ダンジョン攻略 その9
そろそろ一回登場人物をまとめてみたいと思います。
「グウウウゥ!」
ルルカッタの身体は変化した。
「うぅいたい。でも何とか……」
変化に耐えるかのように跪き体を震わせた。
「キシャァ?」
首が二つある猫によく似た魔物は目の前の敵の変化に思わず躊躇し距離を取った。
その間にルルカッタは変化した。
髪が肩まで伸び首を動かすたびに遅れて細い銀髪が揺れ動いた。
顔には幼さが残っていた、そして髪が伸びた。
その顔は美少女と見間違うばかりに変化していた。
そして身長がのび細い体つきになっていた。
「うん。これは…すごいです」
その変化と魔力の増大が彼に精神的高揚をもたらした。
簡単に言うと万能感を感じていた。
「いくらでも魔法力が溢れてきます。これなら、あの魔物を倒せます」
ルルカッタは手を見つめ、その力を意識した。
溢れる魔法力で手が輝いて見えた。
「では行きます! 」
ルルカッタは声を出し、魔物に向かって右腕をかざし、詠唱えた。
「”雷撃” 」
―――ズガァァン!―――
そう告げると魔法陣から絶大な雷が魔物の前に出現した。
そしてその雷に貫かれる魔物
―――バギィィ!―――
「フギャァァ! 」
黒煙を上げ、黒焦げになったダブルヘッド。
もう一体のダブルヘッドが戦慄のまなざしで見ていた。
「フウゥーーーー!! 」
シッポをピーーンと揚げ全力で威嚇するダブルヘッド。
その目は、明らかな敵意を持ちルルカッタを見つめていた。
静寂の時が数秒流れた、突如ダブルヘッドは背を向け逃走した。
「はぁ…よかったです…」
ルルカッタは思わず脱力し地面に座り込んだ。
膝を内に向けた女の子座りであった。
窮地を脱したことを理解したルルカッタは呟いた。
「危ないところでした…」
緊張が取れたルルカッタはすこし涙目であった。
そしてルルカッタは腰を上げ、黒焦げになったダブルヘッドから結晶石を取り出した。
琥珀色のそれが、自らが倒した敵の物であると思いすこし目をそらした。
「ぼく、本当は猫型の魔物すきなんですよね…でも、あんな敵意を向けられたのは初めてでした…」
ルルカッタは猫型の魔物が実は好きだった。
襲われなければできるだけ倒したくないと思っていた。
「でも倒さないと僕が死んでしまいます……」
そう相手に懺悔をし手を合わせたルルカッタ。
それは優しい心を持っていた彼本来の姿であった。
その時、ルルカッタの足元で黒い粒子が絡みついた。
「これは、魔法の――― 」
黒い魔力を秘めた粒子がルルカッタを包むと彼ごとその場所から消した。
―――キィィン――――
光が消え目を開けたルルカッタは思わず目を見開いた。
―――ヒュゥゥ―――
そこは草原の真ん中であった。
「そんな!さっきまでダンジョンにいたはずなのに! 」
そしてルルカッタは、考え込んだ。
「……ありえない! 城にある遺跡でもないと…召喚でこんな少しの時間で転移なんて…それこそ神でもないと……」
考え込んで頭を抱えたルルカッタ。
―――ヒュン!―――ビィィン!―――
ルルカッタは突如飛来した物をみた。
頭の隣には矢が刺さっていた
「いたぞぉ! あそこだ! アビス様の子供だ! 早く捕まえ保護しろぉ! 」
そう叫びながら近づく獣人の集団。
胸部には薄いメタルプレートを付けていた。
「えぇぇ!!」
ルルカッタは叫んだ。
それは、騎士であることを証明する紋章が刻印されたメタルプレートだった。
周囲を囲まれ、近づいてきた獣人たちにいきなり組み伏せられたルルカッタ。
「えええぇぇ!なんでぇぇl!」
ルルカッタは叫んだ。
「貴女様は本当に手を煩わしてくれる! いいですか、あなたは魔人族の姫なのですよ! しかも六王の御一人アビス様のご息女だ! その責務をどう思っておいでか!! 」
青い毛色の獣人は怒り心頭だ。
その目は赤く輝いており恐怖すら感じる。
「いや、ぼくは!」
「問答無用ですぞ!!」
「…はい」
組み伏せられたルルカッタの腕を別の赤い毛色の獣人がつかみ、肩に担ぎあげ歩き始めた。
