厄災 その6
そろそろ事が起こりそうな気配です
宿に戻ったルイカ達は、宿の中にある喫茶店で話の続きをしていた。
そこに灰色のローブを纏った竜人の巫女が現れた。
「待たせてしまって申し訳あらしまへん」
「フレイ! やっと来た!」
「ごめんなぁルイカはん。 調べもんしていたら遅うなってもうて」
灰色のローブを纏っていたのは、巫女装束を着たフレイだった。
両手に、いっぱいの巻物を持っていた。
「ところで……ルルカッタのことは分かった?」
「それなんどすが…あっ! 店員はん。 お茶もらえます?」
「かしこまりましたぁ〜〜」
フレイはルイカに話す前にお茶を注文した。
差し出されたお茶を一気に飲み干した。
「ふぅ…喉乾いてて……まぁこれを持ち出すのがしんどかったんどすえ……」
そう告げるとフレイは両手にいっぱい抱えた巻物を机において差し出した。
「で…ルルカッタの捉えられている所を知るにはどれを見たらいいん?」
「そうですね……ルルカッタはんの居場所としてウチが怪しんでいるのは………これどす」
差し出されたのは、赤い一つの巻物。
かなり古いものみたいで所々に破れている物だった。
「ルルカッタはんは親衛隊の僧兵に連れられていったのは、ウチたちが直接見ているからわかるんやけど……問題はその僧兵が何処に連れて行ったのかが分からへんのどす」
「えっ、だって連れていったのは親衛隊の僧兵なんやろ? と言うことは監禁されている場所はすぐにわかると思うんだけど」
「……と言うことは、ルルカッタさんは正規の扱いを受けていないと言うことですか? フレイさん」
「……信じたくなんどすが……おそらく………」
ルイカが不思議そうな顔で尋ねると、アウロトが考えを答えた。
フレイは、暗い表情で小さく頷いた。
「此処から先の話は、人がいないところでさせてもらいたいんどす」
「分かったわ。 なら私たちの部屋で」
「助かります」
レインはフレイに告げた。
そしてフレイは、ルイカたちの部屋に歩いてついて行った。
「この部屋には、防音をしているから周りを気にしなくていいわよ。フレイ」
「助かります。ルイカさん」
「礼はいいわ。 それよりルルカッタはどこに?」
「ルイカはん。 親衛隊なんどすが……いないんどす」
「いない? どう言うこと?」
ルイカが、フレイの話を遮って聞き返した。
「そもそも親衛隊って扱いの僧兵はいないんどす。 しかもこの前来た僧兵の顔は覚えていたので、聞き込みをしたんどすが……存在しないんどす。 本当に」
フレイは申し訳なさそうにルイカに告げた。
そしてルイカがフレイに尋ねた。
「私兵ってこと?」
「いいえ、そもそもラムランド司祭が独自に私兵を雇っていると言うのは聞いていないんどす。 それ以上に…ラムランド司祭が最高司祭というのは名目上のことのようなんどす」
「どいうこと?」
「というのは、最高司祭様は二千年から不在ということなんどす。 ラムランド司祭は、当時の準高司祭であり事務方のトップでありんした。 最高司祭様がいない為にトップになっているという事どす。 またその頃に教会の資料を破棄したようで……その為、昔の資料がほぼないんどす」
「ならその最高司祭がいなくなってラムランド司祭が後を継いでいるということね。 なんか怪しいわね?」
「そうですね。 少なくとも最高司祭が不在になった理由については知っていそうですね」
「それともう一つ、ラムランド司祭はどうやら万年単位を生きる古竜人のようなんどす」
フレイがビシッとな人差し指を立ててルイカに告げた。
「えっ? と言うことはもしかして……竜王、レイ・カグラと同じくらい昔の人ってこと?」
「そうどす。 まぁそういう噂があると教会で耳にしただけなんどす。 あと、竜王様なんどすけど不在なんどす。 三千年前から」
「「エッ!? どう言うこと?」」
レインとアウロトが素っ頓狂な声を上げた。
「これも教会で確認したんどす。 今この国は最高司祭様が竜王代理となっているんどす」
「此処までくるとラムランド司祭って……怪しいね」
「そうですね。 ルルカッタさん無事なんでしょうか?」
「まぁアイツは、魔法戦ならウチと同じくらい強いから大丈夫ちゃう? それよりもウチの弟分なんで荷物持ちがおらんと敵わんから、はよう返してもらいたいんやけどな。 んでそのルルカッタがおるところがわからんと言うのが結論なん? フレイ?」
射抜くような瞳でルイカがフレイを見つめた。
フレイは赤い巻物を開いてルイカに説明した。
「ご安心おし。 これは今の教会以前の古地図どす。 んでこっちが今の教会の見取り図どす。教会からこっそり拝借してきたんどすが……ここ。 此処だけ今の地図から消されてるんどす」
フレイが指さしたのは、一見すると何もない土地だった。
「ここに、本来なら何か教会建築があったはずなんどす。 それが今は廃墟になっとるんどす」
「廃墟なら、監禁なんかしようとも思わないんじゃないの?」
アウロトが告げたが、それをフレイが言い直した。
「廃墟やなくて、わざと廃墟ということにしているみたいなんどす。 それに廃墟なら誰もが放っているはずなんどすが、ラムランド司祭が一人で毎日見回りをしているということなんどす」
「それ確実に怪しい奴やん」
「ですよね?」
「ラムランド司祭が怪しいと言うことは分かったわ。 なら明日は直接、ラムランドに話をつけに行くだけや。 フレイ。 あんたもくるんやで」
ルイカがフレイの方をガシッと掴んで告げた。
「ウチもルルカッタはんのことは心配なんどす。 だから一緒に行きます。 それにウチもラムランド司祭に確認したいと思っているんどす」
そう聞くとルイカはニィーと笑顔でフレイに告げた。
「明日こそは、ラムランド司祭に合わせてもらうで!」
「「「おーーー!」」」
そうして夕闇が夜を染め上げ日も変わる時、黒い装束の一行がルイカのいる宿の前に現れた。
「さぁ、ラムランド様のご命令だ。 やるぞ!」
こう告げると黒装束の一行は宿の屋上から宿に潜入した。
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