抗体 その4
赤装束の女は……
「………ここは?」
ルイカが悪寒のする体を起こし周りを見渡した。
そこは黒い壁に囲まれた部屋だった。
そして部屋の真ん中には火のついた蝋燭が一つ立っていた。
「起きられましたかぁ?」
甘い声のする方をルイカは見つめた。
虚な視界で見たのは紅髪と耳の上から生えた二本の角だった。
ルイカは右手を構えて尋ねた。
「……だレヤあんた?」
「あわわ。 その手を下げてね? ね? では改めて。 私はミレイ。 そこのお嬢さんと同じ……贋作よ」
赤装束にマスクをつけて深々とお辞儀をした女は、ルイカを見つめて名前を告げた
「贋作やて?」
ルイカは横に寝ているフレイを見つめた。
そして女はルイカに近づき声をかけた。
「ねぇ、喉が乾いたでしょう? お茶にしましょう?」
女はニッコリと笑うと手元から茶器を取り出してお茶を濯いだ。
少し酸味のある甘い香りが湯気と一緒にティーカップから溢れルイカの鼻腔をついた。
「まぁ…良い香りね。 これはベルガモット?」
「おっ? これを知っているとは、もしかしてお金もち?」
「まぁこう見えても王族やからな!」
「本当に? 王族とは強くでたねぇ」
「本当に王族なんやけど!!」
「にはは。まぁ落ち着いて落ち着いて。 まだ君たちの体は完治したわけではないんだから」
「!?」
「まだ気だるさと悪寒を感じているんだろ? それは第2フェイズに入った証拠だ」
ミレイが言うようにルイカは体に若干の気だるさと悪寒を感じていた。
そしてルイカが質問しようとするとレインとアウロトが目を覚まして声を上げた。
「ルイカさん! フレイさん!!大丈夫ですか?」
「ルイカ! あの黒い敵は?」
レインとアウロトは手に獲物の感触がないことに気が付き手を見つめた。
「あぁぁ魔剣がない!」
「私の魔槍もない!!」
レインとアウロトが錯乱したように叫んだ。
そんな二人の騒ぎ声にフレイも目を覚ました。
「ルイカはん。 ここはどこどす?」
フレイは顔を両手でくしゅくしゅと猫のように描くとあたりを見回した。
そこにミレイが近づいて頭を撫でた。
「ここは、地下街だよ。 10番目」
「あなたは? それに10番目?」
「ああ…そうか。 私はミレイ。 フレイちゃん、あなたは巫女になって何年なの?」
ミレイはフレイの髪を撫でながら尋ねた。
「うちは…巫女になってまだ日が浅いんどす。 それに母様……前の巫女から正式な引ぎは受けていないんどす」
「そうか……なら、仕方ないね。余計なこと言ったね」
「いえ……ところで司祭様は?」
「……司祭。 それはラムランドのことか?」
「はい」
「そうか…」
フレイの頭を撫でるミレイの手が止まった。
「ミレイはん?」
「あの男が……最高司祭か……カミキリ様を差し置いて……」
ミレイの手が小刻みに震えていた。
そして自分の手を握りしめ歯を食いしばりミレイはフレイに告げた。
「ラムランド…あいつは司祭ではないよ。あいつは…」
「そんなバカなことありまへん。確かに……調べていけば調べるほどラムランド司祭様が怪しいのはわかっています。 でもラムランド司祭様は、うちの父様と……」
フレイはミレイの声をかき消すように告げた。
フレイの両目からは涙がポロポロとこぼれ落ちた。
「フレイ。 君がどう思おうとも構わない。 でもね。 あいつは君たちを騙しているんだよ。」
ミレイが冷たい声で告げた。
それを聞いたルイカがミレイに尋ねた。
「ミレイ? あんた、何やら色々知っているみたいやけど…ならウチの使用人が捕まっとる場所のこともよく知ってるんやないの?」
ルイカはそう告げると、フレイの持ち込んだ巻物を見せて尋ねた。
「ああ、ここは……機密となっている場所だよ。 まぁ確かに、そこに行けば君の彼も捕まっている可能性は高いと思うよ……ただし、守りが強力だし、普通に攻めても入れないよ……なにか強力な魔法とか火力があれば違うんだけど」
ミレイが諦め顔でルイカに告げた。
それを聞いたルイカがニヤリと笑った。
そしてレインとアウロトと目を合わせた。
「それなら…いけるでぇ!!」
ルイカが親指を上げて叫んだ。
「ただ問題は…あの人たちを連れて来なあかんのやけど…ミレイ? あんたある人たちを連れてくることできる?」
「街に入られる前なら大丈夫だけど?」
「そうか…ならいける!! ミレイ! あんたにお願いがあるんやけど、頼めるか?」
ルイカはミレイに告げた火力達のことを。
「あとはウチ達を蝕む魔法生物をどうにかしないとな…今フェイズ2と言ってたけど…」
「フェイズ2! それならまだ時間は稼げます。 フェイズ3、フェイズ4は少しかかりますから」
フレイがルイカの言葉を聞き、急いでルイカに告げた。
「でもなんか改良したとか黒装束の男が言ってたから…楽観はできへん。 それにルルカッタがなんか知っとるようなことを言っていたし……」
ルイカはぶつぶつと独り言のように呟いた。
ミレイは、俯いたルイカの手をとり優しい声色で告げた。
「あの魔法生物についても、何か妙案があるみたいね。 あなたの言った人については私の仲間がうまく対応して此処に連れてくるわ」
そんな中、フレイがミレイに尋ねた。
「あなたは、ラムランド司祭が最高司祭様の偽物だって言った。 あなたの言葉を信じるとするなら、どうしてあなたはそんなことを知っているの? それにあなたは私の母様と似ている気がする……見た目だけじゃない…何か気配というか……」
フレイはミレイを見つめて尋ねた。
ミレイはフレイの両肩に手を置いて告げた。
「それはね…私はねラムランドが生み出した者の最初の一人目だからなんだよ。 良いかい? 今から言うことを聞いても取り乱さないでほしい。 君も、君の母親も、私もある人の複製体なんだよ。」
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