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ダンジョンの真相 その2

第一章はこれで終わりです。第二章をお楽しみに!

―――キィィン―――



 奥の扉を開いた愛子は驚愕した。


「なに? この白い部屋…あっあれは……」


 白い壁に覆われた空間の中心に黒い棺があった。

 その中をルルカッタとルイカが覗き込んだ。

 そこに居たのは人型の存在。

  

「人がいるわ」


「あっこれは…」


 その姿を見た愛子とルイカは思わずつぶやいた。

 その横から二人の獣人は覗き込んだ。


「あぁ…なんて美しい女性なんだ」


「まて…これは…」


 ミッタマイヤは人型の存在について感嘆の声を上げた。

 ロイエルは何かに気が付いたようだった。


「目と耳と口が魔法具でふさがれてるやん…こんなもの外して……」


 ルイカが怒り、女性についている魔法具を外そうとしたとき!

 ルルカッタとロイエルが止めた。


「まってください! この人、いえ……これは…」


弟者ルルカッタよ…この存在はおそらく…」


「はい。 この人は精霊です。 おそらくこの魔道具は、精霊の外部情報を遮断するための物です」



 精霊がそこに存在し、白い光を放っていた。


「外すのは手順を追う必要があります。すこし待ってください!」


弟者ルルカッタよ、私も手伝おう」


「あっ…ありがとうございます。ロイエル兄様」


 二人は掌に魔法力マナを集めながら魔法具を確認していった。

 すると愛子が精霊を見てつぶやいた。


「なんか…エルフ見たいだね」


「エルフ? エルフってなんなん?」


「私がしていたRPGゲームで出てくるNPCの一つでね、魔法が得意な長命の一族って言えばいいかな? とんがった耳が特徴なのよねぇ」


 愛子とルイカが話していると、ルルカッタが二人に告げた。


「わかりました! まずは口を外してください。 その後に耳を外して最後に目の魔道具を外せばいいみたいです」


「女性に、こんなことするなんて……本当にグラマナスサイコは最低ね」


 愛子とルイカはルルカッタとロイエルに聞いたとおりに、ひも状の魔道具をはずしていった。

 すべての魔道具を外すと女性のような声が白い部屋に響いた。


「……ここは………貴女たちが、あの者から解放してくれたのですか?」


 精霊は愛子たちに聞いた。

 愛子とルルカッタはうなずいた。


「貴女は、何者なの?」


 愛子が、封じられていた女性に尋ねた。


「私はこの場所を守護する精霊の一体です」


「なんで、精霊がこんな棺にはいってたの?」


「それは…私はあの者達……グラマナスと名乗った一団に私は、いや私たちは負けてしまって私はこの場所に封じられていました……」


 精霊は悲し気な表情になった。

 そして愛子たちを見た。


「まずは、この棺から解放して頂けたこと誠に感謝いたします……」


 そう告げると女性は三つ指を立て座してお辞儀をした。


「そんな…顔を上げてください! あれは僕たちも倒さなければいけない敵だったんです」


「そうそう。安心して! あいつは私たちがもうギッタンギッタンにやっつけたから!!」


 ルルカッタは照れくさそうに笑顔で告げた。

 そして愛子は精霊に向かって右手の親指を上げながら笑顔で答えた。

 サムズアップだ!


