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災禍の街 その27

ボス線後編です。

 愛子はアヴァリーティアを構え迫り来るミノタウロスを瞬きせず見つめた。

 そして一つの考えを思いつき行動を開始した。


圧縮バアル!」


 ミノタウロスは突如、浮遊感に襲われた。

 それもその筈、愛子はミノタウロスの突進ルートにある地面を重力魔法で削り取ったのだ。

 

「ははは。 地面を陥没させたくらいでこの突進が止まるとでも思うのかい? 甘いよ」


 ミノタウロスは不気味な声を出しながら、勢いのままに宙を蹴りさらに加速した。

 

「甘いのはどちらかしら?」


 愛子は義足の噴射口スラスターを展開した。

 そして紫色に輝く魔法力マナの光を纏い宙を駆けた。 


「これをくらっても立っていられるかしら!」


 愛子がミノタウロスの頭上で急反転した。

 そして飛び立った威力をそのままにミノタウロスに鮮烈な一撃を繰り出した。


闇脚ゲルド!」


「飛んだところで……がぁぁ!!」


 愛子はスラスターの勢いをそのままに、ミノタウロスの頸部をピンポイントで狙って回し蹴りを打ちこんだ

 思わず、苦悶の声をあげるミノタウロス。

 それを構わず、愛子はさらに蓮撃を加えた。


「喰らえアヴァリーティア! はぁ! ’桜舞フェアリー’」


 アヴァリーティアの真言マントラを叫んだ直後、刀身が紫色に輝いた。

 魔法力マナを行き渡らせた魔剣を手に愛子はロイエルから師事を得ている剣技を用いて斬りつけた。

 ミノタウロスの頸部に向けて縦一文字の鋭い斬撃が斬り放たれた。


ーーーギィィンーーー


 「くっ硬い! 浅かったか!!」


 ミノタウロスの首の皮膚と肉は裂けることはできたがミノタウロスの太い首骨にアヴァリーティアの斬撃は防がれた。


「はーはー! あぶなかったぁ! ここまでだねぇ 検体テスター


 首筋から赤い血を流しながらミノタウロスが叫んだ。

 首の骨にはアヴァリーティアを握りしめた愛子が。


「くっ! 抜けない!」


 アヴァリーティアがミノタウロスの骨にぎっちり挟み込まれていた。

 ミノタウロスは首を強くふり始めた!

 ーまずい! このままでは振り落とされる!ー愛は心の中で焦っていた

 その時!


「主人! これを使ってくれ! きっと主人なら使えるはずだ!! 大丈夫だ!!」


 クレイが星剣ソレスタを愛子に向けて投げた。

 それはクレイの確信。

 愛子は片手で星剣ソレスタを受け取り真言マントラを叫んだ!


「輝け! 星剣ソレスト!」


ーーーヴォォォンーーー


 クレイが持つ時の星剣ソレストの輝きよりもさらに強く光り輝いた刀身が具現化した。

 ーこれなら!ー 愛子は心で思った。


「ヲルフガング流刀剣術奥義!  ’向日葵サン’」


 愛子はアヴァリーティアの柄をを強く握りしめ、左手で持つ星剣ソレスタをアヴァリーティアの上から必殺の意思と共に振り下ろした。

 奥義の発動直後、アヴァリーティアも真紫の魔法力マナに染まり光り輝いた。


ーーーギィィンーー


「バッ………」


 そして振り下ろされた星剣ソレスタの威力もアヴァリーティアに重なりミノタウロスの首の骨を断ち切った。


ーーーズドォォンーーー


 落ちた牛頭が地面を揺らした。

 愛子は地面に着地すると、星剣ソレスタをクレイに投げ渡し叫んだ!


「トゥエルブ、ロイエル、ミッタマイヤ! 魔物グラマナスの骨も残さず消滅させるわよ!」


「「「おう(ですわ)!」」」


 愛子はアヴァリーティアを持ち替えて右手をかざした。

 ロイエルはミッタマイヤと共に高く飛び上がった。

 トゥエルブは破損していない肩のアーマーを展開し大口径レンズを露出させた。


臨界圧縮テラドバアル


「「ヲルフガング流 ’光脚’」」


閃光共振破ファングレイ


 愛子が極大の圧縮魔法をミノタウロスの切り離された頭に向けて放った。

 歪な音を立てて、斬り離された頭は黒い点となり消滅した。


 同時にロイエルとミッタマイヤがドームの天井付近まで飛び上がった。

 二人の足が赤と青の魔法力マナに包まれた。

 そして鋭い蹴りをミノタウロスの胴体に向けて放った。

 ミノタウロスの右胸にある赤い結晶が音を立て砕け散った。


 そしてトゥエルブの極大の光線がミノタウロスの体に放たれ消滅させた。


「……やった!」


 愛子がミノタウロスが消滅したことを確認した。

 そしてそれと同時にドームの真ん中に赤い魔法陣が描かれ中から黒い棺が現れた。


「あれは、もしかして精霊が納められているやつ?」


 黒い棺を愛子が開けると精霊イセと同じように両耳、両目を呪詛を描かれた布で覆われた女性が居た。


「やっぱり! すぐに出すわ」


ーーービリビリィーーー


 愛子が呪詛の描かれた布を強く引き剥がした。

 すると黒い肌の女性は目を見開き、周囲を見渡し愛子に問いかけた。


「……あの化け物は?」


 

 

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