フェザ奪還 その5
ギイィーー
元市庁舎の扉を愛子は開けた。
重厚な扉を開くと、そこには受付係の神人族が一人、受付台に向かって座っていた。
「あん? なんだ奴隷屋か、部隊長なら上の執務室でお楽しみ中だよ。 いくなら後にしたほうがいい」
そうぶっきらぼうに愛子に伝えると受付係の神人族は目線を受付け台に戻した。
そして、何かの書類を前に急がしそうにぶつくさ言いながら格闘していた。
「ねぇ、早く部隊長さんに逢いたいんだけど? 」
そういうと愛子は受付台にいる神人族の前で机に腰を掛け、短いニットスカートから足をクロスし太ももを見せつけた。
チラチラと受付の神人族は、愛子の絶対領域を前に目線がせわしなく動いていた。
そして愛子の太ももにその手を伸ばして触り始めた。
「ねぇ、そろそろ会わせたくなったんじゃない? 」
その足を見せつけ、触らせながら愛子は神人族へ訪ねた。
「そっ、そうだな。 うん。 まぁいいだろう」
そういいながら愛子の太ももを触りながら神人族は告げた。
愛子は笑顔を引きつらせていたが、そのことに神人族の男性は気が付かなかった。
「まぁ! ありがとう!」
そういうと愛子は机から立ち、神人族の手を引き離すとワンピースのすそを直した。
そしてルルカッタ達のロープを持ち直した。
「ほら、いくよ。あんたら」
「ちっもう終わりかよ…あ、あんた、いい身体してるなぁ。ひっひっひっ」
神人族の男性は少し名残惜しそうに手をひっこめると愛子たちを二階へ案内した。
大広間の階段を上がるとすぐに声が聞こえてきた。
「…・い…いた……」
「…のう…・し・・・がぁ」
男性の怒声と女性のなにかを懇願する声だ。
―――キィィィ―――
そして、声がより聞こえる部屋の前に来ると扉を神人族の男性は開けた。
愛子はその光景に怒りが頂点に達した。
「なんだ、きさまぁ! 死にてぇのか!? 言う事きけやこらぁ!!」
「やぁ! やめてぇ、おねがいよぉ! もういたいのいやなのぉ!!」
目の前の神人族の小太り中年は手に鉈を持っていた。
その鉈は赤く染まって、刃先からは赤い液体が滴り落ちていた。
「なっ…」
男の手の中には女性の青い腕があった。
違うのはその腕が体から切り離されていたことだった。
―――ゴトン!―――
さらに鉈がふるわれた。
「イイイャァァァァl!!」
女性の右腕が愛子の前で切断された。
「ぎゃぁぁぁぁあああああああ」
絶叫は部屋に包まれた。
愛子は部屋の中を見回すと中にはバラバラにされ、命を潰えた魔人族の女性たちの身体がいくつもあった。
「…何してくれてんだ!この豚ぁぁぁぁぁ!!」
愛子は我を忘れて思わず怒鳴り声を上げた。
「絶躰ぅ!」
―――ガシャン! キィィィン――――
愛子が紫色の光を身に纏いながら、脚部の排気口を開いた
そしてスラスターから光を放ち加速した。
「おまぁえぇぇ! スナッフビデオみたいなことしてんじゃねぇぇ! このデブがぁぁぁぁ! 」
愛子は怒りのままに叫んだ。
「んあぁ? なんだてぇ!」
「くらぇぇ! 闇連脚ォッォ!」
―――ガギィィィキキキ―――
部隊長は、踏み向きざまに魔剣を愛子に向けた。
そして舐めるように顔を上げ愛子をみた。
「ああっ! 何抜かしてんだコラァ! 俺が奴隷をどう扱おうが勝手だろうがぁ! 俺は勇者だぞ!! ’喚け’断罪!」
神人族の部隊長が真言を告げると、愛子の蹴りを防いでいる魔剣が光り輝いた。
直後、愛子の義足はさらに変形した。
―――ジャキッ!―――
愛子の義足の踵からさらに排気口が展開された。
