ダンジョン攻略 その16
愛子のターン!
「はぁはぁ」
「はぁはぁ」
愛子とルルカッタがお互いに見つめて息を整えた。
「落ち着きました? アイコ様?」
「ルル君もね?」
そして少し離れると愛子は改めてルルカッタを抱きしめた。
「ルル君。無事に逢えて本当に良かった」
「僕もです。アイコ様」
ルルカッタも愛子に抱きしられて温かみを感じながら答えた。
「アイコ様…どうしてそんな足になったんですか…」
「これは…」
愛子は語った、わが身に降りかかったその狂気の所業を。
「足をね…魔物にやられて…その後に…ある人から助けてもらったの。これはその時にもらった物よ」
話始めた時に愛子の身体がわずかに震えていた。
「アイコ様…」
ルルカッタは見逃さなかった。
「逃げる…ことは……できなかったんですか…?」
「愚問ね…暴れ狂う魔物から魔法を無くした人間が逃げられる?」
ルルカッタは愛子の手を恋人結びで握った。
ルルカッタは、頬を伝う一筋の液体に気が付いた。
自然と自分の瞳に涙があふれていた。
「アイコ様…申し訳ありません! 僕が! 僕がお呼びしたのに! ぼくがぁ!!」
自分のせいで足を無くした。
それは愛子を襲った悲劇。
彼につよく後悔を刻み付けた。
「…ふふ…ありがとう。 ルル君。 でも私このおかげで気づけたこともあるの…それはね」
愛子は胸に手を当てて告げた。
「私の魂職’看護師’の使い方をね」
ルルカッタは聞いた。
「使い方ですか…?」
「そう、使い方。 貴方が私の心に居るの。 それを意識したときに私は、魂職を理解できたわ。 そう……私の力は誰かを護るための物だって!」
笑顔の愛子がそこに居た。
それを見たルルカッタの顔が朱に染まった。
愛子が話続けた。
「それでね…足を失った私だったんだけど…魔法を…重力魔法’真滅圧縮’を覚えたの。 それでなんとかフロアボスを倒したら意識無くしちゃって…目が覚めたところで機人のエクス・マキナに出会ったの。 彼女は私を助けてくれたわ」
愛子は義足をルルカッタに見せた。
「この脚はマキナが、彼女の機械国で私を助けるために付けてくれたの。なんでもオリジナルを改造したせいでもう私にしか使えないんだって」
そこまで聞いていたルイカが手を上げて質問してきた。
「はいっ! 愛子に質問! いま機械国って言ったん? おっかしいなぁ、エンドアートは確か機人の城がある街の名前やで。 それに六王は一つの共和国を築いたはずなんやけど?」
ルイカの顔は真剣だった。
それに賛同するように二人の獣人族も言った。
「たしかに我が王、ヲルフガング様は他の王たちと一緒に共和国を構築なされたはず……だよなロイエル? 」
「そうだな、それは間違いないぞミッタマイヤ」
そういうとルイカは愛子に質問をしてきた。
「ちなみに年号は何年って言ってたん? マキナ様」
「確か聖王歴140年って言ってたような……」
それを聞いたルイカと二人の獣人は驚愕の表情になった。
「なっ……聖王歴140年って言ったら…私らがいた世界からさらに10年後やんかぁ!? 」
「まことか!?」
「ミッタマイヤ、これは私たちが消えた後になにかあったに違いない」
そう告げると明らかに動揺した表情で愛子を見つめる三人。
そして愛子は話を続けた。
「そして彼女はこの服をくれて、さらにウエストバッグを改造して渡してくれたわ。 いま身につけているのがそうよ」
そういうと愛子はウエストバッグを触った。
「そしてこの場所に転移してきたのよ。 そして魔物を倒したら腹が立つ手紙の主から、この帽子を贈られて今にいたるというわけよ」
愛子は頭にナースキャップを付けていた。
そこまで聞いたルルカッタ、愛子の手をとり告げた。
「そうだったんですか…実は僕たちも贈り物をされたんです。あの腹が立つ手紙と一緒に」
そう告げるとルルカッタとルイカはその杖を見せた。
まるで魔法少女のステッキそのものみたいなそれをみた愛子はつぶやいた。
「ルル君が男の娘で魔法少女になっちゃったのね!!」
「だから違いますぅ!!」
全力で否定するルルカッタ。
しかしその反面、ルイカは割とノリノリだ。
「そうかぁ。 魔法少女ルイカちゃんかぁ、それもええなあぁ」
愛子がルイカが持つ杖を見た。
「うん? ルイカちゃん、ルル君、この杖を貸してもらえないかしら」
愛子は杖を持ち魔法を唱えた。
「完視!」
愛子に右眼に魔法陣が現れた。
そして右眼が紫色に変わった。
「へぇ…これ’愛歌鍵’って名前なんだ。 ルイカちゃんのは’望歌鍵’って言うのね」
愛子はさらに告げた。
「これは、真言が付いてるって。 えっと二人とも杖持って言ってみて? ’歌へ!愛歌鍵’ と ’望め!望歌鍵’って」
二人は杖を構えた!
