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フェザ奪還 その4


「「アイコ殿……これで本当にうまくいくと思うのか? 」」


 そう告げた二人の獣人は自らの腕をみた。


「アイコ様…」


 その腕は見事な結び方で拘束され、さらにロープでくくられていた

 そしてその前には二人の魔人族の姿があった。


「アイコさん、これ結びがキツイんやけどぉ跡になったらどうするん?」


 双子少女と見間違うばかりの二人であった。

 ルルカッタとルイカの腕もロープで拘束され、さらにその先をロープで結ばれていた。

 その先に立つのは愛子。ロープを手で引きながら先頭を歩いていた。

 4人のロープを引く様子はまるで奴隷商人であった。


「いいでしょ? 私が神人族として、逃げた魔人族と亜人族を捕まえたと言えば入り口の兵士も無事に通してくれるでしょ? そして中から部隊のトップを倒すの」


「なずけて、トロイの木馬作戦!」


 ドヤ顔で4人を見る愛子。

 そう告げる愛子はコートとカーディガンを脱ぎ、その情欲的な肢体を晒した。

 まるで見つけてくれと言わんばかりに。


「アイコ様……本当に大丈夫ですかねぇこの方法」


「アイコさん、もしだめならほんまに大暴れで行くから。 ステッキ返してな」


 ルルカッタとルイカも愛子の提案を仕方なく受け入れていた。


 そして門近くになったとき、神人族の衛兵に声をかけられた。


「とまれ! きさまは冒険者か? そいつらはなんだ」


 声をかけたのは、一人の背の高い神人族の男性だった。


「なにって、見てわからないの? 逃げたやつらとそれをかくまったやつを捕まえたから、報奨金もらいにきたんだけどぉ? 」


 愛子は、ルルカッタとルイカ、ミッタマイヤwithロイエルをつないでいるロープを見せた。

 それを確認した小太りで背の低いの神人族の男性は、下賤な笑顔でルルカッタとルイカを見て告げた。


「グフフ、なかなか上玉捕まえたじゃないか。 これはイイな。 おい! もし貴様が金目当てなら俺が言い値で買うがどうだ? 」


 神人族はルイカの髪を触り鼻に近づけた。

 ルイカが瞳を閉じて顔が背けた。


「どうせ、貴様も冒険者崩れだろ? 奴隷商人には見えんしな。 それにあまり、欲張るといい目にあわんぞ」


 そしてその男性は、愛子の胸にマジックワンドを押し当てた。

 フニョンと音が鳴るように愛子の胸に押し付けられたそれを愛子は握り笑顔でその男性に答えた。


「あんた、ふざけてるのかしらぁ? あまり見た目で人を見ると長生きできないわよ」


 マジックワンドを握ると突き返した


「私が、こいつらをあんたみたいな下っ端に売ると本気で思うの? こいつらは一級品の奴隷よ。しかも姉妹なんて、そうそう見かけないでしょ? 」


 そう告げると愛子はルルカッタの首輪を引っ張った。


「あうぅ」


 ルルカッタの顔が苦痛にゆがんだ。


「それとも、貴方がこの街で一番のお金持ちなのかしら?」


 そう告げる愛子の目は冷たかった。

 軽蔑のまなざしで神人族をみつめた。


―――ゴキンゴキン―――


 首を鳴らした愛子は、男の肩を握りしめた。

 冷たい視線を浴び、肩を掴まれている小太りの神人族の男性は、若干顔が引きつりながら答えた。


「あたたたっ! おいっ! そんな怒るなって! いやあんたみたいに逃げた魔人族つれてくる冒険者崩れが多くてな。 適当な金渡しておさらばするんだが、あんたは違うな。なかなか肝が据わっていやがる。」


「あんたは人を見る目がありそうだな。いいだろ、街に入れ。 奥のでかい建物に部隊長がいる。 報奨金もたんまりと受け取れるはずだ!」


男は卑下た笑顔を愛子に向けながら言った。


「道中、いろいろ楽しめるから良くみていけよ。 」


 そういう神人族はニヤニヤしながらルイカルルカッタをみた。

 おびえる様子の演技で小太りの神人族を見つめる二人。


「この双子はなかなかの上玉だな。良かったら俺にもおこぼれもらえるように隊長に伝えておいてくれよ。ねぇちゃん。」


「だまれ。 もう何もいうな、気分が悪くなる 」


 肩を握る力が強めて男に向けて言い放った。


「いだだだだ!」


 その時、別の男が小太りの男と愛子に言った。


「おい! ドルフ! いいかげんにしろ、とりあえずここは通っていいぞ。 あと亜人達も同じ館に連れていけ。 亜人の奴隷も必要だからなかなり高額で買い取ってもらえるはずだ。 幸いこの街には俺たちの部隊しか駐留してないから部隊長に話を通せばいいだけだ」