「あぁ…本当に、私は助かったのですね……」


 精霊の頬を涙が伝った。


――― パキィン―――


 地面に落ちた涙が、結晶になった。

 そんな中、愛子は聞いた。



「ところで、ここは何なのか教えてほしいわ。 グラマナスサイコって言ってた赤い石のこともね」


「そうですね…お話しましょう…ここは魔法力マナが集う場所……この星の龍脈の一つです」


 愛子とルルカッタは困惑の表情で精霊に聞いた。


「龍脈って?」


「星を維持するための流れと言えばいいでしょうか……」


 精霊の説明に愛子がピンときた表情で答えた。


「人の身体で言うと血管みたいなものかな?」


 精霊は困った顔で答えた。


「そうですね…星のそれに近いものだという認識でいいですよ。 ここは長い年月で集まった魔法力マナが精霊や死霊など零的生命体アストラルエレメンタルを生み出しました」


 精霊は少し微笑んだ。


「そして私もここでうまれた精霊の一つです」


 精霊は瞼を閉じてさらに話続けた。


「ここで生まれた零的生命体アスラルエレメンタルは、この場所にとどまることになるはずでした……あの時までは」


 目を開けて精霊は愛子たちに向いて話続けた。


「あの時…そう世界が赤い色に染まった何千年も昔…あの者達が現れました。 私を含めた零的生命体アストラエレメンタル達は力ある限り戦いましたが、あの者達の無慈悲な力の前に屈していきました。そして精霊である私は死を選ぶこともできず、あの者たちによってこの場所に封じられました。 そう…このダンジョンを稼働させる駒として」


 美しい精霊の顔は悲しそうだった。


「そして長い年月が経ちました。 このまま果てることもできず封じられていました。 その間にこのダンジョンを訪れた者達の阿鼻叫喚を聞き続けました。 私の真核…私の魂はその叫びに、慟哭にすこしづつ……消耗していきました。もう魂が削られ、いっそのことすべての滅びを望むほどに…」


 表情は変わることなかったが、少し声のトーンが上がった気がした。


「……しかしあなた達があの者を破壊して…私を助けてくれました」 


 心から思うように精霊は胸元に手を当てて告げた。 


「私の魂は…無駄にならなかった。 あの者によって保管されていた者達を解放できるのですから…」


 精霊は手をかざした。

 手の周りに魔法陣が現れた。


―――ガコン―――


 部屋の中央に多くの黒い棺が現れた。


「あれ、さっきの棺によく似ているね」


「封印棺と言う物です。 この中に入れられたら体の自由、時には思考さえも封じられます。 私の魔法力マナで封印棺を破壊します」


「’全解放リアクセス’」


 精霊が唱えると魔法陣が棺の上に描かれた。


―――カチッ―――


 鍵が開いたような音がすると、封印棺の中から封印されていた種族の物達が起き上がった。


「これで封印されていた者達は眼を覚まします。 次は地上に送り届けます」


「’転移パルバラ’」


 黒い棺から体を起こした者達の背後に魔法陣が描かれた。

 そして桃色の光と共に封印から目覚めた者達は消えた。

 精霊はすこし暗い表情でこう告げた


「これで囚われていた者はすべて解放しました。 これで私は…滅びることができます」


「えっ…どうしてですか。貴女は解放されたじゃないですか…」


 ルルカッタが精霊に問いただした。


「優しい魔人族の子よ。 確かにあの者は滅びました。 しかし私がいればまたこの場所は狙われる。 この場所はこの星の要石の一つです。 そして私は…私の持つ役目の為…この場所を離れることができないのです。」


 ルルカッタが驚愕の表情で精霊を見た。


「それに…私は仲間が…多くの人が犠牲になったこと…そしてこの場所で一人の時を過ごすのは…あまりにも辛いのです…」


 精霊の顔が少し曇っていた。

 それを聞いた愛子が告げたのは一つの願い。


「ねぇ、お願いなんだけど」」


 その女性は突然の申し出に目をパチクリして驚いていた。

 

「よかったらダンジョン運営しない?」


「はっ?」


 精霊がさっきまでの神妙な顔つきもどこかに素っ頓狂な声を上げた。

 そして愛子が唐突に告げた。


「ここはあいつ等が勝手に作り変えたダンジョンだけど、ここをそのままダンジョンとして冒険者に開放してほしいの。 ココを目的に人が訪れるなら、あなたの孤独も解消されるんじゃない? それにほら、私たちもココにくるからね。」


