フェザの改革 その6
街の広場にはヲルフガング流決闘術伝承者、ミッタマイヤとロイエルの獣人コンビと一人の女性がいた。
その魔人族の女性はクライクラスト商会から派遣されたフラン・ハイネであった。
三人の周囲を囲むように魔人族の男性と女性が立ち並んでいた。
魔人族の服装は、明らかにこの世界の物とは違うと愛子は思った。
男性、女性も関係なく服装は胸部を黒い薄いメタルプレート以外はボディースーツの様に体にフィットした物だった。
男性の手にはシュートワンドとアーミーナイフのような剣がしっかりと握られていた。
女性の手には、それぞれ形の違う魔剣が握られていた。
その魔剣にはまるで三徳包丁のようなものまであった。
「あれ、包丁よね…はぁ。フランって一体何をしたの?」
「アイコ様、申し訳ありませんが、あの異常者…精神異常者はもうしわけないですが昔からどうしようもないんです…はぁ魔法学院時代にもいろいろとしていましたから…それに街長も何か少しかわってしまったようですし…きっとフランが何かをしているんですよ」
「それにあの服装って…何か…私の黒歴史を思い出されるんだけど…・それに包丁って包丁って魔剣になるの?この世界!?」
装備はフランの発案だそうだが、それを街長に告げるとすぐに設計作成された。
女性の服装を見た愛子には、空に昔の自分が見えた。
『かっこいいのは、すきでしょ?』って過去がこんにちわ!
「…くっ! ここでも黒歴史が……」
「黒歴史?」
ルルカッタが愛子に何やら確認すると愛子が空をみながら頭を振り払った。
そしてロイエル達が声を張り上げて叫びあげた。
「「「貴殿(貴女)達は絶望をその身に刻み付け、そして生まれ変わった!!! 」」」
ミッタマイヤ、ロイエル、フランが集団の前に仁王立ちしていた。
「さぁ、貴女達がなすべきことをのべよ! 」
「「「YESマム!ピチョンを、数限りないピチョンの嵐を!!」」」
「「貴殿たちがなすべきことは何だ!」」
「「「サーイエッサー!殲滅の嵐を! 敵に滅殺の慈悲を!!」」」
「貴殿たちは我らが鍛え上げた戦士の中でも指折りの猛者たちだ! 神人族達が貴殿たちに刻み付けたものは計り知れない! だが、貴殿たちはそれを超える強さを身に着けた! さぁ解き放て! その怒りを! 痛みを! 敵の眼に、体に刻み付けよ!! 」
「「「「オオオオオオーーーーーー!!」」」」
ロイエルは騎士となった魔人族の男性たちを振るい立たせた。
「私が命ずるのは、一人一殺です。 さぁお行きなさい、我、同志たちよ!!」
「「「「「YESマム!」」」」」
フランが騎士となった魔人族の女性達に命を発した。
「これはどこの指揮者代行なのよ……」
フランが施した魔法’精神回復’は彼女たちが持つPTSDに対する治療のはずだった…だったのに!
結果、彼女達は精神的な傷を乗り越えその対価として彼女達は新たな自己像とスキルを獲得した
「アイコ様、僕、初めて知りました。 魂職って後天的に変化することができるんですね……あの精神異常者…あいかわらず常識がどこかに逝っているんですね…フラン・ハイネ……君ってやつわ……」
この世界に生まれた住人は先天的にスキルを獲得しているがスキルは一生変わることが無いものというのがこの世界の常識だった…そう生まれ変わることでもなければ!!
フランの治療と言う名の洗脳を受けた後にフェザの住人の魂職が変化した。
女性は”暗殺師”に! 男性は”殲滅師”に!
愛子とルルカッタは目の前の現実が信じられず、思わず気を失いそうになった。
これが、先ほどの会議の後に起きた出来事であった
「No50以降はフェザに駐留! やって来た神人族の兵を屠れ! 貴女達の力を存分に刻みつけなさい!」
「「「「「YES!マーーム!」」」」」
「雷撃並びに重機装備部隊はフェザを防護せよ。 以降は街長殿の指示に従え! さぁ貴殿らの力を存分に敵どもに見せつけてやれ!!」
「「「「「サーー!イエッサーーー!!」」」」
―――ザッザッザッーーー
―――シュバッ!―――
魔人族の女性達の半数が音もなく闇に消えた。
それを同時に男性たちは、ミッタマイヤたちに敬礼をしてから隊列を組み、ショートワンドと鉈を手に街の入り口に向けて行進を始めた。
愛子はその様子をみて一言つぶやいた。
「どこの軍隊だ。これ? 」
そしてそれを見届けたミッタマイヤ、ロイエル、フランは残りの魔人族の男女混成部隊を率いてフェザの街からイゼルに向けて進軍をはじめた。
こうして魔人族による本格的な軍事行動が開始されたのである。
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