二コラの葛藤 その2
修正してます。もう少しおまちください
―――バン!!―――
勢いよく開いた扉の音に室内の者達が一斉に振り向いた。
「諸君! お待たせした」
手に資料を持ち現れた男性は奥の席に腰かけ話を始めた。
現れた男性はニコラ・ギイルその人だった。
「では、これからの事について話そうと思う」
ニコラは、手に持った資料を広げた。
「アイコ君とルルカッタ君のことは後で話すが、その前に! ルイカ君とミッタマイヤ君、ロイエル君、 君たちのことだが……」
愛子は名前を呼ばれた三人を見た。
ルイカ達が真剣な表情で聞いた。
「ルイカくんは、我がクライクラスト商会の中で保護の対象となった。 行先が決まるまでは私達の商会で面倒をみるから安心してくれ」
そう告げられたルイカは、ほっとしたのか表情が崩れて女の子の顔になった。
先ほどまではどこか神妙な面持ちだったのが嘘みたいだった。
「よかった…ここを放り出されるのかと思ったわ~」
そして二コラは獣人たちに話した。
「でっだ! ミッタマイヤ君、ロイエル君は獣人族の男性で武力もある。 だからこのクライクラスト商会で冒険者クラスでの雇用を交わしたいと思う。 もちろん、君たちが嫌でなければだ。 そしてその際には庇護対象者のルイカ君を護衛していただきたい! 」
そう告げると、二コラはミッタマイヤwithロイエルを見た。
二人の獣人は互いに顔を合わせるとうなずいた。
そして……
「もちろんヲルフガング様の騎士として全身全霊をかけてルイカ様を守り通していく所存です」
「あぁ、ミッタマイヤと共にわれら、この命、ルイカ様にお預けいたします」
そう告げた二人の顔は晴れ晴れとしていた。
そして一呼吸おいてさらに二コラが新たに告げた内容は衝撃的だった。
「そしてここにいる元グラマナスサイコのダンジョンに居た方たちは、1年を期限に保護対象とさせていただく。 その後ここに駐留するのがお望みなら雇用契約を交わして当クライクラスト商会の一員として働いてもらいたい」
「ああ~良かったぁ」
エルフみたいな耳を持つ機人族の女性がホット胸を撫でおろした。
「それと、あなた方は過去の代表だ。 よって私から仕事の依頼がある。 歴史編纂に力を貸してほしい。 もちろん給金は払うので」
その場にいる被害者各代表がそれぞれ疑問を二コラに伝えた。
曰く……
「歴史編纂と言われるが、我々の生い立ちや場所などしか伝えられんがそれでもよいのか? 」
神人族の老人が二コラに聞いた。
「答えはYESだ! その具体的な生きた情報が欲しいのだ!」
その後に機人族の女性が二コラに聞いた。
「私達も機人の第一級禁忌事項に触れるものは伝えられないがよいですか?」
それについても大きくうなずきながら
「その答えもYESだ! 貴女達が困ることが無い範囲でお願いしたい。 我々としても機人国との諍いは起こしたくないのでね」
そして二コラは伝えた。
壮大で己の野望とでも言うべき案を
「また希望した方は我々の技術を向上させるために、研究職としての雇用で若干名お願いしたいと考えている」
二コラは今の既存の技術を向上させたいと願った。
それは愛子の義足を見た時から考えていたことだった。
「私は義足や義手の開発をお願いしたい。今の世の中で腕を、足をなくした者はいくら回復魔法を使っても生えてくることはない。 しかし失った腕や足と同様に動くものを手に入れることができれば、身体の一部を失ったものでも、絶望することなく生きることができる」
ニコラは自らの願いを3種族に代表者に告げた。
「……わかった。それぞれの中から数名、知識がある者達を選出しよう」
「そうですわね。 無くなった体を補うことができれば、前向きに生きていくことができますわね」
「そういう事であるなら協力しよう」
囚われていた者たちの代表者は告げた。
「では今後選出された技術研究職の方は、この施設にある”特殊技術構築研究所”で働いていただく」
「「「わかった。対象の者たちに話しておく」」」
「では、これで解散。 あっアイコ君とルルカッタ君は後で執務室にきてくれ。 話したいことがある」
そこまで話した二コラは、この会議を一度休会にした。
足早に会議室を去った二コラ。
「ルル君、話ってなんだろうね?」
「そうですね。なんでしょうか?」
愛子たちはそんな話をしながら会議室を後にした。
―――ドンドン―――
「どうぞ」
「「失礼します」」
愛子とルルカッタの二人は執務室をノックした。
―――バタン!―――
扉が閉まると二コラは先ほどまでと違いやさしい表情で机に向かって座っていた。
―――カチャカチャ―――
誰かが音のする奥の部屋で何かの準備をしているようだった。
「あら、アイコさん早いですね。いまお持ちしますからね」
コリーがお茶を用意していた。
―――コポッコポッコポッ―――
「ん~いい香りね」
愛子とルルカッタの前に置かれたティーカップ。
コリーが薄茶色の液体をティーカップに注いだ。
「ん! これ紅茶みたい。 香りと甘みの感覚かセイロンティーに似てるわね」
「紅茶ってなに? これはね、甘みのある葉を焙煎して煮だしたものよ」
「これ僕の城のお茶より色が薄いのに味が濃いですね」
「さすが、王族ね。 良い舌をしてるわね。 クライクラスト商会の新製品よ」
愛子とルルカッタがコップを手にお茶を楽しんでいると二コラが話始めた。
「お茶を楽しんでくれているところ悪いが…」
二コラは資料を手に愛子とルルカッタを交互にみて話始めた。
「アイコ君、君たちの資料と動画をみたよ…かなり大変な経験を積んできたようだね」
二コラは真剣な表情で愛子の脚を見つめた。
「アイコ君は大変つらいことだったと思う」
そう告げる二コラは動画を思い返した。
―――ウワァァ……死んでたまるかぁ……―――
痛みでのたうち回る愛子の動画。
それは正視するに堪えない姿だった。
「……・その結果として、今の世界では異常な技術で作成された義足を手に入れれたことは、運が本当に良かったね」
「……そうね…この脚をくれたエクス・マキナには感謝しか言えないわ」
黒くメタリックな光沢を放つ義足。
「そしてルルカッタ君。 君も大変な経験をしたね」
そして二コラはルルカッタを見た。
見た目は、明らかに美少女だ。
「君がここを出た時に居た小さな魔人族の男の子と同じだなんてとても思えないよ。 それにしても不明な魔力回復薬を飲んだ影響で成長し、その膨大な魔力を手に入れた」
「そうですね。 見た目は変わりましたが、今の私はあの時の私と同じですよ。 少しは成長したと思いたいですけどね」
顔を上げた二コラはルルカッタを見つめた。
「その後でその、なんていうか、ピンクな杖を手に入れたということだね」
顔を指でポリポリ書きながら二コラは告げた。
ルルカッタは手にした魔法杖をみせた。
そして今迄で一番大きなため息をつくと二コラは告げた。
これからの愛子たちに係わる重大な案件を。
「愛子君、ルルカッタ君。 君たちに私から依頼がある」
そして告げられた内容は、愛子とルルカッタに新たな決意をさせるものだった。
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次回更新は火曜日8時頃の予定です