ダンジョン攻略 その12
修正してます。
―――ギシッ!ギシッ―――
なにかがベッドの上で揺れ動く音が寝所から聞こえはじめた。
周囲に隠れた観察者の耳の集中力上昇させた。
そしてさらに音が聞こえた。
「「「「「まっまさか!!」」」」
周囲の観察者には妙な連携が生まれ始めた。
「あっ……はうぅ……」
「…………」
「……きっつい」
中から聞こえる声が、デバガメ同志たちの妄想に火をつけた。
そして中で行われているであろう事を想像した。
「「やつら…やりやがった!」」
「「きゃぁ!うわぁうわぁ!」」
デバガメは妄想に狂った。
実際はそれぞれの寝言だった。
ロイエルは無言で、ミッタマイヤは寝言を言った。
そしてルルカッタは夢を見た。
焼ける屋敷、斬られる友人と母。
そして叫び声を上げた獣魔
「ウォォォン!」
「駄目だ!ハク!戻れ!!」
目のまえの神人族の魔法師に向けて飛び交った獣魔
「駄犬が!身の程を知れ!」
――ザシュ!―――
血が噴き出ていた。
「ギャン!」
「! ハクぅ!!」
眼に焼き付いた光景。
母の言葉…にげなさい!…ヴィスタ城へ…
夢のなかでハクは神人族にかみついていた。
ルルカッタは涙がこぼれた。
「ハク…ごめん。ごめんよ。僕に力がなかったんだ…なにが天才だ!どんな魔法を開発しても使える魔法力が無きゃなにも守れないじゃないか!!」
ルルカッタは地面を殴りつけた。
―――トトトッ―――くぅん―――
地面を殴りつけて泣いているルルカッタに白い魔狼が寄ってきた。
「…! ハク!」
「ウォン!」
そこに魔狼が居た。
「うわぁぁん!ハクゥ! ごめんよぉ! 痛かっただろうぉ! 本当にごめんよぉ!」
ルルカッタは魔狼に抱きついた。
「ウォン!ワウゥ?」
魔狼は尻尾を振っていた。
ルルカッタはいつまでも魔狼に抱き着いていた。
そして落ち着くとハクの目をみて言った。
「ハク。僕はもっと強くなりたい。守られるだけじゃなく守れるように…僕と一緒に戦ってくれるかい?」
魔狼は吠えた。
「ウォン!!」
そして魔狼はルルカッタの頬を舐めた。
温かさを感じながらルルカッタは眼が覚めた。
目から涙がこぼれた。
―――がさっ!―――
「おはよう! ルルカッタ! よく眠れたか?」
ロイエルが声をかけた。
涙目のルルカッタがロイエルを見た。
「あっ…おはようございます。ロイエルさん」
「どうしたんだ!? 泣いているではないか!!」
「あはは…いや夢でうれしいことがあったんですよ」
ロイエルと一緒に天幕からルルカッタが出てきた。
そこにルイカが現れた。
「あら、昨日はお楽しみだったのようね。ド変態」
言葉がいちいちキツイなぁとルルカッタは感じた。
「おはようございます。ルイカ様」
そう挨拶を行うとルルカッタはルイカの横を抜けて天蓋の外にでた。
昨日に引き続き、朝からルイカの言葉による攻撃が始まった。
「ふん!いつまでもそういう涼しい顔をしてられないようにギッタンギッタンにしてもらうわよ!」
しかし、ルルカッタの頭の中はそれどころではなかった。
「今日は朝からヲルフガングさんが、僕の魔法を見てくれるって言ってました。 一緒にルイカ様もいきませんか?」
「ふん!いいわよ!一緒にいきましょ」
ルルカッタは急いで闘技場に向かった。
一緒に稽古を行うはずの寝ぼけていた兄弟子たちは置いてきた。
「おう! 来たか! 」
そう告げると豪快に口を開きカラカラ笑っている大柄な獣人がそこにいた。
「すいません。 お待ちさせてしてしまいましたか? 」
「いや。 わしも来たばかりだ」
「早速いまからやるか? 」
「是非、お願いします」
闘技場に来たルルカッタは挨拶もそこそこにヲルフガングにそう告げると早速構えた。
ヲルフガングは腕を組んだままルルカッタに告げた。
「まず小僧は、獣人化のイメージをして魔力をその身に流せ、その上で魔法を唱えよ」
そう聞いたルルカッタはイメージした。
そして叫んだ!
