災禍の街 その32
いよいよ竜人編が動きます。
「私が司祭のラムランド・カグラと申します。 この度はフレイ・カグラを保護してこちらまでお連れいただいたと聞いております。 誠にありがとうございました」
白装束の竜人はルルカッタ達に、にこやかな笑顔で話しかけ、フレイと一緒に軽く頭を垂れて感謝の意を示した。
「ルルカッタ様、ルイカ様、みなさまありがとうございました。」
フレイもラムランドに促されると軽く頭を垂れた。
先程までのピリピリとした空気は一変し、穏やかな場と変わった。
そしてフレイがラムランドに語り始めたのは、街で起きた出来事だった。
神妙な面持ちで真剣にフレイの話を聞いていたラムランドは、フレイに尋ねた。
「ふむ。 その原因不明の奇病だが……生存者はフレイ、貴女だけということだね」
「はい…私だけで……」
「そうか……では司祭は君にこの情報だけを伝えるように言っていたかな?」
全てを見透かすような紅い瞳でラムランドはフレイを見つめた。
フレイは、片手を宙に掲げて魔法を唱えた。
「異空間収納」
フレイの手を中心にして黄色い魔法力で描かれた魔法陣が現れた。
そして魔法陣は光り輝きフレイの手元に小さな小瓶を出現させた。
「フレイ、これは?」
「最高司祭様、これが我が司祭様から託された物です」
「やはりか…君の街の司祭は僕の古い友人でね。 なかなかのやり手だったんだよ。 そんな彼が確たる証拠の品を君に持たせないわけがないと思っていてが……これは……」
ラムランドは小瓶を手に取り中身を見た。
見た目は白い液体が入っているだけにルイカからは見えた。
だがラムランドは驚きの表情で小瓶を机に戻し告げた。
「これは、君の街で最初に倒れた竜人の体液から採取したものだね。 この小瓶の中で、なかなか厳重な魔法で封印されているよ。 小瓶には耐衝撃、耐熱、耐寒、の付加はもちろんだが、何より液状に状態変化するように魔法を重ねがけしている。 これは相当な技量が必要だ。こんなことができるのはあの司祭しかできないだろうね」
ラムランドは、小瓶を見つめながらかけられている魔法をフレイに告げた。
「さすがです。最高司祭様。 これは我が司祭、ムライ・カグラが亡くなる前に私に託したものです。 それとこの聖痕を書き写した物を最高司祭様にお渡しするように言われています」
「ほう……では、早速伺いましょうか……ところでこの聖痕はどこで見つけたか司祭は言っていましたか?」
「最初の竜人が亡くなった際に…とおっしゃっていました。 場所は竜人の背中に現れた痕を書き写した物です」
司祭により赤いインクで描かれたそれは十字架のように見えた。
「亡くなった竜人はなぜか背中にその字を発現しています」
「そうか…とても自然界の物で亡くなったとは思えないね……」
ラムランドはフレイと共に模写された聖痕を見つめた。
そんな二人を尻目にルルカッタは机の上を見つめた。
ルルカッタは厳重に封印された小瓶を見つめて何かを思い出したかのような表情になった。
そしてルルカッタは恐る恐る声を発した。
「フレイ……それは、まさか……」
ルルカッタが驚愕の眼差しでフレイの持つガラス瓶を見つめた。
そしてルルカッタは意を決してフレイに告げた。
「僕は…この病気の原因を知っています……」
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