「歌へ! 愛歌鍵!」
「歌へ! 望歌鍵!」
二人の杖から光があふれた。
その光にルルカッタとルイカが包まれた。
―――シャララァァ!―――
急に流れるSE音!
そして光が収束するとそこに現れたのは…
「「なっ!」」
「まっ…魔法少女!!」
獣人二人の顔と愛子の顔が相反する顔になっていた。
片方は塊、片方はキラキラと輝いていた。
「おおぅこれええなぁ!」
「なぁんでぇぇ!?」
ルイカとルルカッタも同じような顔になっていた。
愛子が頬を緩ませて告げた。
「いいのよ。 ルル君。 むしろいいわ! それ!」
愛子の瞳が輝いていた。
「アイコ様ぁ…」
ルルカッタが泣いていた。顔が真っ赤だ!
「ルルカッタ。 あんたぁ…ソレ似合ってるで」
「そういうルイカさんもよく似合ってます…」
二人はお互いに感想が述べた後ルイカはルルカッタに聞いた。
「なぁ? ここって聖王歴何年なん?」
「今は聖王歴8800年です」
ルルカッタは告げた。
「「「へっ? 聖王歴8800年!!」」」
ルイカはここが未来の世界だということがわかった。
わかってしまった。
そしてルイカはほんの少しトーンの落ちた声でつぶやいた。
「そっか…ここには私を……知っている魔人族はいないんやなぁ…」
―――ツゥー―――
ルイカの頬に一筋の光が流れた。
「うっ…ひっ…ひぐぅ…」
―――ここが自分たちの知っている世界でないこと―――
確認することを後回しにしていた。
そして告げられた未来の世界である事実。
「……うぅぅぅ…」
ルイカがそれを現実として意識した結果である。
そしてそれを見た愛子。
「ルイカちゃん。 こっちにおいで」
そういうといきなりルイカを優しく抱きしめた。
愛子の胸元にルイカが顔をうずめれるように抱きしめられた。
そして言葉をつづけた。
「ルイカちゃん……つらいときはね…こうするの」
―――ポスッ―――
愛子がルイカを抱きしめた。
「泣くならね。私の胸を使っていいわ…だからね……」
やさしいことばと、ほのかに香る女性特有の甘い香り。
その言葉を聞いたルイカは、涙を抑えることが出来なかった。
「うううぅ……うわーーーん!! 父上さまぁぁぁぁ!! ごめんなさぁぁいぃぃ! さみしいぃぃよぉぉぉ! 」
そう……ルイカは悔やんでいた。
一人残してきた愛おしい父上様のこと。
不器用で、いつも微笑んでいた父上。
困った顔していたずらも許してくれた父上はもういない。
「ううっ・・・ふぅ!」
ルイカが泣き止むと愛子に向けてルイカは言った。
「アイコさん…あんがとな。 なんかなぁ…泣いたらすっきりしたわぁ。私、あんたのことが好きや」
そしてこう告げた。
「私も彼みたいにあんたと一緒に居たい。 ええかぁ?」
愛子は満面の笑みで答えた。
「ふふっ…当たり前じゃない! ルイカちゃんも私が! 全力で護らせてもらうわね」
ルイカに笑顔が広がった。
そしてそれを見つめていた獣人たちはその光景に涙していた。
「おおお! なんと慈愛に満ちた光景か! ロイエル、私はこの方たちの力になりたい! 」
「なにをいうミッタマイヤ! それはヲルフガング様の騎士として当たり前でないか!! 」
「「われら、貴女様たちの剣となり戦わせていただきます」」
そう告げると二人の獣人は、愛子に膝をつき手捧げ宣言した。
愛子たちは奥に続く通路を歩いた。
「さぁ…ここを早く抜けよう!」
奥に行けばおそらくこのダンジョンの本当のボスがいると信じて。
そしてホールに着いた五人を一体の獣が待ち換えていた。
そうたった一体である。
「フングルゥフガァァ」
その獣は魔獣とも人ともつかない雰囲気を出していた。
魔物が叫んだ。
―――ヒラ…ヒラ…―――
天井から茶色い手紙が落ちてきた。
いつもはフロアボスを倒すと出てくる、あの腹が立つ手紙である。
『いやぁ、よーくこの奥地までやってこれたね。 結構たいへんだったでしょ? あっそうだ! 奥にいる魔獣で最後だからね! 張り切って頑張ってみようね。 これを頑張れば贈り物があるからねぇ! さぁファイトだ! がんばれ!』
―――グシャ!―――
手紙を思いっきりつぶすと地面に投げつけた愛子。
今は魔法も使えるので全力で地面に投げつけた。
―――ビシィ!!―――
それは床の板を割り一つの小さな穴となっていた。
レーザーで打ち抜いた岩のように。
―――半魔人馬獣。 最終敵、物理攻撃、電撃、火炎が弱点―――
愛子の頭にAIのような声が響いた。
「さぁ! あいつを殺れば終わるわ! 頑張りましょう!」
AIに促されるように殺意をたぎらせた愛子。
二人の獣人も血をたぎらせていた。
「行くぞ! ロイエル! 」
「おう! ミッタマイヤ! 」
愛子も義足に願い駆け出した。
―――義足にアフターバーストを! 威力向上が可能―――
「お願い! もっと早く動けるように! あいつを砕く力になるように!」
そう告げて走った。
―――シャキン―――
両足の義足が縦にわれてスラスターが現れた。
―――ヒィィ! キィンッ!―――
音を置き去りした愛子が像を残して駆け出した!