「獣魔召喚魔装術!」
そして魔法力を全身に纏うように流した。
魔法陣がルルカッタの背後に現れた。
ルルカッタの全身に魔狼の零体が重なった。
あっという間に魔力が覆い、姿を白い獣人に変えた。
「ほう…なかなかどうして。小僧、零体と話したか」
ルルカッタは伝えらえた内容を何度も思い返した。
ルルカッタからは玉のような汗が噴き出ていた。
「いいぞ、最初より一体化が進んだな」
ヲルフガングはルルカッタに告げた。
「小僧。召喚師の魔法力は他の魔法師や魔装師の魔法力と根本的に違う」
ヲルフガングは告げた。
「召喚師は世の理に干渉することができる魔法力だ」
そしてヲルフガングはさらに伝えた。
「小僧、他の魔法も放ってみろ」
そう告げられるとルルカッタは右手を前に突き出し電撃魔法をイメージした。
「雷撃!」
魔法陣がイメージした通りに闘技場の真ん中に描かれた。
そして電撃が魔法陣から放たれた。
闘技場の中心に轟音が鳴り響き、闘技場に砂煙を巻き起こした。
「そうだ!召喚師は、魔法陣をイメージして使うのが正しい魔法の使い方だ」
「こらぁ!ルルカッタ!めがぁめがぁ!」
その砂煙で客席にいたルイカからいつものルルカッタを罵る声が聞こえてきた。
「それでは、次に獣人化をしたままで決闘術を覚えてもらう」
「はい! 」
そう告げるとヲルフガングは腕をクロスし爪をルルカッタに向けて構えた。
それを獣魔召喚魔装術を行使し獣人化したルルカッタが真似た。
「まずは左腕を上から下に振り下ろせ、その次に右腕を横に薙ぐんだ。その時に右腕に魔力をさらに込めることを忘れるな」
「はい!」
その動きをまねると右腕を薙いだときに横一文字に真空の爪があらわれた。
そしてヲルフガングがその場所に急に引き寄せられた。
するとヲルフガングは指一本に魔力を籠め縦に振った。
ルルカッタと同じ真空の爪が現れ、ルルカッタのそれを相殺した。
「いいか、これがヲルフガング流決闘術”真空牙”だ」
「次に蹴りだ、足に魔力を籠めて蹴り上げろ」
「はい! ヲルフガングさん」
「ヲルフガングさんではない。いいか、俺のことは師匠とよべ」
「はい師匠! 」
そう告げるとさらにテンション高く話始めるヲルフガングさん。
魔力を込めて蹴り上げるとルルカッタの前に真空の爪が縦に現れた
そしてヲルフガングが先ほどよりずっと早くその真空の爪に引き寄せられたのだ。
またもや指に魔力を込めると縦に振り下ろした。
―――ザシュ!―――
―――ザシュ!―――
そして現れた真空の爪が、ルルカッタの出した真空の爪を相殺した。
その相殺された衝撃は中に吸い込まれたものを瞬間で吐き出した。
砂ぼこりが立ち客席にその砂の粒が襲い掛かった。
「あいたたたぁぁ!こぉぉらぁ!」
その砂に直撃されたルイカが顔を真っ赤にしてこっちを見ている。
「あんたぁ!そこ居なさい!」
暴言だけでは我慢しきれなくなったのか客席からこちらに向かってくるルイカ。
「いいか! それがヲルフガング流決闘術”重爪”だ」
ヲルフガングの横から同じ顔を持つミニスカートタイプのドレスを着た美少女がルルカッタに掴みかかった。
「あんた! 私に何の恨みがあって砂ばかりぶつけてくるん!? ほんまええ加減にしいや! 」
首をつかまれガクガクしているルルカッタとその元凶、ルイカ。
―――ポンッ!―――
思わずルルカッタの魔装術が解けた。
そのころ闘技場にやって来たミッタマイヤとロイエル。
「「王よ、おそくなり申し訳ございません」」
二人の獣人がルイカに首をカクカクされているルルカッタの隣に来たその時!
地面に黒い粒子が迸り、ルルカッタとルイカを包んだ。
「いかん! お前たち、二人をその粒子から放り出せ! 」
ルイカとルルカッタのやり取りを見ていたヲルフガングが突如叫んだ!
その指示を聞くや否や、腕を伸ばすミッタマイヤとロイエル。
直後二人の獣人にも黒い粒子が腕を包み込んだ。
―――カッ!―――
光り輝くと魔人族の少年、少女と獣人二人組の姿が消えていた。
―――ギリッ!―――
歯ぎしりをしたヲルフガングが消えた場所を恨めしく見た。
その目つきは厳しく、手を握りしめていた。
そして、その手から血が流れるのも気にせずますます力を込めた。
「この魔法力は……めんどくさいことになったな」
「あいつらに説明しないとな……それに奴にも特にな……」
苦々しくそうつぶやくとヲルフガングは踵を返し闘技場を後にした。
―――キィィン―――
光が収まり目を開けたルルカッタとルイカ。
二人に手を伸ばした獣人も目を開けた。
「あっ戻ってきた!」
薄暗く青い光が灯るダンジョンの通路が目に入った。
「「「……ふへっ! 」」」
おなじ声を出しその場にうずくまったルイカと獣人たち。
それを見たルルカッタは今後のことを思うと天を仰ぎたい気持ちでいっぱいになった。
「あぁ…アイコ様に逢いたいです」
そうつぶやくとルルカッタは、うずくまる三人に手を差し出したのだった。
いつも読んでくださりありがとうございます。
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ヲルフガング流決闘術のバリエーションは今後も増えます。
兄弟子達も転移してきました。
次からは戦闘回になります。
次回は水曜日の18時までに更新したいとおもいます。