30名で構成された部隊が現れた。

 そして槍を片手にヘルメスに向けて突き進んだ。


「ゼヒツェーン隊は雷撃魔法を放て! 蹂躙せよ」


「「「「サーーイエッサアァーーーーー!!」」」


 走り出した男性たちは槍に魔力を纏わせ腕をあげ、目の前にいる神人族に意識を集中した。

 ショートワンドの先に魔法陣が描かれ放たれたのは身体を穿ち焦がす一つの魔法。

 

「「「「”真極雷撃壁テラヴォルドバ”」」」」


―――ガガガガガーーーーーーン!―――


 雷撃による壁…いや柵が神人族に向かい放たれた。  


「雷撃くらいなら我らで対応可能だ、行くぞ!!」


「 ”魔法防護マナウォール”」


 ヘルメスがマジックワンドを片手に魔法を唱え立ちはだかった。


―――ポゥ―――


 マックワンドに魔法陣が描かれるとまるで防壁のように神人族の部隊を緑色の光を放ち包み込んだ。

 直後、魔人族の放った電撃の柵が壁の様にヘルメスに襲い掛かった。


―――ドガガガガッァァン!―――


「ばぁかがぁ! 貴様らの魔法ごとき我らにとどくはずもなかろうがぁ」


 電撃は緑のベールに接触すると熱を帯びながら消失した。

 そして地面に流れた電撃が地面を焦がした。


「はぁっははははは! 馬鹿どもめ、貴様らの拙い魔法など我らが神の加護に比べれば児戯にもひとしいわ! 」


 電撃を防ぎ切った魔法師たちが高笑いをした。


「クククッ! それくらい計算しておるわ! 貴様らはすでに我が作戦に掛かっておるのだよ。」

 

 アインスの表情からは、策士としての自信が満ち溢れていた。

 そして立案した作戦が完璧にこなされていることに感嘆の言葉を告げた。


「オオーブラァボォ! イヨォーーシ! いいぞぉ、ゼヒツェーン隊はそのまま奴らを足止めをしておけぇい!」


 街長が新たな放送禁止用語を述べた直後、神人族の部隊に銀色の光が輝いた。

 そして赤い血しぶきがその場を染めた。

 

「うわぁ! なんだこの女たちは! 」


「どうしてこの場に現れるまで誰も気が付かなかったんだ! 」


「ちくしょう、この化け物どもめぇ! 」


 赤い鮮血の華がそこかしこに咲いていた。


―――ザシュ!―――


「…まったく手ごたえのない…」


 そうつぶやいたのはゼクスだった。

 ”暗殺師アサシン”のスキルがもつ固有魔法”闇身シャドウ”。

 ヘルメスの魔法師ソーサラーたちは、意識の外から加えられる致死の斬撃による絶命が繰り広げられた。


「うふふふふっ貴方達は、本当におめでたいですわねぇ」


「ええっ本当にねぇ」


「私たちが受けた苦しみはこれで済むとは思わないことね」 


「さぁ苦しみなさい、そして懺悔なさい」


「神人族として生きてきたことを、神人族に生まれたことを!! 」


 ツヴァイ達は、大鉈のような魔剣や剃刀のような魔剣、レイピアの形をした魔剣や三徳包丁のような形をした魔剣を振りかざして神人族に襲い掛かった。

 ツヴァイたちは、アキレス腱や膝など関節を積極的に狙った。


「あははは、芋虫だ、芋虫がいるよぉ」


 ノインが子供のような声で…実際に幼い少女なのだが残酷な言葉をヘルメスの魔法師に吐いた。

 ノインは魔法師の身体を少しずつ削っていった。

 まるで子供が虫をわざと殺すように、無慈悲に、残酷に、切り刻んでいった。


「うわぁ!やめろぉ! こないでくれぇ 」


「ぐあぁ、もうころしてくれぇ 」


「助けて、俺たちが何をしたぁ」


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさ――― 」


―――キィン! ブシャ!―――


 ヘルメスは大混乱した。

 意識の外から斬撃で人体の弱点というべき関節を狙われて動けなくされていくのである。

 少しずつ体を削られ、芋虫のように四肢を無くし、地面に這いつくばったあとには赤い花が次々と咲いていった。


「フフフフフフッ」


「アハハハハハッ」


 ツヴァイ達は笑みをこぼしながら嬉々として神人族を殲滅していった。


「これくらいで我が神に加護された我らを殲滅できるとでも思っておるのか!」


 第10騎士団ヘルメスの隊長は、魔人族の部隊の穴をついてきた。


「戯れるな! 貴様らには本当の戦場を教えてやろう」


 今の現状は、神人族の部隊内に感知できない何かが入り込んで斬撃を繰り返していること。

 しかも即殺しているわけではなく、じっくりと倒していることがわかった。

 第10騎士団ヘルメス隊長は新たな命令を発した。


「我らは神の子だ、ならばこれくらい耐えて見せよ。 全部隊員は傷ついたものを連れて密集体型、周囲に防御を張りつつ、火炎砲撃魔法部隊は周囲に魔法を展開、奴らを近づけさせるな! 」


「ハッ!」


 そう新たな命令を受領した伝令が伝達魔法具を用いて騎士たちに伝えた。

 すると騎士たちはすぐに行動を開始した。

 負傷者をすぐに担ぎ、密集体型をとり防御陣形を取った。

 そして火炎魔法を周囲にまき散らした。

 それを見た街長は新たな指令を出した。


「ちぃ! ツヴァイ達を自由にさせすぎたか!? なぁに、これくらいは想定の内だ! アフツェーン隊は配置についたか?」


「ハッ!アインス様 配置準備良好。作戦可能です!」


「よろしい。 では締めと行こうか? なぁエルフィ?」


「ハッ! では当初のご指示通り、行動を開始します」


 そう告げるとエルフィと呼ばれた魔人族の女性が踵を返してアフツェーン隊に近づいた。

 神人族を殲滅する為の仕掛けを発動するために。

いつも読んでいただいてありがとうございます。

感想、ご意見、誤字脱字があれば報告お待ちしています。


次回投稿は日曜日の予定です。

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