―――キンッ!―――
剣戟を蹴り飛ばした愛子が空中で回転し踵を落としを落とした。
部隊長は手に持つ鉈を愛子の踵落としの足の角度に合わせた。
「はん! 馬鹿が! てめぇの脚もこれで真っ二つだぁ! 」
そう叫んだ神人族の男性。
それが神人族の部隊長が叫んだ最後の言葉であり、男性が見た最後の光景だった。
「それがどうだっていうのさぁ! 」
愛子は全力で蹴り下げた。
―――ジャキン―――
排気口が義足の前面に開かれた。
光を話し愛子の踵落としをさらに荷重させた。
「ばっばかなぁぁ!」
――――バキィンン!――――
魔剣が砕けた。
「はぁあ!!」
愛子が地に降りた後に蹴り上げた。
蹴り上げられた義足にスラスターは展開されていた。
0コンマのスピードで蹴り上げたことで、高速での斬撃となり部隊長を下から両断した。
―――ヒュッ! ガギィィン!! ザシュッ!―――
赤い塊が天井に飛ばされた。
―――グシャン!
蹴り上げられた右足により切れた上半身は部屋の天井に衝突した。
石作りの部屋であることが災いし、蹴り上げらえた元部隊長だった物は天井に蹴りの威力そのままに叩きつけられた。
そして激しく叩きつけられたそれは天井にべったりと張り付いて、新たな染みとかしてしまっていた。
「たっ隊長……」
愛子を案内した神人族の男性は、目の前の光景に混乱した。
連れてきた奴隷商人がいきなり走り出しすと部隊長のまえに現れ、蹴り上げると部隊長は下半身だけを残し絶命したのである。
その間わずか15秒の出来事だった。
そして現実を受け止めきれないまま、その場に立ち尽くしていた男性のもとに神人族の女性と亜人族の獣人達が詰め寄ってきた。
魔人族の双子は先ほど腕を切断された魔人族の女性を介抱していた
「ねぇ、これから、あんたがどうなるかわかるかしら? 」
目のまえに現れた女性は美しい悪魔に見えた。
そして何を言われているのか理解した受付係の神人族男性は奥歯を噛み締め、愛子に伝えた。
「どうなるって? 俺も殺すのか? 」
そう告げた男性の目は恐怖に染まっていた。
それを見た愛子は一つの提案を告げた。
「そうねぇ、あんたを殺すのもいいかもしれないわね。 あたしの脚を勝手に触ったんだもの」
そういうと愛子は自らの太ももを撫でた。
少し情欲気味に息を吐いた愛子は言葉をつづけた。
「それより、あんたにはしてもらいたいことがある」
そう告げた愛子は一つの命令を下した。
「この街にいる神人族の部隊員をすべて中央の広間に集めなさい。 もし一人でも欠けたらあんたは死ぬ。 それと武装はしたままでいいわよ」
愛子はそう告げると男性に部隊員へ伝令専用伝達魔法具で広場にある詰まるように言っている事を確認した。
「ミッタマイヤ、ロイエル行くわよ。 さぁ狩りましょう! この鬼畜どもを! 」
愛子は獣人達にそう告げると口をゆがませて笑った。
それをみた神人族の男性は背筋が凍った。
して、自らの命運も悟った。
「悪魔……」
そうぽつりと呟いた男性に対して愛子はこう告げた。
「悪魔だなんて心外だわ。 そうねぇ、どうせなら魔女とでも言ってもらえないかしらぁ!」
愛子の趣味は漫画を見る事だった。そのおかげで、おもわず素敵な厨二発言をしてしまった。
神人族の男性はすべてをあきらめた表情になり、ブツブツ独り言を言い始めた。
まるで死刑宣告をされた囚人のようだった。
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