災禍の街 その6
目を覚ました幼い女の子は周囲を警戒するように身を縮めていた。
「大丈夫よ。 あなたは私たちが通る道に倒れていたの」
「そう…ですか……それは介抱していただきありがたく存じまする」
愛子が倒れていたことを告げると女の子は正座をして頭を愛子達に下げた。
「ところで…わっちの他にも女性は倒れておりませんでしたか?」
「……ええ。 ひとり竜人の女性が倒れていたわ。 その方はもう手遅れで……」
愛子が事実を告げると、女の子の瞳からポロポロと涙がこぼれ落ちた。
口元に手を添えて声にならない声が愛子達に聞こえた。
「……そうでありんしたか……その…女性の遺骸はどちら…に?」
「そのままには出来ないから、一応、街道の端に穴を掘って、氷の魔法で遺体を凍らして埋めておいたわ。 そのままなら魔獣に食べられてしまうかもしれないから……」
「……そうでありんすか。 では後ほど埋められた場所をお教えくだされ。 我が竜人の伝統的な葬儀を行なって……来世に送り出したいと思っておりますゆえ」
女の子はこぼれ落ちる涙を拭き取り、愛子を見つめてはっきりとした口調で告げた。
「わかったわ。 ところであなたのお名前は?」
「わっちとしたことが、失礼でありんした。 わっちの名は、フレイ・カグラ。 竜人国の巫女を務めているもんでありんす」
「フレイ・カグラちゃんね。 んっ? カグラってことは……」
愛子が名前を聞いて、何かを思い出したような表情でいるとルルカッタが隣から小さな声で尋ねた
「アイコ様。 もしかして竜王レイ・カグラ様の子孫では?」
「そうね。 可能性はあるわよね? ねぇフレイちゃん、少し聞いてもいいかな? あなたの御先祖さまにレイ・カグラって人は居た?」
フレイは首を横に振って答えた。
「レイ・カグラ様は我が竜人国を建国した女王陛下ですえ。 私はそんな御方と親戚関係ではないんす」
「えっ? だって苗字にカグラって……」
不思議そうな表情でフレイが愛子達に答えた。
「? 何を言っているんすえ? 竜人国の竜都で生まれた竜人は皆、性をカグラと名乗るもんですえ?」
「「「「「「えええぇぇぇぇ!!」」」」」」
屋敷に愛子達の大きな声が響いた。
目をパチクリさせている愛子達を尻目にフレイは尋ねた。
「ところで…皆様方はどちらにいかれるでありんすか?」
「私たちは、その竜都に向かうところだったの……」
「! そうでありんしたか! でわ、お願いがありんす。 わっちも一緒にカグラに御同伴させてもらえんでしょうか?」
「ええ。いいわよ。 フレイちゃんをこのままには出来ないしね」
「辱く存じます。 わっちには最高司祭様に伝えないといけないことがありんすゆえ」
フレイは小さくつぶやいた。
「……南の街が滅んだことを……」
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