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ヴィスタ帝国 後編

この世界のことすこしずつ、説明していきます。


 まっすぐな瞳で見つめるルルカッタに、愛子は思わず本音をもらしてしまった。


「そんなまっすぐ見られてもね?わたし魔法つかえないよ!? 」


 愛子は思わず叫んだ!


「それに、戦争って私たちがどうにかできるものじゃないでしょ?ねぇルルカッタくんのおかあさんはなんていっているの?戦えっていっているの?人を傷つけていいことなんてないよ!?」


 愛子は自らの価値観で、思いを告げた。

 いきなりこんな訳の分からない世界につれてこられて、助けてといわれてもどうにもできない。 それに私は看護師だし。魔法も使えないし。


「母様は、私を別邸から逃がすために奴らに殺されました。あいつらは母様を殺したあとにその首を切り・・・」


 ルルカッタは震えていた。

 その瞳には怒りだけではない悲しみ、恐怖、それらが混じった色をしていた。


「そして私の友人も、屋敷の魔犬もみんな殺されました。」


 ルルカッタの瞳は見開かれていた。

 そして愛子は思った。

 わたしは、いま聞いてはいけないことを聞いてしまった。

 ルルカッタはその後も自分が、今は前線になっている街に住んでいたことや、友達や家族が勇者ブレイバーにより殺されたことを告げた。


「私は!彼らに殺された母様の仇を!敵を討ちたい」


 大好きだった母は殺された、自分を逃がすため。

 魔法師部隊に戦いを挑み、負けて目の前で殺されたことを。

 そのことを聞いた愛子は、悲しみと憤りが湧きあがってくるのを感じた。


「そんな…でも逃げてほしいとおかあさんは、言ったんでしょ…人を殺すのはだめだよ」


 愛子はルルカッタに思いを告げるとルルカッタは愛子に聞き返した。


「巫女様は自分の好きな人が、殺されてもそう言えますか?」


 ルルカッタは愛子に聞いた。


「それは…」


 愛子は言葉に詰まった。私は…私の好きな人が、目の前で殺されたらどう思うのだろう。


「…わからないわ。」


 そう告げると愛子はルルカッタを見つめた。

 目の前に心が傷ついた少年が一人。

 うっすらと涙をためながら話をしている、少年ルルカッタをみて思った。

 この少年の為に何かしてあげれることはないか。

 そして意を決して優しく声をかけた。


「ルルカッタ君……いろいろ教えてくれてありがと。わたしに、できることはないかな?」


 愛子はルルカッタに向けて微笑み、優しく抱きしめた。

 それは母親が子供にする抱擁のようであった。


「巫女様…・…一つ聞いてもよろしいですか……」


「なにルルカッタ君?」


 愛子は抱きしめていたルルカッタを離した。

 するとルルカッタは、少しだけ小さな声で言った。


「巫女様のお名前を教えていただけますか?」


 そう言うとルルカッタは、愛子から目線をはずした。


「えっ私の?」


「だめ…でしょうか?」


 ルルカッタは小さい声で尋ねた。

 そんな少年ルルカッタを見て、愛子は笑顔で答えた。


「いいよ。私は青山愛子! 愛子って呼んでね。ルルカッタ君。」


「…アイコ様…」


「はい。愛子です。よろしくね。」


「ううっ…………」


ルルカッタは、泣いてしまった。愛子の優しい声がルルカッタの心に響いた。

そして瞳から大粒の涙がぽろぽろと光り輝きながら落ちた。


「…泣いていいよ。私が一緒に居てあげるから…」


 愛子はルルカッタを、優しく包み込むように抱きしめた。

 少年ルルカッタは王族として強く生きなければならないと、教えられて生きてきた。


 曰く王族は人前で泣くことはならないと


 王族である責任感から周囲に本音を吐きだすことができなかった。

 少年ルルカッタが今大粒の涙を流している。

 心に溜め込んだ悲しみを押し出している少年ルルカッタ

 愛子はルルカッタを抱きしめ思った。

 

 ルルカッタを護ろう。亡くなったルルカッタのおかあさんの代わりに。


 愛子が少年ルルカッタを、抱きしめていたのは10分くらいだった。

 ルルカッタは愛子の抱きしめられている手をほどき、先ほどまでと同じ笑顔で愛子に告げた。


「アイコ様は、優しいですね。ありがとうございます」


 涙を拭いたルルカッタは出会ったときと同じ笑顔で、愛子を見つめ自分の胸元から一つの物をとりだした。

 そして愛子に黒い板のついたネックレスを手渡した。


「これを付けてみてください。」


 愛子がルルカッタから受け取ると、白く光る文字が金属の板に浮き出てきた。


-----------------------------------------------------


名前 青山 愛子  29歳 

レベル 10 スキル「    」ジョブ「   」

技能:言語理解(全種族対応)、武術(蹴技)


-------------------------------------------------------


「ナニ……コレ? 」


 思わずカタコトになる愛子。


「これはステータスプレートです。これでその人の状態がわかるようになっているんです。」


「ステータスプレート!!」


 愛子は、ルルカッタからステータスプレートを受け取ると少し笑った。

 これよ!これこそ異世界よ! それに少し名前が違うけど、私の好きな漫画にあった物と同じやつね。

 そんな愛子の想いを知らないルルカッタは、愛子に告げた。


「でもアイコ様の表示はおかしいですね? 」


「おかしい?」

 

