ダンジョン攻略 その11
完全に乗りで書いてます
10月20日 修正してます
―――ピチョン!シャァ―――
天蓋にある入浴施設にミッタマイヤwithロイエルはいた。
「いつっ…」
「いてぇ…」
体は埃まみれ、服を脱ぐだけで砂、土が落ちてきた。
獣人である二人には顔や体に生えている毛の隙間に、砂ぼこりが入り込んでいた。
「「今日は特にきつかったなぁ……」」
しみじみと言うミッタマイヤ、そこにロイエルが返す。
「ああ、こんなにきつい稽古は久しぶりだ」
服を頭からスポッと抜いて、ロイエルは答えた。
二人の獣人は服を脱いだ。
そして痛みが残る全身を、鏡で見てつぶやいた。
「傷だらけだな」
「そうだな。まぁ仕方ない」
全身傷だらけで、顔や腕に痣も出来ていた。
―――カラカラ―――
満身創痍で立つのもフラフラな二人は扉をあけた。
施設に入ると二人は湯を浴びた。
桶から流れ出る水は傷だらけの二人の身に染みた。
「イツッ!」
「ああ……傷にしみるぅ……」
―――カラカラカラ―――
二人がそうつぶやくと風呂場の扉が開く音がした。
「ああっルルカッタも来たの…か……?」
「!?」
そこに立っていたのは美少女と見間違うような少年。
タオルを胸から巻いているせいで余計に女子に見える。
そうルルカッタがそこにいた。
「見たか!?」
「見た!あれは…」
二人の獣人は思わず目を反らした。
そこにいるのは少年だと分かっている二人。
魔人族の姫であるルイカと瓜二つの顔を持ち、体格も似通っていた。
「ミッタマイヤ、わかっていると思うが……」
「皆まで言うなロイエル。変な気を起こす事は無い! 」
「そうだ、たとえ顔、体格が似通っていてもアソコにいるのは男だ」
「そうだとも先ほどまで一緒に汗を流した俺らに続く兄弟だ」
「では……」
「おう……」
そういうと二人は後ろを振り返った。
―――シャッザパッ!―――
そこには膝をつき桶で肩からお湯を流すルルカッタの姿が!
流れ出るお湯はタオルを濡らしピッタリと身体に張り付いていた。
そして流れる湯から出る湯気で顔がほんのり紅潮していた。
「あれっ? ミッタマイヤさん、ロイエルさんいらしていたんですね」
いまの格好が女子らしさを際立たせていることにルルカッタは気が付いていなかった。
二人の視線に気が付くと顔を上げるルルカッタ。
瞳は湯気のせいで潤いを帯びていた。
二人は顔をそむけた。
「どうしました? 」
声をかけるルルカッタ。
その瞳はまっすぐ二人の獣人を見つめた。
「ロイエル…俺はだめかもしれん!」
「何を言うミッタマイヤ! お前はそれでも栄誉あるヲルフガング様の騎士か!」
「わかっている! だがあの姿を見たか? あれは確実に俺たちの精神をつぶすぞ」
「いいかミッタマイヤ、確かに姿は姫様にそっくりだとしても根本をもう一度考えろ! あれは!あれは男だ!」
「そうなのだが……」
「これ以上無様をさらしては姫様に顔向けできないではないか!」
そういうとロイエルはルルカッタに向けて歩みを進めた。
近づくロイエルにルルカッタは話しかけた。
「ロイエルさん、ミッタマイヤさんはどうされたんですか? なにかすごく耐えるような表情で僕を見ているんですけど……」
ロイエルは答えた。
「なに、奴は己の精神力と戦っているんだ。 常在戦場だ。 それにしてもルルカッタよ、なぜ胸元で布を巻いているのだ? それは女子のようだぞ」
ロイエルは平静を保ちながら話した。
ミッタマイヤのことをフォローしつつ、ルルカッタに向けて質問を投げかけた。
その答えは意外な物だった。
「えっ! これは父様から『風呂はこのように入る物だ』と教えられていたので……ロイエルさん! 何かおかしいですか?」
ロイエルの腕を取ったルルカッタ。
体格差から見上げる形になるルルカッタ。
上目遣いでロイエルを見た。すこし潤んだ瞳で!
