フェザ奪還 その1
話は少し戻ります。
神人族の部隊より愛子たちを付けていた亜人族の女性がいた。
「なんで、こんなことになっているんですかぁ…… 」
瞳に力なくたたずむローブを纏った一人の少女。
その身に纏ったローブからはちらちら銀色のプレートメイルが鈍い光を放っていた。
そしてそのローブのお尻部分には切れ目が入っており、
そこから出ている物がその女性が人族でないことを物語っていた。
それは、フッサフサのシッポである。
ローブをまとった女性は第三騎士団に所属する亜人”アンジュルム=クライン”であった。
「確かに、私はあの二人が落ちたところまでは確認しましたよ……」
「なんで……穴が……あの扉がなくなっているんですかぁ…」
ダンジョンの扉の位置に来たのだが、そこにあったはずのダンジョンの扉が無くなっていた。
そう、本当に消えていたのである。
「たしかに、私の魔法ではこの下から匂うのに……いりぐちがなぁぁぁい!!」
入口のあった場所に対して彼女は自らの固有魔法を使用した。
彼女のスキル”探索師”の固有魔法”香追跡”だ。
それを使用した結果、微細な匂いを感知したアンジュルムはこの場所で間違いなかった。
「ああもうどうしたらいいですか……」
そこから、どう次の手を打てばよいのか思案して現在に至る。
「あぁ、あの時に無理矢理でも入ればよかったんですかぁ 」
盛大に愚痴をこぼしたアンジュルムは、これから報告する相手、第三騎士団の団長ウィズ・フィ・エダラの顔を思い浮かべた。
その手に持つショートウィップがしなり、自らの身体に叩き込まれる姿を想像したアンジュルムは思わず身震いした。
「こんなこと、とても報告できないですよぉ 」
肩から崩れ、その場に枝垂れる獣人の少女。その瞳には涙が……
そして落ち込んでいた時に急に地面が光輝いた。
「なっ! なにごとですかぁ?」
アンジュルムは、その現象に思わず身構えた。
「まぶしいぃ!まzぶしいですぅ」
光が収まるとそこには、神人族、魔人族、亜人族、機人族が総勢100名近く現れた。
みな意識をなくしていたが、生きている様子を確認したアンジュルム。
「これは…異常事態ですぅ…隠れなきゃです!」
そしてアンジュルムの本能が告げた。この異常に対して警告を。
その場から距離を取るアンジュルム。
近くの木陰から監視を続行した。
「……ここは…」
「私は……」
「俺たちは……」
その場から一人一人、意識を戻した者達が立ち上がった。
そしてさらに少しの時間が流れるとそこにアンジュルムの目的の人物が現れた。
「なっ!?」
アンジュルムはその姿をみて、驚くと同時に現実を受け止めることができなった。
そこにいるのは明らかに愛子とルルカッタだった。
「なんでぇ! なにをしたらあんなことになるんですかぁ! 」
アンジュルムは愛子を指さし思わず声を出した。
その音に気が付いたのか愛子の顔がアンジュルムの方に向きそうになった。
「あわわわっやばいですぅ」
それを感知したアンジュルムはすぐに身を隠した。
そこは優秀なサーチャーたるアンジュルムの技能で完璧にカバーした。
「落ち着、落ち着けですアンジュルム。私は優秀、私は優秀…ヨシ!」
アンジュルムはまず現実を受け止めるのに精いっぱいの精神力で対応した。
「もう一度確認ですぅ」
愛子は義足を付けていた。
ルルカッタは美少女となっていた。
そしてルルカッタにそっくりな美少女をもう一人連れていた。
そこまでは理解できた。
「ふむふむ…あっあれは…あの人たちは!!」
アンジュルムの興味は愛子たちより二人の獣人達に注がれた。
赤い毛色の獣人と青い毛色の獣人。
そうミッタマイヤwithロイエルである。
その上、青い毛色の獣人の顔は赤い毛色の獣人よりも精悍に見えた。
「青い毛並みの人…かっこいい……ですぅ!!」
そうつぶやいたアンジュルムは青い毛色の獣人、ロイエルに視線を向けた。
上から下までじっくりと観察したアンジュルムはもうその獣人の動きが気になって仕方なかった。
そして鼓動が早まった。
動き方もキレがあるし、なにより隣にいるルルカッタとうり二つの美少女に対して、気の使い方が紳士であるとアンジュルムは思った。
そしてわずかに微笑むその横顔。
―――ポッ―――
アンジュルムは顔が赤くなるのを感じた。
「あぁ、あの方をみるとこう、むねが締め付けられるように熱くなりますぅ。 この気持ちは初めてですぅ」
もうそのアンジュルムの姿は確実に恋する乙女のそれであった。