 そう愛子は告げると右手を差し出し握手を求めた。


「ぷっ…あはははっ」


 驚いている女性は、口元を緩めると笑いだした。


「なによぉ? 貴女のつらい思い出を、少しでも明るい未来に変えたいだけなんだけどぉ」


 それは驚きの提案に対する返答だった


「あっははは! まさか私がこの場所から離れないから、人に来てもらうですって!」


「どう? このまま滅びてしまうよりもいいと思うんだけどなぁ。 それにあいつらがまた来た時に戦ったことがある経験は大事なものよ。 ここをもう一度奪われない為に」


 愛子は精霊に告げた。

 グラマナスサイコがまた現れたときに戦うために精霊が必要だと。


「あはははっ! いいですね。 確かにあの者達がまたココを襲ったときに私も戦うことができますし…それに私も一人はさみしいですから……」


 そうつぶやくと精霊はうつむいていた顔を上げた。


「いいでしょう! その案、私も乗りました」


 女性は眼に涙をためて笑った。

 精霊は笑いながら愛子に名を告げた。


「申し遅れました。 私、精霊のイセと申します」


 そう告げると精霊のイセが微笑んだ。


「じゃぁ、イセのダンジョンでどうかな? 」


「アイコ様、それは安直な名前ですよ? 」


「アイコさん、それは無いわ」


「アイコ殿、もう少し凝った名前の方がいいんでは? 」


「アイコ殿、精霊というところをもう少し押し出した方がいいでしょう」


 皆が、それぞれに感想を告げると愛子は両手をパチンとたたき言い直した。


「わかった…みんながそういうなら、ここは【精霊イセのダンジョン】略して【エレダン】でどうだ! 」


 なんとなくやけくそ気味に愛子は言った。

 それを聞いたイセは喜んでいた。


「まぁ、【エレダン】ですか。 簡単な名前でいいですね。 覚えやすいですし」


 そう告げると嬉しそうにしているイセだった。

 そんな、時間を過ごしているとイセが告げてきた。


「先ほど地上に送った者達が動きだしたようです」


「あっじゃぁ、その人たちを保護しないと…」


「アイコ様。クライクラスト商会に送り届けましょう。 あそこなら保護してもらえるはずです」


 ルルカッタが妙案を告げた。すると精霊は


「そうですか…では皆様ともお別れですね……またこの場所にいらしてくださいね」


 そう告げると名残惜しそうにイセが一人一人を抱擁していった。

 なぜか獣人二人組は、イセのすべすべボディーに抱かれた時にシッポを激しく振っていた。


「皆様に、私、精霊イセの加護を授けました。 特別ですよ! これで、いつでも精霊の声を聴くことができるようになります。 ついでに魔法使いさん達には精霊魔法も授けました。 これで私のことも思い出してくださいね」


「では、皆様いずれまた…’転移パルバラ’」


 イセが唱えると愛子たちの背中に魔法陣が現れた。


「またね!」


 愛子が叫ぶと5人は光に包まれ消えた。


「…まぶしい。 これは地上の光ね」


 愛子たちが目を開けるとそこには、目を覚ました各種族の男女が立ち尽くしていた。

 そして一斉に愛子たちを見た。


「あのぉーこれから今迄のこと説明するので、とりあえずついてきてくださいぃー! 」


 大きな声で愛子は伝えた。

 囚われていた人達はとりあえず現状理解が難しいようだった。

 しかし少し時間がたつと、この女性たちについていくことに決めた者たちが素直に首を縦に振っていた。

 全員が首を縦に振るまでさほど時間はかからなかった。

 囚われた人たちを引き連れて愛子とルルカッタ達は歩き始めた。


 愛子達はとりあえずダンジョン攻略した事を報告するためにクライクラスト商会の会館に戻ること決めたのだった。

 


 のちにこのダンジョンはこの世界屈指の難易度を誇るダンジョンになる。

 イセが本気でダンジョン経営をしたからだ。その結果、難易度が数段跳ね上がり世界中の猛者が我こそはと挑むようになった。

 その結果この場所は”精霊たちの愉快なダンジョン”として脚光を浴びるのだが、それはまた別のお話。

いつも読んでくださりありがとうございます。

感想、ご意見、誤字脱字があれば報告お待ちしています。



これにてダンジョン編は終了です。

この後も話は続きます。

次回更新は月曜日18時を予定しています。

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