フェザの改革 その2
白衣を纏った女性は小ぶりな丸メガネをゆっくりとかけ直して目の前の女性を見た。
その表情は少し興奮しているように紅潮していた。
「まさか、本当にこんなものを付けて生きてる人がいるなんて」
その白衣の女性はクライクラスト商会から派遣されたカウンセラーだった。
そしてその前に立つ女性は黒い硬質なメタリックの輝きを放つ義肢を付けた女性、そう愛子だった。
女性はいきなり背を屈むと愛子の脚を撫でまわすように触り始めた。
まるで未知のおもちゃを見せつけられた子供のようにその瞳は純真でまっすぐに愛子の義足を見つめていた。
「ちょっ! ちょっと! なに? いきなり人の脚をスリスリと触らないでよ」
愛子は白衣の女性の突拍子のない行動に驚き思わず声を上げてしまった。
「あぁぁ素敵ですぅねぇ…魔法学院でも研究していた人はいたけどこんなに生体にしっかりと付けられる物を創れていないわねぇ」
その女性は恍惚とした表情で愛子の脚を撫でまわしていた。
「はぁすてぃぃぃきぃぃ!」
撫でまわすスピードがさらに早まり顔もくっつけそうになった。
「もうぅやめてよぉ!!」
―――ゴチィン―――
その拳で正気に戻ったのか、白衣の女性は愛子の義足を触っていた手を名残惜しそうに下げ上目遣いで愛子を見上げた。
「はっ!? 私はなんてことを! 申し遅れました、私はクライクラスト商会から派遣されたフラン・ハイネという者です」
―――ペコッ―――
愛子の脚から手を離したフランはすぐに立ち上がり、頭を下げた。
丸メガネがチャームポイントで可愛らしい笑顔がそこにはあった。
「フラン・ハイネさん?」
「はい!」
フランは白衣を靡かせて愛子の前に立った。
青い肌から女性は魔人族であることがわかった。
「貴方は角があるけど魔人族なの?」
「えへへ。 私は魔人族と獣人族のハーフなんですよ」
小さな羊のような巻き角が左右に二つ生えていた。
瞳は金色で大きな瞳がまっすぐに愛子を見つめていた。
愛子は頭を下げてあいさつした女性を見た。
「貴女の年齢は?」
外見は17歳くらいの女子がそこにいた。
「私は、200歳です」
「あっやっぱり年上なのね」
ルルカッタ達、普通の魔人族と明らかに違うのは羊のような巻き角だった。
それ以外は可愛らしい女の子というのが愛子の第一印象だった。
「アイコ・アオヤマ様ですね? ボスから聞いていた通りの印象の方ですね~ はぁ~ 素敵な御足ですね~ もう少し触っていいですか? とくにそのメタリックな硬質的部分を特に! 」
フランの表情が先ほどのような恍惚とした表情になり、顔がほんのり赤くなって、両手を開き愛子にとびかかろうとする姿勢になっていた。
もうルパンダイブの格好とでも言うべきか、すぐにでも飛び込んできそうな勢いであった。
「ちょっと待って! ね! 貴女が本当に、二コラさんが言ってた治療師なの? 」
愛子は少し後ろに下がりながらジリジリと距離を詰めてくるフランにむかって言った
フランと目を離さず、愛子は必死に思い出していた。
ニコラに伝達魔法具で連絡した日のことを。
「OK! アイコ君! すぐに凄腕の治療師を送る! ひどく衰弱した人でもしゃっきりと治した実績がある奴だ。 ただ……少し変わっているが…… 」
二コラのいつも通りすぐに対応してくれた。
愛子はフェザの街を開放した後にすぐにクライクラスト商会のニコラに連絡をした。
多くの住民が傷つき、精神的にも身体的にも癒すことができる人がいると告げた。
二コラからの返事は腕のたしかな者をすぐに送るという内容だった。
「ねぇ……本当に……貴女が二コラさんから伝えられた人なの?」
愛子は確かに二コラから治療師を送ると聞いていた。
「私こんな変わっている人が派遣されてするとは思っていなかったわぁ…」
「ひどいです!私はまともですよ?」
「まともな人は語尾にクエスチョンつけません!」
―――二コラさん! 聞いてないわよ! こんな感じの人なんて!! ―――
大空に笑顔で決めている二コラが浮かんだが愛子は全力で無視した。
ジリジリと距離を詰めるハイネはにっこりとした笑顔で愛子を見つめた。
「私はボスから、フェザの街で大量の負傷者がいるから治療して来るように仰せつかっています」
そう答えたフランはさらに愛子との距離を詰めてきた。
―――ジリジリ―――
愛子は思わずたじろぎ、さらに後ろに身を引いた。
フランは愛子の様子を無視して話始めた。
「ところで、お話にあった女性たちはどこにおられますか? 」
フランは先ほどまでとは打って変わって、真剣な表情で愛子に質問した。
その表情は先ほどまでとは違う、使命感を愛子に感じさせた。
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