抗体 その7
ミレイがラムランドを憎む理由とは
ミレイに案内されて私たちは地下街を進んだ。
所々、カビのような臭いのする通路だ。
「ところで、どうしてミレイは私達の味方をしてくれるの? 貴女の目的は何?」
私はミレイに尋ねた。
「どうしてって、困っていたら助け合うのは当たり前じゃないですか」
ミレイは当たり前のように答えた。
だが私はどうしても気になっていたのだ。
それはミレイが私たちを見るときに目とフレイを見るときの目が違うことだ。
まるで家族を見つめるような慈愛の満ちた瞳でフレイを見ていた。
「フレイって、もしかしてだけどミレイの知り合いなの?」
「……まぁ近いものですよ」
ミレイは言葉を濁した。
重い沈黙が当たりを包んだ。
「フレイは私たちと同じなんですよ。 複製体なんです」
「複製体?」
私にミレイは悲しそうな顔で告げた。
「ええ、私はレイ・カグラの複製体としてラムランドに作られました。 ただ彼の思うような結果にならなかったようで……私たちは廃棄されました」
「廃棄って?」
「簡単な話ですよ。 この地下街に捨てられたんです」
ミレイは悲しげな顔で私に伝えた。
複製体……
必要されていながらも作られら直後に捨てられた。
まるでネグレクトを受けた子供と同じような心に傷を持っていた。
「私たちって?」
「私を含む複製体として作られた者は全て同じ地下街に閉じ込められました」
ミレイがミッタマイヤの隣にいる竜人に指を鳴らして合図した。
合図を受けた竜人は顔を隠していた頭巾を取った。
頭巾の下から見えたのはミレイと同じ顔だった。
「同じ顔ね」
私はそこにいるミレイと同じ顔の女性を見て驚いた。
顔はミレイとよく似ているがミレイより幼い印象だった。
ただフレイが成長したら同じような顔になると思う。
「私たちはラムランドに復讐したいんですよ。 勝手な都合で生み出して廃棄したことを後悔させたいんです。だからあなた方に力を貸すんです。身勝手ですか?」
「いいえ。理由はどうあれ、貴女と私たちの利害は一致しているわ。力を貸してもらうわよ。ミレイ」
「はい。アイコさん。 あの通りを抜ければ地上に出ます」
ミレイが指さした先には地上からの光が刺していた。
その光に向かって私は歩みを進めた。
「眩しいわね。 もう昼間なのかしら」
私はミレイ達と共に地下街を抜けて地上に出た。
暖かい春のような陽気を含んだ風が私達を包んだ。
「今は、正午ですね。 あの木に囲まれた屋敷が目的の場所です」
ミレイが指さした先には、まるで廃墟のような建物が建っていた。
「廃墟みたいだけど………何かいるわね」
街中から外れた場所にあるそこは見た目はまるで廃墟のようだった。
ただおかしい事に僧兵がまるで重要な物を守るかのように門番をしていた。
「明らかに、ただの廃墟にしてはおかしいわね。 ロイエルどう思う?」
「うむ、廃墟からは人の気配を感じるぞ。 おそらくカモフラージュされているんだろう。 わが弟弟子の気配は感じないが、もしも居るのなら助け出さねば」
ロイエルは鼻を膨らまして私に伝えた。
ロイエル達も戦闘準備完了という感じだ。
「じゃぁ行きましょう。 目標はルルくんを救助すること。 あとラムランドとかいう男を叩きのめすわよ」
「「「「「おーー!!」」」」
掛け声と共に、私たちは廃墟に突撃した。
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