 そう告げたのは背の高い神人族の男性。


「あらそう。 それはいいこと聞いたわ」


 そういうと愛子はルルカッタ達を結んでいるロープを引っ張った。


「ほら、いくよ。あんたたち! あんたはグズグズするんじゃないよ」


 愛子はルルカッタの脚を踏みつけ、わざと神人族に聞こえるように叱責した。


「あっうぅぅいたい…」


 ルルカッタは涙目で愛子をみた。


「なんだい、その目は! ほら行くよ。歩け歩け!」


 そういうと愛子はルルカッタのロープを強く引っ張り歩き始めた。

 少し歩き、神人族から距離を取ってから愛子はルルカッタ達に声をかけた。


「ごめんね! みんな! 特にルル君。 痛かった? 本当にごめんね。 あいつらの目をだますには必要だったの! 」


 愛子はそういうと頭を垂れて謝った。


「アイコさま…いいですよ……奴隷なんで。仕方ないことです…… 」


 そういいながら愛子を見つめるルルカッタは、震える子犬のようだった。

 その姿をみて愛子はとても愛おしく感じた。


「もう、ルル君! そんな怯えないで!!そうだ!あとでいい事いっぱいしてあげるからね! 」


―――チュッ―――


 愛子はルルカッタの頬にキスをした。

 その光景を目の間でまざまざと見せつけられたルイカとロイエルは、口から砂糖を吐き出しそうな顔で二人を見ていた。


「アイコさん、もうすこし、場所考えてやってくれんかなぁ」


ルイカが言った。するとミッタマイヤが尻尾を振りながら愛子に聞いた。


「アイコ殿、いい事って何をされるのですか!! 」

「おい、ミッタマイヤ! お前も少し自重しろ。 そんなにシッポを振り回すな」


 二人の顔はげんなりしていたが、一人の赤い獣人は愛子の言った”いい事”がすごく気になっていたようだった。

 そんな三人を引き連れて愛子たちは街を歩いた。

 そこで見たものは、先ほどの愛子とルルカッタ甘い光景を吹き飛ばすには十分だった。



「…ひどい……」


 上半身裸で重作業をさせられている魔人族の男の姿がそこにあった。

 首には首輪を、足には足輪と錘も付けられていた。

 どこかの囚人とでも言うような扱いをされているその姿にルルカッタとルイカは憤りを感じた。

 その時、目の前で一人魔人族の男性が手押し車ごと倒れた。

 その男性に近寄る仲間と思しき魔人族の男性。


「おい! 大丈夫か? 」


 手押し車に下敷きになった男性を助け出した魔人族の男性は肩に手をまわして立ち上がった。


「きさま! 持ち場を離れて何しとるか!! 」


 ビシッ!


「ぐあぁ! 」


 神人族の男は鞭で倒れた魔人族の男に近寄り言い放った。


「きさまが勝手な行動をすれば俺様が怒られるのだぞ! そんな奴は放ってさっさと持ち場にもどれ! この奴隷が!! 」


 そう叫びながらロングウィップを魔人族の男性達に揮う神人族の男の姿。

 それを見た愛子たちにも憤りの感情がフツフツと湧きあがった。

 そのときロングウィップを揮う神人族の男性が愛子たちを見て話しかけてきた。


「ああん! きさまは冒険者くずれか! そいつらは新しい奴隷か? ほういいな、上玉じゃないか。 後が楽しみだ! 」


 そういいながらルイカとルルカッタを嘗め回すように見た男はさらに告げた。


「この道の奥にある建物へ行け。そこに部隊長がいる。そこにさっさとつれていけ。」


 部隊長ボスがいる場所を教えてくれた神人族の男性は親指でクイッと示した。

 愛子たちは、この街を開放したらこいつら真っ先に殺すと心に決めた。


 そしてさらに道を歩くと商店の一角にガラス張りのショーウィンドウが見えた。

 そこに陳列されている商品ドレイをみて愛子たちは声を失った。


 ボロボロの衣服をきた魔人族の女性たちである。

 全員、目は虚ろだった。首と足にはそれぞれ首輪と足輪をつけられていた。

 さらに手も縛られた状態で天井から吊るされており、首輪には値段もつけられていた。

 その値段はパン一個と同じ金額であった。


「「「「「 ……ひどい…… 」」」」」


 愛子たちは思わずつぶやいた。

 女性たちの敗れた衣服からは、体に鞭をふるわれた跡が赤く残っていた。。

 口には猿轡をはめられて、舌を噛み切り自殺することも出来ないようにされていた。

 そして女性たちは絶望に黒く染まった瞳で、力なくこちらを見ていた。


 ルイカが自らの手を強く握りしめた。


「愛子! こんなひどい事できるなんて、あいつらは人でない!ただの獣や!」

「そうね、この街にいる神人族は滅殺デストロイしましょう。ええっ絶対に!」


 愛子とルイカはこの街を占拠した神人族を一人残らずデストロイすることを決めた。

 戦争の後に起きる略奪と凌辱が人の倫理という物を唾棄した。

 そして人はただの悪鬼以下に成り下がれるのだと二人は理解した。


「決して許せる事ではありませんね。」


 その思いはルルカッタもおなじだった。


「獣ならば退治しなければな。」


 目の前にある光景はまるで悪夢のようだと獣人達は思った。

 強奪、凌辱の限りをつくした悪を成敗することが必要だと二人は思った。

 ヲルフガング流決闘術は悪を断罪するための力である。

 獣以下の者達には成敗と言う名の断罪が最も似つかわしい。

 ロイエル達は愛子たちの考えに賛同した。


 そうして愛子たちが道を歩き続けると市庁舎に着いた。

 ここに倒すべき奴らの部隊長ボスがいる。

 そう思うと静かに必殺の決意を胸に滾らせ、愛子たちは建物に入った。

いつも読んでいただいてありがとうございます。

感想、ご意見、誤字脱字があれば報告お待ちしています。


次回更新は金曜日の予定です

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