「そもそも、なんでこんな服装を着ておいでか! だから貴女様を見つけるのに苦労しましたぞ! もう少し姫としての責任と義務をですな……」
バタつくルルカッタを無視して勝手には無し始める赤い毛色の獣人。
―――キィ――。
担ぎあげられ、馬車に乗せられたルルカッタ。
いや放り投げられた。
―――ゴチィィン!―――
「いったぁぁいい!」
獣人は扉を閉めた。
―――ガゴン―――
外から閂までする始末である。
確かに見た目は美少女に変化した彼だった。
―――ゴト!ゴト!―――
馬車に乗せられたルルカッタは、自分に起きていることをふりかえった
「はぁ…なんでこんなところに…ダンジョンにいたはずなのに…一体どういうことなんだろ…」
ルルカッタは考えた。しかし転移の魔法が使われた形跡がなかった。
自分がなぜこんな場所にいるのか見当がつかなかった。
しかし獣人の会話から一つわかったことがあった。
「姫と呼ばれている人は、本当にお転婆なんですね……」
「今回はなんとか姫をつかまえられたな…」
青い獣人が笑いながら話した。
「ほんとうによかった。 この前はひと月以上見つからなかったからな」
赤い獣人が笑いながら返した。
「……姫が見つかるまでの間、アビス様は全く使い物にならなかったってヲルフガング様いってたからな」
青い獣人が言うと、灰色の獣人がさらに告げた。
「そうだな、心労であの青い肌がさらに白くなっているのを見た時には思わず同情しちゃったぜぇ あの方の姫様への溺愛ぶりはすさまじいからな」
赤い獣人が言った。
「本当にな!溺愛を知っていてやっている姫様の性悪ぶりはすさまじいよなぁ!たまに怒られている姫の口元をみたらニヤリと笑っていた時があったからな」
獣人が口をそろえた言った。
「「「はぁ…アビス様って……」」」
そう話しながら馬車の前で馬の手綱を握る獣人は談笑していた。
その表情は和やかだった。
「まぁ今回は早く見つけられたし、これで俺たちもヲルフガング様に褒められるな」
赤い獣人が言った。
「あぁ、アビス様がヲルフガング様を頼ってきたくらいだからな。無事に見つけたんだから俺たちも褒められるさ。 それに俺たちの獣人の力を認めた上でのことだしな」
青い獣人が返した。
「「「なんにせよ、無事にみつかってよかった」」」
3人の獣人が口をそろえて笑っていた。
その話がきこえたルルカッタは彼らを優しい瞳で見つめ呟いた。
「うん…僕…違うんですけどね……」
彼らの勘違いがヲルフガングさんの怒りをさらに呼ぶことをルルカッタは悟った。
ルルカッタ思わず優しい瞳で見つめてしまった。
そうして彼らが話していた内容で少しこの場所のことが分かった。
「それにしても六王ですか…それは神話の時代の話だったはず…」
この場所は六王という人たちが統治している世界なんだということ、
「確か魔法学院の禁書に何か書かれてたような覚えあるんだけど…あぁ…どんな内容だったか覚えてないです」
そこでルルカッタは自らの記憶をほじくり返した。
しかし思い出せなかった。
「ここは……本当に一体……どこなんでしょうか…僕、アイコ様の所にかえれるのかなぁ……」
急に心細くなったルルカッタ。
腕に付けている伝達魔法具をみた。
「青く光っているけど…通信はできないみたいですね…はぁ」
魔道具を見た彼は、気持ちを新たにした。
「嘆いていてもしかたないですしね。 何としても僕は貴女の元にもどりますから。 アイコ様、待っていてくださいね」
魔法具にキスをするルルカッタ。
―――パン!パン!―――
自らの腕で不安を吹き飛ばすかのように顔を叩いた。
顔を叩いた両手から音がした。
「よし!まずは情報収集です!」
顔を上げたルルカッタは声を上げた。。
―――ガタン!―――キィ―――
馬車が止まり、閂を解かれ入口が開けられた。
扉が開くと先ほどの赤い毛色の獣人がルルカッタの腕をつかみ上げた。
「もう!こんなことしなくても、自分で歩きますよぉ!」
「だまらっしゃい! なぁんど! それで逃げられたか! もうだまされませんぞ!!」