ロイエルの精神力がゴリゴリ削られていった。
「そ…そうか。わかった! それは仕方ない」
そう告げたロイエルにルルカッタは言葉をつづけた。
「わぁ…ロイエルさんの腕っておっきいんですね!!僕こんな太いの初めてみました」
そう告げてロイエルの腕を見つめるルルカッタ。
動悸がし始めたロイエル。
腕を触るとさらに言葉をつづけた。
「すごい!これはかたいですね! カチッカチです!! こんなのいいなぁ…ぼくも…それ(腕)がほしいです」
腕を両手で触るルルカッタ。
息が切れ始めるロイエル。
ロイエルは急に立ち上がりルルカッタの元からミッタマイヤの所に戻った。
そしてロイエルは椅子に座りいきなり桶に頭を打ち付け始めた。
―――ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン―――
頭から血が流れるのも気にせず桶に頭を打ち付けるロイエル。
その瞳は狂気すら伺えた。
「ロイエル! 気を確かに!」
「いかん、いかんぞ! ミッタマイヤ! あれは危険だ! 」
「そんなに危険な物なのか! 」
「おう、あれは…美の化身に身をやつした悪鬼だ」
「ははっ、お前は芸術的文学表現がうまいな」
「もう俺は…だめかもしれん……」
「ロイエル、お前がだめなら誰がこの現状を立て直すというのだ! 」
二人盛り上がる獣人達。
そんな光景を見つめながらルルカッタはヲルフガングから教えられたことを思い出していた。
「いいか小僧、貴様は魔装術の基本を学び直せ。獣魔の零体と会話をしろ! そして力を借りるのではなく一体となれ」
ヲルフガングに告げられたことを思い返していたい。
「…ハクと会話か…」
奥で転がり続ける二人の獣人は湯船に豪快に落ち、しぶきを上げていた。
湯船に入るルルカッタ。
―――チャプン―――
お湯につかると浮いている二人の兄弟子である獣人に問いかけた。
「ミッタマイヤさん。ロイエルさん、なぜヲルフガングさんはあんなに強いのですか? それにナゼ、王と呼ばれているんですか? 」
湯船で浮いていた二人の獣人は顔を上げるとルルカッタの両隣に座った。
湯につかりながら告げた。
「それはな、我らに自由と誇りを取り戻した六英雄だからだ」
そう告げたのはミッタマイヤ。
「昔、この地はそれぞれの種族が互いに血で血を洗う戦に明け暮れていたんだ。自分たちもそれに従い、長く争いを行ってきた。それが正しいことだと信じてな」
ロイエルは真剣な表情で告げた。
「長い争いに終止符を打つ者達が現れた。それが、六王と今呼ばれている六種族の代表者だ」
「神を止めたと言われている…武力で持ってな!」
ミッタマイヤがキラキラした瞳で告げた。
それを聞いたルルカッタは言った。
「ロイエルさん…僕、ヲルフガングさんの稽古を頑張ってうけます。 だから! よろしくお願いします」
二人の獣人は顔を見合わせ、こう告げた。
「なんだ今更、当たり前じゃないか」
「そうだぞ、頑張ろうな。 弟よ」
そう告げると二人の獣人とルルカッタは湯船からでて脱衣所で服を着た。
それは浴衣のような服装であった。
風呂場からでると三人は仲良く廊下を歩いた。
ルルカッタは両隣の獣人と腕を組んで歩いていた。
湯あたりしたのか、ふうっと少し吐息を吐いたルルカッタ。
その紅潮した顔とポニーテールにまとめられた銀髪は歩くたびに左右に揺れ動いた。
「ルルカッタよ…髪はそうしないといけないのか?」
ロイエルが聞いた。
もう俺たちの精神力が0だよ0!!
そう言いたい気持ちだった。
「えっ?だって髪で服が濡れちゃいますしぃ…」
うっすら汗をかいたルルカッタの見た目は浴衣美人な美少女であった。
「「そっ…そうか…」」
そんな艶姿に反応せずに、見た目は平静を保ちつつ、内心では己と戦っていた獣人二人。
そして周囲に聞こえた会話は、周囲の獣人を混乱の渦に巻き込んだ。
「すごい大きいですね」とか
「こんな硬いのは初めてでした」とか
「あんなに力で無理矢理こじ開けられたのは壊れそうでした」とか
笑顔で述べる浴衣姿の美少女的少年と二人平静を保つ獣人の会話。
「「「「「!?」」」」」
聞き耳を立てた周囲の獣人たちに激しい動揺をまき散らしながら三人は寝所に向かった。
「では…お兄様方、おやすみなさい」
「おう、ルルカッタよ」
「明日は早いぞ。しっかり休め」
ベッドへ倒れると明日からの厳しい稽古を思った。
ルルカッタの意識が闇の中に消えていった。
「…本当にここに姫が入っていったのか?」
「間違いない!あんな顔した奴が二人もいてたまるかよ」
「ねぇちょっと!ほんとうなの?アビス様きっと激おこよ!」
「オニプンマルだぞ!きっと」
寝所の周囲では通路の会話を聞きつけたやじ馬が気配を消していた。
そして、観察者は寝言を聞いてしまった。
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完全に乗りで書いてます。
二人の獣人は今後もだしたいなぁ
次回更新は火曜日18時頃の予定です。