表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/216

フェザの改革 その4


「なんで! ハート〇ン軍曹がここにいるのよ!! 」


 愛子は地面に手をついて項垂れた様子でつぶやいた。

 

「「「「ハート〇ン軍曹? 」」」」


 ルルカッタとルイカと獣人達は声をそろえて愛子に問いただした。


「そうね…私は元の世界で看護師として仕事していたのよね…休みが合わず休日が友達と会うことがすくなかったんだよね……だから一人でも他人と遊べるオンラインゲームや映画をBDで休日を過ごすていたのよね……その時に見た映画にそっくりなひとがいたのよ」


「「映画?」」

「「オンラインゲーム?」」


 たまたま見た映画にまさに今の愛子の眼前で繰り広げられる光景を映し出していた映画があった。

―――フルメ〇ルジャケット―――


 そうあの鬼軍曹が出る奴である。


「まさか現実であれをやる人がいるとは……」


 愛子の気持ちを無視しているかのようにフランの声と轟音がホールから響いてきた。 

 

「貴様らスライムどもに私から特別な訓練をしてやる」


「「「「YESマム! 私どもに生きるすべを」」」」


「まずは、筋力を増強するのだ!」


「「「「YESマム! 」」」」


―――シュバッ!!―――


「「「「イッチ、ニッ、サンッ―――――」」」」


 フランの掛け声で、その場にうつぶせに寝ころび女性たちは腕立てを開始した。

 そしてその回数が50回を超えはじめたころから、腕立てのスピードが落ちてきた。

 

―――カツッカツッカツッ! カツン!―――


「貴様ぁ、誰が休んでよいと言ったぁ!」


「Noマム、胸が重たく持ちあがりません」


 腕立て伏せが出来なくなった女性はたゆんと胸を揺らして抗議した。

 フランは女性を見下ろしながら告げた。


「口答えなど誰が許した! 貴様のようなホルスタインには休憩など生ぬるい、上がりきるまでそのままの姿勢でいろ! 」

「Noマム! うでが!…うでが持ちません!!」


 そういうと魔人族女性の腕がプルプルと揮えていた。

 自重に耐えることができないといった表情であった。。

 フランに自身の状況を伝えた女性は額から油汗を流していた。


「ああぁ…」


―――ガタン―――


 そしてついに限界を迎えた女性は崩れ落ちた。


「はぁはぁ」


 全身で息をしながら、顔を持ち上げた。

 そこには、深い吐息をはくフランの姿があった。


「ふう……貴様には失望しかないな。 貴様はすぐにあきらめる……そんなものは戦場ですぐに死ぬ者だ」


 肩で呼吸をする女性の首筋を掴みフランは告げた。


「貴様が死ぬのは良、しかしその死は残された者のためである必要があるだろう? それを行うことができないものがチームを瓦解に追い込むのだ。 そんな糞虫には追加訓練だ 私の前で気配を消してみろ…もしできなければ…わかっているだろうな?」


「YESマム ’闇身シャドウ’」


 愛子たちの前で気配を消した女性は突如として意識の外に消えてしまった。


「ちょっと!アイコさん! あれどうなってんの!? 」


 ルイカが思わず叫んだ。


「ん~…ちょっと待ってね。 いろいろ現実が追い付かないわ」


 そう目の前で起きた光景はルイカから見て異様だった。


「私も魔法使ってよく見てみるわね。 完視ヴィジョン!」


 そういうと愛子は固有魔法”完視ヴィジョン”をつかった。

 しかし、愛子の返事はルイカの予想を裏切った。


「えっ、え―――! どういうこと!? 居場所が、というか存在がまったくわからない! 本当になにも…見えないよ…存在している?」


 それが愛子は気配さえつかめないくらい完全に遮断されているのである。

 愛子とルイカ、ルルカッタと獣人達はもうおどろくしかなかった。

 そしてそんな愛子たちを尻目にさらなる驚きの光景が展開された。

 目の前にある人型人形の首が次々とお空に飛んでいったのだった。


「いょーし!いいぞぉ。 エェェェクセェェレェェントなピチュンだ! 貴様はただの糞虫からホルスタインになれたようだな。 その身に得た技術を我らの為に使うことを許そう。そうすればたとえ貴様が死んでも、戦友が生き残る確率が増える。 貴様の肉体の死は精神の死ではない、きさまは永遠の戦士になるのだ」


 フランが何やらよくわからない言い回しで見えない女性を褒めた。

 フランの目の前に急に魔人族の女性が現れた。


「ああっMYマム! 私は貴女様の駒です。 ぜひ私を駒としてお使いくださいませぇぇー!」


 涙を流し片膝と拳を地面に着き頭をフランに向けた女性は紅潮した顔でフランを見上げていた。

 そしてその女性の方に片手を置き言葉をかけるフラン。


「なにあれ……」


 愛子とルイカ達はその光景に絶句した。 

 ここフェザに女性だけの構成による完全な暗殺部隊が誕生したのである。

 

 そんなこんなでフランの治療と言う名の洗脳?をうけた女性たちは家族のもとに帰れるまでに回復した。

 もっとも女性達が戻った後、数日たってから獣人達にフランの治療を受けた女性が戻った家の男衆から女性の恐怖を聞かされるはめになるのだった。


「ミッタマイヤ先生、うちの嫁が治療を受けて戻ってきたんですが……」


 いつもの訓練を行いながら魔人族の男性衆達と乱捕りを行うミッタマイヤに相手の男性から声がかかった。


「なにか包丁みながらつぶやいてるんですよぉ! しかも薄ら笑いをしながら!! 」


「えっお前の所もか! うちのかみさんも薄ら笑いしながらご飯つくってるんだけどそれがすっごくこわいんだよ」


「お前たちのところもか! うちの妹もだよ。 しかもいきなり目の前にあらわれるんだよ。 急に!! さっきまで誰もいない場所に振り返ると急に現れてるんだよ」


「うちのも椅子に座っていて後ろを振り返ると急にお茶もって現れてるんだよ」


 口々に男性たちからの恐怖の報告がミッタマイヤに寄せられていた。

 それを聞いたミッタマイヤは乱捕りをしながらも思わず優しい瞳で男性たちをみつめた。

 そして心の中でつぶやいた。


『スマヌ! それはうちの治療師がしでかしたことだ』と


 そしてその夜、魔人族の男性の声を聴いたミッタマイヤはその日の訓練を終えた後に、ロイエルと相談した。

 ミッタマイヤとロイエルの訓練により、実践レベルの修業を行うことで肉体的には魔人族の男性たちも戦士として戦うことができるレベルには至っていた。

 しかし精神的な強みはいまだ獲得できずにいた。

 それがミッタマイヤたちの一つの問題点として存在していた。

 そして一つの方法を思いついた。


 後日、ミッタマイヤとロイエルがフェザの男性衆にも同じことを試そうとしてうまくいかずにフランが手伝ったのだった。

 こうしてフェザの住人のほぼすべてが完璧な気配遮断と一軍隊レベルの統制がとれた暗殺部隊となった。

 唯一それを免れたのは愛子たちと街の相談を行っていた街長とその配下の実務対応の魔人族数名だけだった。

 

 こうした動きは愛子たちがフェザの街を開放してからわずか二週間で起きた出来事だった。

 それは王都を占拠している神人族がフェザのことを聞きつけ軍備を充実させたあとに進攻してくるまでのぎりぎりの時間だった。


いつも読んでいただいてありがとうございます。

感想、ご意見、誤字脱字があれば報告お待ちしています。


次回更新は土曜日の予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