フェザの改革 その1
「「どうして、こうなった(ん)? 」」
ルイカとルルカッタは目の前に広がる光景に頭を抱えた。
そこには、集めれた街の魔人族の男性たちが倒れこんでいた。
皆、死屍累々といったありさまだった。
事は少し前にさかのぼる。
「ミッタマイヤ様、ロイエル様、我が町の男衆を連れて参りました」
街長とその背後に奴隷にされていた魔人族が100人ほどいた。
全員、傷だらけで体に鞭を打たれた後がくっきりと残っていた。
「ウム、ではこれより貴方たちに我らがヲルフガング流決闘術を授ける」
「まずは君たちの決意を確認したい」
ミッタマイヤとロイエルはその場に立つ魔人族に向かって話始めた。
「貴方たちは力を欲した。 それはなぜだ? 」
一人の魔人族の男性が答えた。
「俺たちは、奴らにいいようにされた。 俺は姉を、あいつは妹をクイモノにされた」
「俺たちは二度とこのような思いはしたくない」
男たちがその発言に賛同した
「そうだ! 」
「俺たちは奴らに奪われる存在じゃない」
「護れる力を! 奪われない力を! 」
街長以下、すべての魔人族が声を出していた。
それを聞き届けた獣人達は満足気味にうなずくと告げた。
「君たちの声は我らに届いた。 では君たちに我らが指導をさせていただく」
「まずは走り込みで基礎体力を付けていただく。 その後に特別訓練を行う」
「では走れ!」
「「「「「「応! 」」」」」」
獣人の合図に呼応するように魔人族の男性たちは走り始めた。
それは街の外周を繰り返し走り始めた。
それを追うミッタマイヤ。
2時間ほど走り続けた男性たちは二手に分けられた。
そしてさらに走り込みをつづけるグループにミッタマイヤは告げた。
さらなる訓練という地獄を!
「では走りながら我が攻撃を避ける訓練を始める。 行くぞ!! 」
「「「「「「「えっ!? 」」」」」
「行くぞ、ヲルフガング流決闘術”爆砕脚” 」
ミッタマイヤの鋭い横に薙ぎ払う蹴りが前を走る魔人族に襲い掛かった。
ドガァァァン!!
外壁の塗装が一部剥げた。
「あっぶねぇ! 」
「あれはマジでやばいやつだ! 」
「しにたくないよぉ! 」
間一髪でよけた魔人族達が安堵の声を上げた。
何せ、よけなければ爆殺力がある蹴りが我が身に襲い掛かるのだ。
「はははっ我の蹴りをうまく掻い潜って生きよ!! それヲルフガング流決闘術”鋭殺脚” 」
次は鋭い刃物で切られたような蹴り技が魔人族に襲い掛かった。
「「うおぉぉぉぉぉぉ! 」」
魔人族の男性たちは全力でよけた。 それこそ分身が生まれているような勢いでよけた。
さらに風が暴威をもって魔人族の男性たちに襲い掛かった。
「わははは! 」
「「滅茶あぶねぇ! 」」
「「「やられるかぁ!! 」」」
「「「「うぉぉぉ!!! 」」」」
「「「「「なぜぇこんなことにぃ!!!! 」」」」」
魔人族の男性たちの阿鼻叫喚が街の外周に轟いていた。
それを遠めに見るロイエルはつぶやいた。
「ミッタマイヤはいったい何しておるのだ」
そうつぶやいたロイエルの周囲には石像のように微動だにしない魔人族の男性たちが居た。
「ロイエル先生……あの……動いても……よろしいでしょうか? 」
「そろそろ……しんどいです……」
それを聞いたロイエルは明らかに不機嫌な顔で告げた。
「ダメだ。 この訓練は体内で魔力回路をうまくつかみ魔法力を生み出す力を育てることを目標にしている。 魔法力をうまく生み出せられたら、魔法’強化’を教える。 だから魔法力を纏う感覚を養え」
至極まっとうなことを告げたロイエルだが…
ただ問題が一つあった。
「先生! たしかにおっしゃることは理解できますが、この姿勢をつづけることは無理です!! 」
魔人族の男性が叫んだ。
その姿勢とは片足を地面に付け、反対足を上げ大腿を地面と水平に保ち、両腕を上げ脇を開いたポーズ。
あえて言うならグ〇コポーズであった。
ただその姿勢をこの場にいる魔人族の男性達は走り込みの後に休みなく1時間同じ姿勢を継続していた。
「あぁ…ムリだ! 」
「これしんどいわぁ」
「あの人も鬼だったか…… 」
紳士であるロイエルに対する評価が別の意味で急上昇した。
鬼教官として……
そのころ愛子から連絡を受けたクライクラスト商会からフェザの街に一人のスペシャリストが到着した。
その女性は白衣を纏い、小ぶりな丸メガネを掛けたロングヘアの魔人族だった。
「ここが、連絡のあった場所ね」
そうつぶやいた女性は街のメインストリートを歩いていた。
そして彼女を待つであろう女性と会うために目の前に見えた石造りの市庁舎に入った。
この女性が持つ技能によりフェザの街の女性が新たな能力に開花することになるとはそのときだれも知らなかった。
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