ダンジョン攻略 その13
修正しています。
―――カツン!カツン!カツン!カツン!カツン!カツン!―――
歩みを進める二人の魔人族と二人の獣人。
その歩みは遅い。
「なぁ、なんでこの通路は暗いん? 」
ルイカが壁に手を当てた。
――ガコン!―――
「へっ?」
「「姫様!あぶない!」」
―――ドン!―――グシャ!!―――
―――シャキ!―――
「危なかったですね。横やりが飛んでくるなんて」
「なぁに、こういう場所はそれなりに罠が仕掛けられているもんさ。なぁロイエル?」
赤い獣人は、青い獣人の肩を叩いた。
「そうだな。この手の訓練をヲルフガング様にしていただいたことがある。それが役にたってよかった」
青い獣人は答えた。
「ちょっとあんたらぁ! 私をなんだとおもってんの!? レディよレディ! もう少し優しくするとかできるでしょうがぁ!!」
押し飛ばされた姫が怒っていた。
「いきなり押し飛ばすから頭ぶつけたでしょ!」
姫と呼ばれた魔人族の少女と獣人の二人組。
ルイカ姫とミッタマイヤさんとロイエルさんである。
そして先頭を歩いているのはルイカ姫とうり二つの顔と容姿をもつ少年。
ルルカッタである。
―――カツ!カツ!カツ!カツ!―――
「「「フギャー!」」」
四人が通路を歩いていると、前からダブルヘッドが三体現れた。
その瞳は明らかに闘争本能に彩られていた。
「おわっ! またかよ」
「言うな、ミッタマイヤ! こいつらは雑魚だ」
そういうと二人の獣人は両腕を胸の前でクロスした。
ヲルフガング流決闘術独特の構えである。
「「行くぞ! ヲルフガング流決闘術!」」
そう叫ぶと二人は左腕を振り下ろした。
「「くらえぃ! 真空牙! 」」
二人は左腕の前に真空の爪を出現させ目の前にダズルヘッドに向けて放った。
「「フギィィ!!」」
その場所に引き寄せられた2匹のダブルヘッドに圧縮された風の爪が襲い掛かる
―――ザシュ!―――
「「シギャァ! 」」
一際大きな叫び声をあげると二体のダブルヘッドは事切れた。
もう一体のダブルヘッドはその光景を横目にルルカッタに襲い掛かった。
「しまった! 弟よ、そいつは任せたぞ!」
ロイエルが叫んだ!
「まかせてください!兄様!」
黒い魔力を身に帯びたルルカッタが唱えた。
「獣魔召喚魔装術!!」
―――ウォォォン!―――
ルルカッタの背後に魔法陣が展開され白い魔狼がルルカッタに重なった。
すると白い獣人がそこに現れた。
獣魔召喚魔装術を展開したルルカッタだった。
「すぅぅぅ! はぁあぁ!! ヲルフガング流決闘術’真空牙’!」
腕を交差させ、意識を右腕に集中させ、右腕を横一文字に薙ぎ払った。
ルルカッタの前に、真空の爪が現れた。
そして目の前に迫ったダブルヘッドを上下に分断した。
「フギァァ!!」
ダブルヘッドが事切れた瞬間だった。
「…さぁ、先を急ぎましょう……」
倒した敵を悲しげな瞳でみた。
「まて、結晶石を取り出すのではないか?」
そう告げるとミッタマイヤは、その遺骸から結晶石を切り出した。
「弟よ…気持ちはわかるがここはダンジョンだ……感傷では戦いきれないぞ」
琥珀色の石を取り出したミッタマイヤはルルカッタに忠告をした。
「わかっています……」
受け取った結晶石をルルカッタはウエストバッグの左袋にしまった。
「…だが、お前のその優しさは大事な物だ。つらいことは俺たちに言え。お前は俺たちの大事な弟子だからな」
ロイエルがさりげなくルルカッタを気遣った。
「そうだぞ! お前の気持ちはお前だけのものだ。大切にしろ。まぁ俺たちができることはしてやるぞ!同じ師を仰ぐ、いわば兄弟みたいな者だからな」
そう告げた獣人達を見たルルカッタは瞳をそっと閉じた
そしてルルカッタはついさきほどの会話を思い出した。
ダンジョンに戻ってきた時のことを。
ルイカと二人の獣人は予告なく初めて体験した召喚魔法に精神力のメーターが振り切っていた。
そこでルルカッタはまずルイカから声をかけた。
「ルイカさん、大丈夫ですか? 」
「……ムリ、ここはどこなのぉー? どうしてこんな場所にいるのぉー? 」
ギギギッと油をさし忘れた扉のような音を立てルイカの首がルルカッタに方に向けられた。
我が身におきた出来事に発狂しそうな顔でルルカッタを見つめるルイカ。
その瞳からは不安しか感じることができなかった。
「ここは、僕がいた場所です。 グラマナスサイコのダンジョンと呼ばれている所です」
そう告げるとルルカッタはルイカを抱きしめた。
それは愛子がルルカッタに身をもって教えてくれたことだった。
―――不安な時は相手の気持ちを受け入れてあげるのよ―――
’抱きしめて受け止める’それが今、ルルカッタに出来る方法だった。
今度はそれを不安に押しつぶされそうな表情のルイカに行ったのだ。
一瞬の静寂。
そして……
「―――んっ! なにすんねん! 」
