表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/216

フェザの改革 その3


「こちらよ、今から案内するわ。 ついてきて」


 愛子は魔人族の女性たちがいる場所に案内を始めた。

 その時、ルルカッタと合った。


「…あれ? 君? もしかして厄災カラミティ? 私だよ? ほら魔法学院の! 第Ⅱ研究室の!」


「ん?……あっもしかしてその忌み名を知っていて、その角は…フラン? フラン・ハイネ?」


「そうだよ。私だぞ!」


「あれ? ルルクン、フラン知っているの?」


「え、えぇ…魔法学院アカデミーの問題児の一人です」


「しつれいだなぁ、その筆頭が君じゃないか! 厄災カラミティとまで呼ばれていたでしょう?」


「フラン。 アイコ様に変なことしないでね。あとこの街の人はフランならきっと救えるから…お願いします」


 愛子は、ルルカッタから分かれると女性たちが受けた被害をフランに話した。


「……それは……ひどいな…」


 それは、異世界メイティアにおいても最低限の人権を無視した行為であった。

 奴隷化はこの世界では、認められている権利だから、奴隷商という仕事もあると愛子は知っていた。


「奴隷は確かに商売として認められている…だけど奴隷殺人、とくに快楽殺人はみとめられていないんだ…」


 奴隷という商売があることを知ったのはルルカッタの説明からであった。

 愛子は生粋の日本人である愛子には受け入れにくい事であった。


「私は、この世界の奴隷という制度は嫌いよ。 でも必要性があるうえで奴隷が認められているならそれをことさら無くそうだなんてことは言えないわ。 ただそれでもこの扱いはゆるせない!」


 愛子が自分の想いをフランに伝えながら街の一角にある建物を目指し歩いた。

 フランが歩く道は荒れ果て、街の様相も様変わりしていた。


「うっ…この匂いは……麻薬か……」


 石造りの建物がところどころ壊れ、神人族の使っていた薬の匂いが取れずにいた


「今は落ち着いたけど、心に受けた傷は深いものだわ。 今も暗いところでは寝ることができない人がほとんどよ。 とくに男性には恐怖感と嫌悪感が強いみたいで家族でも近づくことができないの」


 そう愛子はフランに説明した。 

 その表情には深い影が落ちていた。


「……そ…そう……精神的障害か……」


 フランは愛子の話を聞きながら、ブツブツつぶやいていた。

 二人は魔人族の女性が収容されている施設へ到着した。


「アイコさん。 私にまかせてもらえませんか? 必ず、女性たちを立ち直らせてみせますから」


 フランは愛子にそう告げると、施設の中に入っていった。

 小さな丸いメガネがキラリと光った。


―――キィ――


 病院に入院している魔人族の女性たちは表情も硬く誰も笑うことなく、表情からは女性たちの絶望と怒りが見て取れた。

 そして、もっとも問題だとフランと愛子が感じたのは、女性たちは汚された体を嫌い、自傷行為を繰り返していた。


「夢よ夢よ夢なのよぉ!もういやぁ、ころしてぇ!」


「ふふふふふっ、私なんて生きている価値もないのよ。私なんてただの汚い女なのよ……」


「あぁ貴方ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」


「おにいちゃん……たすけて……体がきたないのぉ……いやなのぉ……」


―――ガリガリガリ―――


 魔人族の女性たちは大部屋に入らず、個室に入れられていた。

 それは大部屋に入れると、お互いがお互いを殺しあってしまうからだった

 当初、愛子とルイカが女性たちを拘束していた器具をすべて外した。

 その直後に女性は自殺を図ったのだ。


「もう!しなせてぇぇ」


 魔人族の女性は割れたガラスで手首を切ったのだ。

 その為、紐で体幹に近いところをくくり止血を行った。


「もういやだぁぁこんなの……」


 自殺を図った女性は、すぐに愛子がいる施設に連れ込まれた。

 その女性は、今もこの施設の奥の部屋で治療されている。


「おねがい、生きて…・生きてよぉ」


 魔人族の生き残った女性の中に”回復師”が居た。

 その自殺を図った女性の身体は治療されていた。 

 スキル”回復師”は怪我などを回復することができる魔法を使えるスキルである。


「’回復ヒール’」


「’回復ヒール’」


「’回復ヒール’」


 ただしその魔法ヒールはどんなにLVが上がろうとも体の回復しかできなかった。

 一度壊れた心を修復するためには回復師ではできないのだった。


「わたしでは…この人を……たすけられない……治療師でないと……」


 心を治療することができるスキルは治療師のみであった。


「私も…限界です…うぅぅ………」


 回復師の魔人族の女性も凌辱され、汚されたせいで心がこわれかかっていた。

 しかし、心がこわれずにいたのは、同じ目にあった女性の身体を直すことができるのが自分しかいないという責任感だけであった。


―――ポン―――


 回復師の女性の肩にフランが手で軽く叩いた。


「ひどい状況ですが、私が必ず女性たちを立ち直らせますから……貴女はやすんでくださいね……」


 フランは愛子を見て告げた。


「さぁ貴方も…’精神体回復アストラルヒール’」

 

 回復師の女性にむけてフランの魔法陣から金色の光が放たれた。

 