目の前にいる獣の頭部めがけてハイキックをかました。
「これで終わる! 終わらせてやる!! 」
そう告げた愛子。
そのスピードを載せた蹴りは敵の頭部を確実に襲い掛かった。
「フシュルル!」
それは驚愕に値するスピードだった。
上げられた敵の右手で愛子の蹴りは受けとめられた。
しかし、受け止めた手は後を立てた。
―――ボッキン!―――
愛子の攻撃を止めた敵の前腕が折れ曲がった。
「フシュルゥ!」
敵である魔獣は上半身が人であった。
神人族の上半身と四足の足を持つ狼との複合体。
その瞳は生気を宿さない漆黒に塗りつぶされていた。
「フシュフヌ…’電撃’ぉぉ?」
魔物は折れた腕を愛子に向けた。
折れて曲がった腕に魔法陣が展開された。
「うそっ!?」
魔物が魔法を使った。
赤い電撃が二人の獣人に向けられた。
「まさか!? そんな!」
愛子の脚を受け止めたソレは魔法を放った。
「なんの! 単一魔法は避ければよい事だ! なぁロイエル」
「そうだな!」
ロイエルとミッタマイヤは飛びのいた。
「フシュフヌゥゥ」
魔物はさらに迫りくる獣人に対応した。
左腕から魔法力の針を飛ばしてきた。
「「くらえヲルフガング流決闘術”真空牙”」」
発生する真空牙が魔法力を吸い込んだ。
そして発生した真空が敵をその場に固定した。
「フシュルゥ!?」
二人の獣人は足に魔法力を纏った。
そして連続蹴りを繰り出した。
「「ヲルフガング流決闘術”光走脚”」」
魔法力を帯びた蹴りが、嵐のように敵に襲い掛かった。
魔物は、愛子の義足を手を離した。
「いまね!」
愛子は後ろに飛びのいた。
「三人ともにげてください!」
「三人ともにげえぇや!」
そういうとルルカッタとルイカは杖を構えた。
「真滅電撃!」
ルルカッタの魔法陣から青色の雷撃が現れた!
「極獄炎龍!」
ルイカの魔法陣から白い火炎龍が現れた!
二人はポーズをとり言葉を放った。
「「これでお前は終わりだ(や)!」」
二人の魔人族は魔法少女のようなポーズで告げた。
顔はドヤ顔だった。
「ガァァァァ!」
敵がいたところには黒く燃え尽きた炭があった。
「これで倒したのね。 これならダンジョンから出れるはず」
「おかしいです…こんな簡単に終わるなんて…」
そう倒したのだ一方的に。
しかし、ルルカッタは奇妙な感覚に襲われていた。
―――簡単すぎる―――
それがルルカッタの素直な感想だった。
―――ゴト―――
そして木箱が現れた。
「現れましたね…」
ルルカッタが木箱を開けた。
その中は空っぽだった。
「あれ…おかしいです」
―――ガシャン―――
木箱の横から四角い赤い石が地面から現れた。
その石には神代文字で書かれていた。
『おめでとう! そして……ありがとう!』
その直後である、愛子が異変を感じたのは……
いつも読んでくださりありがとうございます。
感想、ご意見、誤字脱字があれば報告お待ちしています。
次回更新は土曜日18時頃を予定してます