いきなりハグされたルイカは耳まで真っ赤になりながら正気を取り戻した。
次に目を白黒させている二人の獣人に近づいた。
「ミッタマイヤさん、ロイエルさん大丈夫ですか? 」
声をかけられた二人の獣人は顔をルルカッタに向けた。
「「ルルカッタよ、ここはどこなんだ? 」」
声がユニゾンした。息が合うとはこのことか、さすがヲルフガング流決闘術の兄弟子たちである。
ルルカッタが答えた。
「ここは僕が、ある女性と探索してた場所です」
そう告げるとここまでの経緯を話した。
最初はびっくりした表情で聞いていた二人の獣人だった。
だが話を聞いて納得したのか、大きくうなずきルルカッタの方を見た。
「そうか……いろいろつらい経験をしてきたんだな
「ロイエル、ここは俺たちがルルカッタの力になるべきだとおもう」
「そうだな、ミッタマイヤ。 俺たちは師を共にするいわば兄弟だ」
「兄弟なら力を合わせるべきだな。ロイエル」
「当然だともミッタマイヤ。 ルルカッタ。 お前は俺たちのカワイイ弟(弟子)だ」
「「弟の為だ。 俺たちは喜んで力になるからな」」
「「これからは俺たちのことを兄と呼ぶがいい」」
そう告げると二人の獣人は腕を組んでビシッとポーズを取った。
そしてさりげなく自分たちの呼び方を兄に変えるように要請していた。
ルルカッタはそれを受け入れた。
「ミッタマイヤ兄様、ロイエル兄様。 ありがとうございます」
「今後もよろしくお願い致します」
笑顔で微笑むルルカッタ。その表情を見た二人の獣人は満足げにサムズアップした。
それを見ていた美少女がつぶやいた。
「あんたら、馬鹿? 」
ルイカの鋭い精神攻撃がルルカッタに突き刺さった。
瞳を閉じて思い出していたルルカッタ。
そして目を開けて歩き始めた。
「さぁ行きましょう!!」
4人は突き当りまで歩いた。
一際巨大な空間は月明かりが、真ん中をスポットライトのように照らしていた。
月明かりと錯覚したのは天井に映された月と星空の影響であった。
「ガアアア!」
大きな咆哮がホールに響いた。その咆哮を上げた敵は周囲の壁から出現したように見えた。
大きな巨体を有し、手には一際輝く鎌状の獲物をもって立っていた。
「弟よ! ここにはこんな大物がいるのか? 」
「いえ、初めて見ましたミッタマイヤ兄様」
「ということは弟はあいつを見たことが無いんだな」
「はい。ロイエル兄様」
「兄様たちは、アイツをご存知なのですか? 」
「「あいつはオーガジャイアントの一種だ」」
オーガ、この世界での上位種である魔物。知能は高く、並みの騎士や戦士では返り討ちにあう可能性が高い魔物。
普段は、話も通じるオーガであり、その陣地をや生存権を脅かさなければ戦うことも少ない
その温厚なはずのオーガが目に闘争本能を宿しルルカッタ達の前に立ちふさがる。
「どうやら、話し合いは無理なようだな」
「ミッタマイヤ見ろあの瞳を! アイツは理性を無くした魔物だ」
「そうだな!ならわかっているな、ロイエル」
「では! 」
「おう! 」
急に二人の獣人が全身に覇気をまとい目の前の敵に向かっていった。
「「ヲルフガング流決闘術”真空牙”」」
二人は息の合った攻撃を繰り出した。右腕を大きく振りかぶりその力の限り巨大な真空の爪をつく出した。
オーガジャイアントがその爪に引き寄せられる。 巨大な真空の爪は空間固定されており、巨体を引き寄せた。
「グウオオオオ!」
その引き寄せられる力に対抗しようとオーガジャイアントは咆哮を上げた。
全身に力をいれ踏ん張りその巨体を地面に固定した。
「甘いわ、行くぞロイエル! 」
「ふっ! ミッタマイヤこそ力を出し惜しみするなよ」
オーガジャイアントに魔力を腕にこめて右パンチを見舞いする。
「グウアアア 」
口から何かの液体を吹き出した。後ろにステップし華麗にターンを決めた。
そして両腕を魔力で覆い、オーガジャイアントの腹部に当てた。腹部から全身に波打つような波紋が広がった。
そして全身が震えたかと思うと膝をつき前向きに倒れた。全身は痙攣していた。
「「ヲルフガング流決闘術”振動拳”」」
二人の獣人は笑顔でルルカッタの方に振り向くとサムズアップした。
笑顔が輝いている。
そのとき急に頭を上げたオーガジャイアントが口から咆哮を上げようとした。
「あぶない兄様たち! 」
ルルカッタはイメージした。
黒き稲妻が音もなく手のひらの魔法陣から現れ、目の前の咆哮を上げる敵を黒焦げにする姿を。
「ギヤ―――! 」
そのイメージ通りの現象が発現した。
二人の獣人の後ろで黒焦げになるオーガジャイアントをルルカッタは見つめた。
そして中心に表れた木箱をみつめた。
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戦闘編かきました。まだ次も戦闘編と懐かしいあの方と再会します。
それをお楽しみにしてください。
次の更新は水曜日18時ごろを予定しています。