「貴女が受けた心の傷はすぐに癒えないわ……その傷を治療するには貴女が生きる目的を持てることが必要なのよ……」


 そう告げると小ぶりなメガネが光を放った。


「その目的がどんなモノでもね……」


 黒い影を有した顔で魔人族の女性を見つめていた。

 右唇をニィーと歪ませたフランの笑顔がそこにあった。


「うふふふ」


 そして一人一人の魔人族の女性の額に手を当てて、耳元で声をかけて言った。 


「あぁ……ありがとう!ありがとう!」


 フランに手を当てられ声を掛けられた女性たちは全員が涙を流していた。

 そして凌辱、強姦された女性は殺された女性を除いてほぼ全員であった。

 

「私はこれからすべての女性に魔法をかけていきますね」


 それからフランは、毎日魔法を女性にかけた。

 フランが街に来てから8日が過ぎたころから施設にいる魔人族の女性たちに変化が現れた。


「そうよね。私は間違っていないのよね」


「うふふふ、ああこの肌触り、いいわぁ。 冷たい感じが特にいいわ」


「おにいちゃん、わたしはダイジョウブだよ、踏みつぶすから」


「貴方、私はもう大丈夫よ。 そう引きちぎればいいの」


 何人かの魔人族女性たちの目つきと顔が変わってきた。

 フランが魔人族の女性たちを施設のホールに集めて何かをしているようであった。


―――バタバタバタ! ドン!!―――


「ハァハァ! なぁアイコ!! フランが女の人たち集めてやってる内容なんだけど、アンタ確認したん!?」 


 愛子はルルカッタと共に街長とフェザの再建と次の街解放への物資の確認をしていた

 そこへ扉を全力であけたルイカが血相を変えて飛び込んできた。

 ルイカはフランに言われて魔人族の女性たち魔法の指導をするためにフランを手伝っていた。


「なにルイカちゃん? フランが何かしでかしたの? まさかあの子、女性たちに手を出し始めたか!! 」


「ちがうわよ! むしろそれよりも最悪なことしてるんよ!! あの人――― 」


「ルイカさん、ちょっと落ち着いてください。 これお茶ですからどうぞ」


「あっルルカッタ気が利くな」


―――がっ! ゴクゴクゴクゴク! ダン!―――


 ルルカッタから強引にお茶を受け取ると一気に飲み干したルイカ。


「ぷはぁ、あのな…フランって……」


 そして自分が目撃した詳細を愛子に伝え始めた。

 そこへ魔人族の男性達にヲルフガング流決闘術を教えていたミッタマイヤwithロイエルの獣人コンビがやって来た。

 ルイカと愛子の話をしている二人を見るとルルカッタに聞いてきた。


「弟よ、ルイカ姫はどうしたのだ? 」


「ロイエル兄様、なにかフランが……精神異常者サイコパスが何かやらかしたみたいなんですけど……」


「あの様子ならフラン殿は相当やばいことしたんだな。 ルイカ姫も大概のことに耐性がある方なんだけど、それがあんな取り乱し様なら……」


「「悪い事しか思いつかない!! 」」


 ルルカッタとロイエルが互いを見つめて声をそろえて言った

 愛子はルイカに手を引っ張られて施設内のホールに向かっていった。

 それを後からついていくルルカッタと獣人二人組。

 そろっとホールの入り口から中をみたルイカを含めた5人は思わず絶句した。


「貴様らはなんだ! 私はお前たちに生きる目的を与えた! 」

「「「「「YES、マム! 私たちは生きる豚です! 」」」」


「そうだこの汚い豚どもが! 私が与えた物はなんだ!! 」

「「「「「「YESマム! 生きる力です! 」」」」」


「そうか! そうとしか感じないのかこの豚どもめ! 貴様らに生きる価値は無い! だが私が生きろという限り生きなければならない!! 」

「「「「「YES! マム!! 私たちは命令が無ければ死ぬことも許されません!!」」」」


「自分で決めることもできない豚どもめ! 価値観など捨てろ! 倫理観なんて糞だ! 」

「「「「「YESマム!! 私たちは倫理なんて考えません、すべては平等に無価値です!! 」」」」」


「よく言った豚どもめ!! ウチの獣人たちとルルカッタをファ〇クする権利を与えよう! ではお前たちが望むものはなんだ!! 」

「「「「「YESマム! 私たちは奪われない力を得る事です!! 」」」」」


「絶望した!! 豚、否、両生類の脳みそしかない貴様らには得るべきものすら考えることができない! そんな甘えん坊の糞豚どもぉは豚でもないスライムだ!」

「「「「「YESマム! 私たちは考える力もありません!! そんな糞どもにご慈悲を!!! 」」」」」


「青いスライムども!! 貴様らは男たちの肉袋だ! 肉袋はその体をどう使うのだ!!」

「「「「「YESマム! 私たちは男どもを吸い寄せピチュンするための道具です!! 」」」」」


「よく言った! スライムども!! そうだ男はピチュンだ!!! その道具になれるものが生き残るのだ!! 貴様らはスライムだが両生類レベルの知能を最大限いかせ!! 」

「「「「YES!! マム!! 」」」」


「声が小さい! 糞スライムども!!! 」

「「「「「「「YES!!! マァーーームゥ!!! 」」」」」」


 そっと扉を閉めた愛子は思わずつぶやいた。


「なんで!? なんでここにハー〇マン軍曹がいるのよ!? 」


 愛子は地面に手をついて力なくへたり込んだ。

 その表情は絶望に包まれて薄笑いをしていた。

いつも読んでいただいてありがとうございます。

感想、ご意見、誤字脱字があれば報告お待ちしています。


次回更新は年明けの予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