「……はい」
ルルカッタは肩に担ぎあげられた。
「もう、どうして、こういう風に運ばれるんですかぁ!」
「だまらっしゃい!」
「………はい……」
ルルカッタは思わず声がでた。
先ほど話していた獣人の会話の内容を思い出した。
ルルカッタ仕方ないと思った。
「「「ヲルフガング様! アビス様のご息女、ルイカ様おつれしました! 」」」
元気よく笑顔で話す三人の獣人。
その顔は満面の笑みである。
ルルカッタは心の中で思った。
「うん、ぼく違うけどね」
すると意外な言葉が投げかけられた。
「ばかものぉ! 貴様らの鼻と目は節穴かぁ! そいつは違う! ここにいるのがルイカだ!! 」
ポカーンと口を開けて固まる獣人達。
―――ドサッ!―――
「いたい!」
地面に落とされたルルカッタ。顔上げると大きな獣人の隣にいた魔人族の女性を見た。
そこには自分と同じような顔を持つ少女がいた。
「まぁ!?」
服装はミニスカートのドレスを身に着け、青いきれいな細い足をさらけ出していた。
そして奥から吹く風に肩まで伸びた銀髪が揺れていた。
「貴方たち本当によく働いてくれましたね。 しかし…私を見つけるのは、やはりヲルフガング様でないと無理なのかもしれませんね」
笑顔で言う少女に、さらに口が開く獣人たち。
地面に落ちた状態で顔を上げみているルルカッタ。
そしてルルカッタにむけて姫はいった。
「貴方は……まぁ! 私と同じ顔ですわね! 世界には自分と似た人が3人はいるといいますけど本当なのですね」
手をポンとたたく姫が、ルルカッタを見つめると目を輝かせそう告げた。
「まぁそういいますよね…ところで、一つ質問よろしいですか?」
「ええ。いいですわよ」
「貴女がルイカ様ですか? 」
ルルカッタは目の前の少女に聞いた。
「はい。私が六王が一柱アビスの娘、ルイカ・ヨル・ヴィスタです」
確かに見た目幼いが青い肌と角が魔人族である証であった。
「ヴィスタ!?」
ルルカッタは声を上げた。
「はい。ところで貴方は?」
目の前の少女はルルカッタに向けて視線をずらすことなく、名を聞いた。
「ぼくは…ルルカッタ・ヨル・ヴィスタです」
素直に自分のこと告げたルルカッタ。
「ヴィスタ?」
「はい」
ルルカッタを見つめたルイカは、笑顔で固まった。
大きな獣人が口を開いた。
「かかかっ!アビスに隠し子がいたとはなぁ!」
獣人が大きな声で笑い飛ばした。
姫がギギギと首を動かしてヲルフガングをみた。
「ちょっ!ヲルフガングさまぁ!?」
カラカラと豪快に笑うヲルフガングの首を掴み揺らしながら姫は叫んだ!
「ちっちょとどういうことですのぉ!隠し子って!隠しごってぇぇぇ!」
ヲルフガングの首をガクガク振りながらルイカは叫んだ。
ヲルフガングが口を開いた。
「ま!まて!ルイカ!!冗談だ!冗談!!」
そしてヲルフガングの首を手放したルイカはルルカッタを掴み上げた。
「貴方! ヴィスタなのですか!? ほんとうですよね!? そうだわ! 貴方、私の父上様と会いなさい!! いいですわよね!? ヲルフガングさまぁぁぁ!!」
そう叫んだルイカは、覇気の迫る瞳でヲルフガングを見た。
ヲルフガングは頭をかきながら言葉を述べた。
「まぁ…ルイカがいいならいいんじゃないか? 奴も別に嫌な顔はしないだろうよ」
ヲルフガングはその毛むくじゃらの顔で口を豪快に開き、笑いながら告げた。
狼のような耳とシッポを持ち筋肉質な体と大柄な体格からは陽気な笑い声が響いた。
「そうと決まれば! 貴方!! ちょっとこっちにいらっしゃい!!」
ルイカに手を引かれルルカッタは外に向かって歩きはじめた。
天蓋から出るとそこは大きな町の中であった。
いつも読んでくださりありがとうございます。
感想、ご意見、誤字脱字があれば報告お待ちしています。
新たな六王ヲルフガングでました。
あとアビスさんの子供もできてきました。
護送してくれた獣人達もそのうちどこかに出てきます。
次回更新は月曜日20時までに行いたいと思います。