そして愛子たちが動き始めたとき、アンジュルムは探索師のスキルをフル活用して愛子たちに……
というかロイエルについていったのであった。
任務より恋を優先するストーカーと化したアンジュルムの誕生であった。
そしてまたもやクライクラスト商会の会館にたどり着いたアンジュルム。
ついこの前の思い出がよみがえるが、首をブンブン振り、それを全力で封じると決意した。
「わたしは、この中に絶対に入るぅ! あのお方をもういちど見る為にぃ! 」
もう任務はどこかに飛んで行ったアンジュルムだった。
そして、壁に張り付くとまたもや登り始めた。
「ふふふ、私はボルダリング技術をもっているからこの壁は決して問題には無いですよ」
問題はこの上でたたずむ、ある一体のゴーレムである。
そう思いかべを登りきったアンジュルムは左右を見回した。
あの最初にこの壁を登り切ったら蹴り落としてくれたあのゴーレムが気になったからである。
「あのゴーレムはいないみたいですね…ホッとしました」
ほっと胸を撫でおろすアンジュルム。
―――ゴゴゴ―――
その時、壁が左右に急に開いた。
「うきゃ!」
足もとが急に開き始めたアンジュルムは両手両足を開いた。
その場に体を固定しようとしたが手足を開いたまま地面まで滑り落ちた。
―――キキィ―――
大の字のポーズとなったアンジュルムは目の前のそれに気が付いた。
「なぁ…なんでぇすかぁ!」
―――シュンシュン―――
なぜかロングウイップを装備しているゴーレムがそこにいた。
ゴーレムの空洞の目が光り、思わず戦慄の表情になるアンジュルム。
「ねぇねぇ、それは…そのぉ…何にぃ使うつもりですかぁ? 」
そう告げるとゴーレムの空洞の目からさらに強くなる光。
「ピーーピピピ」
何か言っているようだがそれがわからないアンジュルム。
そしてゴーレムはそのロングウイップをしならせ始めた
振り下ろされるロングウイップ。
バシィンバシィン
音が鳴るたびにアンジュルムの唇が引きつる。
「ねぇ、それをアンジュルムちゃんに使うのはそのぉ、展開的によくないとおもうんですよぉ」
思わず声が裏がえるアンジュルム。
そんなことお構いなしにウイップをしならすゴーレム
―――バシィン!―――
「うあぁー! 」
思わず声がでたアンジュルム。
しかし、アンジュルムは違和感を覚えた
大きな音が響いたが、アンジュルムは強い痛みを感じることはなかった。
あえて言えば、すこしたたかれた程度の痛み。
その証拠に皮膚にはすこし赤みができる程度だった。
不思議そうにしているとゴーレムがさらに攻め立てた
―――バシィン!―――
「あっあっ! 」
―――バシィン―――
「ひぃいぃ! 」
―――バシィン!―――
「あっふっん」
だんだんとアンジュルムの顔が紅潮してきた。
痛痒い程度の刺激が幾度となく繰り返された。
当初は、何のことはないアンジュルムだったが、的確なゴーレムの執拗な攻めについ喘ぎ声が出てしまった。
―――バシィン!―――
「ああん! 」
もうアンジュルムは膝が笑い始めて体を支えていることができなかった。
―――ゴッ!―――
わずかな痛みという新たな快楽を教え込まれたアンジュルムは、ゴーレムに連れられて外に放り出された。
放り出され、腰が引けて立つこともできないアンジュルム。
身を震わせながら涙した。
「くっ、あのくされゴーレム!! アンジュルムちゃんになんてこと教え込むですかぁ! 」
アンジュルムは新たな感覚を手に入れた。
「あぁ…知りたくない感覚ですぅ。 というか知りたくなかったぁですぅ」
この痴態を他人に知られることは絶対阻止する誓った。
「絶対あの人…青い毛色の獣人さんには絶対に知られたくないですぅ」
結局アンジュルムは壁を登るのをあきらめた。
「もう…やめようです。 ゴーレムにいいようにされて、我が身を汚されたくないですぅぅ」
アンジュルムは探索師としてのプライドが廃ると考えた為だった。
「おんなのこは、自分の身は自分でまもるですよぉ」
そう誓ったアンジュルムは壁の外に座り込んだ。
すこし気温が下がり白息がではじめるアンジュルム。
―――くしゅん!―――
冷えた体が反応した。
鼻先が少し赤くなった所から鼻水がたれていた。
「あぁ…さむいですぅ」
草葉の陰で身をかくしていたアンジュルムは寒さを感じていた。
その時、とある人物が現れアンジュルムに手を差し伸べた。。
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次回更新は金曜日の予定です。