災禍の街 その9
「野宿か…だがここで野宿となると安全な場所を探す必要があるな?」
ロイエルとミッタマイヤが腕を組みながら顔を見合わせて告げた。
「この休憩所ではダメなの?」
「駄目だ。 実は日が暮れたあたりから、我らの動きを見張る者の気配を感じるのだ」
「そんな気配なんて私は分からなかったんだけど……」
「それは私たちが獣人だからだよ。 ねぇロイエル様?」
「うむ。 我らは鼻が効くのでな」
愛子がロイエルとミッタマイヤに尋ねるとロイエルが顔を横に振って即答した。
そしてアンジュルムがロイエルの言葉を補うように愛子に伝えた。
ただしロイエルの体にアンジュルムが腕を絡ましてロイエル見上げる姿は完全に恋人同士の雰囲気だったが。
「特にアイコ殿とレイジィ殿、ケイト、トゥエルブ・マキナ殿、レイン殿、アウロト殿、アンジュルム殿、ロシル殿、グラミス殿……まるで女性を追うような感じだ」
アンジュルムの言葉を補うようにミッタマイヤが今の看護団が置かれている状況を伝えた。
「それは気持ち悪いです」
「だからか、何かねっとりとした視線を感じるのは」
「そういえばさっきからアウロトが仕切りに周りを見渡していましたね」
レイン、グラミス、ロシルが体を寄せ合い周囲を見渡した。
しかし周りには暗い夕闇があるだけで、何者かの気配を感じることはできなかった。
「それで、私達を監視してる者はどれくらい居ますの?」
「そうだな、この気配の感じ方からはおそらく小集団……五十名弱と言った感じか」
トゥエルブ・マキナの問いかけにロイエルが答えた。
「それなら先手必勝! 索敵&殲滅よ!」
「なら、私が見てこようか? アイコさん?」
アンジュルムがロイエルから離れて愛子に告げた。
「ありがたいわ! アンジュルムよろしく頼むね」
「了解、アイコさん」
そう告げるとアンジュルムは音もなく夕闇の中に消えた。
アンジュルムが飛び出した後、愛子とロイエルは言葉を交わした。
「ねぇ、ロイエル? アンジュルムって何者なの?」
「うむ…ただの獣人にしては動きがな…おそらく元冒険者なのでは?」
「その辺、確認しておいてよね? 彼氏ならね」
「まぁ…おいおいな」
愛子はロイエルにアンジュルムのことを聞くが答えを羽生らかされた。
そんなことを知らないアンジュルムはソウルスキル’探索師’の固有魔法、フレグランストレースを用いて野党の集団を見つけた。
そして気配を殺して近づくアンジュルムの先には野盗の集団が居た。
「テメェら! 今回は女を取ってくるんだ! 大勢な!! なんせ前にうちにいた女はテメェらが遊びまくるから壊れちまったんでな」
「ボス! 仕方ねぇですよ。 女はボス一人しかいねぇんですから、ボスが相手してくれるなら別なんですが……」
そう軽くちを叩いた男の頭部が言葉を発する前に断ち切られていた。
「おおぉ? 俺に女とか言いやがったテメェは生きる価値ねぇ。 地獄で女相手にしていろってんだ!」
「んでボス? どうするんで?」
「問題ねぇ、いつもの通りだ。 男は殺す、女は捕まえて売り飛ばす。 金品は奪うそれだけだ」
黒い布を纏っている小柄の女がボスと呼ばれていた。
そして周囲には同じような装束を男だちがいた。
「もし男が抵抗したらどうするんで?」
小柄な女の近くにいる男が尋ねると、女は事もなしに答えた。
「あの道の休憩所にいるのなら……あそこの下層に落としてしまえばいい」
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