災禍の街 その21
執筆が遅くなり申し訳ないです。
ーーーパチィンーーー
「ぐっ! なんだ急に体が重くなったぞ…」
レイジィが顔を歪まして苦しそうに告げた。
グラマナス・エンヴィが左手の指を鳴らした直後、ドーム内の空気が変わった。
まるで密度の濃い中にいるような気だるさを愛子達は感じた。
「呪魔法だよ。 体が重いだろぉ?」
ニンマリと歪な笑顔でグラマナス・エンヴィが告げた。
「この魔法はねぇ、はるか昔は邪の魔法として忌み嫌われていたんだよ。 でも僕はこの魔法が大好きでねぇ」
愛子が動こうと体に力を入れるが、すぐに力が抜けていく様で足に力が入らなくなっていた。
そして愛子が地面にへたり込むと、グラマナス・エンヴィがどこからか現存させた短刀を愛子の頬に当てた。
ヒヤリとした冷たい鉄の感触を愛子は感じた。
「こうして動けない獲物を好きなだけさせるからねぇ!!」
グラマナス・エンヴィは歪な笑い顔で大きな声で叫び、左手に持つ短刀を大きく振りかざすと一点の躊躇もなく愛子の眉間に向けて振り下ろした。
愛子は振り下ろされる短刀を見つめながら小さく呟いた。
「……絶体」
愛子の体が瞬時に紫色の魔法力で包まれ、直後グラマナスの振り下ろされた狂気の短刀が愛子の眉間に到達した。
ーーーガギィィィンーーー
「………はっ?」
グラマナス・エンヴィの持つ短刀はまっすぐに愛子に振り下ろされた。
冷たい刃が肉に食い込む感触を指に感じ、愛子の無様な悲鳴が響き渡るはずだとグラマナスは思っていた。
しかし彼が感じたのは肉体が発する音とは思えない硬質な金属がぶつかる様な音と硬い硬い鋼鉄 鉄を打ちつけた感触だった。
驚き、間抜けな声を上げたグラマナス・エンヴィを冷たい瞳で愛子は見つめた。
「あまり舐めないでもらえるかしら? これくらいの辛さは日を跨ぐ長時間手術で、手洗い担当を交代なく対応した時に経験済みよ! さぁここからは蹂躙タイムだコラァ!!」
「長時間手術? なんだそれ……それに…そんなふらふらの様子で、よくぞ吠えたもんだ……!?」
愛子がふらつく足をアヴァリーティアで支えながら立ち上がるとグラマナスを指差し叫んだ。
グラマナスがそんな様子の愛子を嘲笑うかのようにケラケラ笑った直後、愛子の体が紫色の魔法力に包まれると愛子は魔法を唱えた。
「臨界圧縮!!」
愛子の指先に紫色の魔法陣が描かれると、必殺の魔法が明確な殺意を持ってグラマナスに襲いかかった。
「なっ!!」
ーーーグシャ!!ーーー
驚きの声を上げたグラマナスの体が空間に浮かぶ黒い点に吸い込まれるように小さく小さく肉を、骨を潰す様な生々しい圧壊音を立てて潰された。
「倒したのか?」
クレイとトゥエルブは体に感じた圧力が消え去ったのを感じると立ち上がった。
愛子は、そんな二人の様子を確認すると十字架のもとに走り寄った。
「ゼロ!、ゼロ!? 大丈夫?」
「……うあぁ?」
「っ! 酷い。 片目が抉られている!」
「……お父様…お母様…どうして……どうして私を捨てたのですか……?」
十字架から愛子がゼロ・カグラを下ろし確認した彼女の体の様子はあまりにも酷いものであった。
左目はえぐられ、四肢は砕かれ、自ら立ち上がることもできない程に彼女の体は傷つき、意識は朦朧としていた。
折れた片手を何もない空中に持ち上げるゼロ。
その手は空中にある何かを掴もうと必死だった。
「……大丈夫……大丈夫よ。 私があなたを死なせないわ」
そんなゼロの手を握り愛子は優しげな声色でゼロに語りかけた。
「……おかぁさま……私……」
ゼロが顔を愛子に向け朦朧とした意識の中、ぼんやりとした目で愛子を見つめると……ゼロは意識を落とした。
「! ゼロ!?」
愛子はすぐに脈を生命兆候を確認した。
ゼロはスゥスゥと僅かな息を立てていた。
そんなゼロの様子を見て愛子は右手を握りしめ、強く強く想い念じた。
指先が手のひらに食い込むと、ぽたりぽたりと滴り落ちる赤い血が地面に紅点を描いていた。
それでも愛子は願い、口から言葉が溢れた。
「私に彼女を癒す力が、治療できる力あれば……力が欲しい。 破壊する力だけじゃなくて癒す力……私の手の中で命が失われることが無い様に! 人として! 看護師として!!」
右手が魔法力が包まれると今までに感じたことのない感覚を愛子は感じた。
直後、愛子の頭に魔法名が響くと、首から下げていたステータスプレートに新たな魔法が書かれていた。
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