 愛子は首をかしげて、ルルカッタを見た。

 ルルカッタは首元から自分のステータスプレート取り出し、愛子にみせた。


----------------------------------------------------------


名前 ルルカッタ・ヨル・ヴィスタ 130歳 

レベル43 スキル「召喚師」 ジョブ「司祭」

技能:固有魔法[召喚] 獣魔召喚、魔力開放、魔神化、魔力吸収、

氷結魔法、雷撃魔法、火炎魔法、眠れる狂戦士


-------------------------------------------------------------


「130歳!」


 愛子は驚いた。

 どう見ても少年にしか見えないルルカッタが、自分より遙かに年上だった事に。

 そんな愛子を尻目に、ルルカッタは絶望的な言葉を告げた。


「アイコ様には、ソウルスキルがないんです。」


「うそぉん!」


 この世界メイティアの生き物は、どんな種類であろうとも必ずソウルに刻まれたスキルが存在する。

 それはこの世界の秩序であり絶対だった。

 この世界に愛子が顕現した時に、ソウルスキルが刻まれるはずだった。


「あっアイコ様が、私達と普通に話せているのは”言語理解”によるものですよ」


 ルルカッタは落ち込んだ愛子に、ステータスプレートについて説明した。

 ジョブは職業のようなもので、後からでも変わる事がある。

 しかしソウルスキルは、生涯変わることが無いこと。


 愛子はスキルは無いが、”言語理解”みたいな技能が使えているのなら問題ないと思った。

 そして愛子は自分にスキルがないことが、なぜ問題なのか聞いてみることにした。


「ルルカッタ君、スキルがないと何が問題なの?」


 ルルカッタは答えた。


「スキルがないと固有魔法が使えないんです。」


 魔力マナに頼らない技能は使える為、日常生活ではそれほど困らない。

 しかし戦闘となると別だ。

 魔法が使えないことは戦いにおいては致命的であること。

 戦闘職ジョブなどは、一つの魔法を使えること。

 魔法を三種以上使える者を、魔法師ソーサラーと呼んでいること。

 

 この説明を聞いた愛子の顔は、ヒクヒクと引きつった。


「アイコ様。すごく引きつった顔をされいますが、大丈夫ですか?」


「大丈夫じゃない。私の心のHPは0よ!0!」


 悲しみにくれた顔とウルウルとした瞳で、ルルカッタを見つめる愛子。

 ルルカッタは、そんな愛子の様子をみた。

 そして本棚から一冊の革で出来た本を、取り出して渡した。


「アイコ様。きっとアイコ様が、スキルを得る方法があるはずです。まずはこの本を見てみましょう」


 そう言うとルルカッタは、本を差し出した。本には蛇の紋章が刺繍されていた。

 背表紙には”真魂職百科スキルブック”と書かれていた。 

 その本を差し出すルルカッタを愛子はみた。

 さっきよりも笑顔がまぶしいルルカッタがいた。


 愛子は折れそうな心を奮い立たせた。

 きっと私らしいスキルを得る方法があるはず。

 それから愛子はルルカッタと、共に夜が明けるまでスキル百科を読んだ。

 中に気になる一説が書かれていた。


 曰く、世界に認められ想いを宿した魂にスキルは発現する。


 どれくらい時間がたったのだろう。外はうっすらと明けてきた。

 愛子たちが机でウトウトしていた時、外から大きな音が聞こえた。


―――ガシャァァン!―――


 そして城の中が騒がしくなり始めた。

 二人は爆発音に驚き、周囲の様子をうかがった。

 すると部屋の扉が、大きな音と衝撃ではじけ飛んだ。


―――ドガァァン!―――

 

 ルドルフが、血相を変えて部屋に入ってきた。


「ルルカッタ!逃げるのじゃ!やつらが!勇者ブレイバーどもが、ここに現れたんじゃ」


 ルドルフが必死の形相で告げた。

 手に持っていたのは、最初に逢った時に持っていた杖でなかった。

 それは血に染まったひと振りの剣。

 その剣からは血がポタポタと地面に落ちていた。


 廊下や城の外からは喧噪、大きな怒鳴り声、悲鳴、何かが壊れる音が響いていた。


「おじい様も私たちと逃げましょう。」


 そういうとルルカッタは、愛子とルドルフの手をとり隠し扉から廊下にでた。

 そして走り出した。

 部屋から出ると廊下では、重鎧に身を包んだ魔人族の戦士が血を流して倒れていた。

 愛子は流れ込む血の匂いに、思わず鼻を手で覆いながら走った。

 

―――ハァハァハァハァ、ハァハァハァハァ―――


 廊下を走り続け、最後の扉を開けようとしたその時。 


 キィ……


 目の前で扉が開いた。

 そこには血の付いた長剣ブロードソードを持った絶望が、立ちふさがっていた。


「きさまら、魔人族を逃がしはしない」


 それは神人族の魔法師ソーサラーだった。

9月28日


いろいろ構想練り直しです( ˘•ω•˘ )


次の更新は土曜日くらいの予定です。


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