厄災 その1
ルルカッタ達しか居ない時に話す話し方とラムランドがいる時にフレイの話し方が変わっているのは、内向きの話し方と対外的な話し方(巫女語)が違う為です。
意を決してルルカッタは告げた。
その言葉に最初に反応したのはルイカとフレイだった。
「「この病気のこと、知っとんの?(知ってはるんですか?)」」
「……はい」
「ふむ…君は、この小瓶の中身について心当たりがあるということなんだね?」
「………はい」
ルルカッタは俯き加減で小さく答えた。
「では、君の見解を聞こうか? えっと……」
「ルルカッタ・ヨル・ヴィスタです」
ラムランド司祭にルルカッタは名を告げた。
そして、語られたのは驚くべき内容だった。
「この小瓶には、おそらく微細な魔法生物が封入されているはずです」
「「「微細な魔法生物?」」」
フレイとルイカとラムランドが同じ顔で声を上げた。
そんな三人の様子を見ながらルルカッタは話を続けた。
「はい。目には見えない程度の極々小さな魔法生物。 簡単に言うと対象の体の中に入り込んでその体を作り替えてしまう魔法生物です」
ルイカとフレイが目を丸くして驚いていた。
だが、ラムランド司祭は小瓶を指差してさらにルルカッタに尋ねた。
「ルルカッタ君。 君はこれについてどこまで詳しく知っている?」
ルルカッタは膝の上に置いていた手を強く握りしめ、唇を強く噛み締めた。
噛み締めた唇から、たらりと一滴の血が流れ落ちた。
そしてルルカッタはさらに答えた。
「この魔法生物には使役魔法と生成魔法と自壊魔法が組み込まれていて、術者の魔法設計通りに自動で動くし、設計にあった魔法物質を生成して事が済めば自壊魔法で消滅するようにできているのです。 この小瓶にあるのはおそらく自壊魔法がうまく作用しなかった物だと思います」
「……君は、これについてかなり良く知っているようだね? ならばこれを作った者についても知っているのではないか?」
ラムランド司祭が射抜くような細めの鋭い眼光でルルカッタを見つめた。
ルルカッタは口が乾くのを感じた。
そして意を決して作成者について告げた。
「……これを作ったのは……」
「「これを作ったのは?」」
ルイカとフレイがルルカッタを見つめた。
場の空気がピリピリとして、少し静寂の時が流れた。
「……僕です……」
ルルカッタが告げた直後、ラムランド司祭が片手を上げた。
すると僧兵が部屋に流れこみ、ルルカッタに向けて金剛棒を構えた。
ルルカッタは抵抗する事なく頭を垂れているだけだった。
「君には、もっと詳しく聞かないといけないみたいだね。 牢に連れて行け」
「「「はっ!」」」
ルルカッタは抵抗する素振りもなく僧兵に縄で締められると連れ出された。
そしてあまりの展開にルイカとフレイが固まっていた。
「君も、ルルカッタ君の仲間だったよね? このことは知っていたのかな?」
ラムランドが鋭い目つきで塁形を見つめた。
「えっ? いやちゃうし、というかこれを作ったのがあいつって知らんかったし。 というかあいつがこれを作ったってどう言うこと? あいつは私たちと一緒にヴィスタ帝国、機人国を経てここに来たんやで? ここに先に来ることなんかできへんはずやで?」
ルイカが口早に捲し立てるようにラムランド司祭にここに至った経緯を告げた。
「司祭様、彼は私を助けてくれました。 そんな彼がこのような事を引き起こすなんて考えられません」
ラムランドは少し考えて、ルイカの方を見つめて告げた。
「その辺りの経緯も詳しく知りたいね。 君たちはこの竜都に宿をとってあげるから待機してくれないかな? フレイ、この方達の宿を手配してあげなさい」
「はい。 かしこまりました」
ラムランド司祭はフレイに命じて宿を急遽用意させた。
提供された宿は、中級クラスの宿だった。
提示された一泊の料金は銀貨二枚。
フレイは机の上を指でなぞってフッと息を吹きかけた。
そして徐に交渉を始めた。
「銀貨二枚? それはそれは、いやぁええお宿なんどすなぁ? うちの目が悪かったんどすな?」
中に埃が舞った。
「いやそれは!」
「それにラムランド様のご紹介ですえ?」
「ぬっ…なら銀貨1枚半」
「いやいや、それはそれは破格やわなぁ? それでええんどす? うちは巫女どすえ?」
「くっ! なら銀貨一枚で!!」
「おおきになぁ」
満面の笑みのフレイが宿屋の主人相手に宿賃の値下げ交渉をしていた。
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