新たな決意 その3
機人国編はこれで終わりです。
明日からは第四章 竜人国編がスタートします。
ーーードドドドッーーー
聞き覚えのある声が砂埃を立ながら愛子に近づいてきた。
「ちょっと! アイコさん! 私に声をかけないと言うのは失礼じゃありませんの?」
「えっ!? トゥエルブ・マキナ!! なんでここにいるの!? 国は!? だって、あなた女王になったんでしょぉ!?」
「確かに私は、この国の女王ですわよ? でも冷静に考えてくださいましね? ぽっと出の王位継承しただけの女王が、国の為に普段からできる仕事なんてあると本気で思いますの?」
トゥエルブ・マキナは捲し立てながら説明した。
愛子達はその説明を微妙な顔をしながら聞いた。
「でも!? 昨日、即位式したじゃない? それにあの演説! 私が国を引っ張っていきますって涙ながらに誓ってたのは何だったの?」
「あら、アイコさんともあろう人があれを真に受けますの!? アレは国民を安心させるための甘言。 つまり国民に国の運営について責任を明確にするための言葉ですわ! ああいえば皆、納得しますのよ?」
「黒い! この女王、腹の中は真っ黒だわ!!」
「なんとでも言ってくださいまし。 私には、この国の女王よりも優先してやるべきことが出来ましたので!」
そう告げるとトゥエルブ・マキナは魔法銃を掲げて愛子達に告げた。
「私はこの銃に誓いますわ。 必ず、私の手で叔母上様と母様の仇を取ると」
トゥエルブ・マキナが掲げた魔法銃はエクス・マキナが使っていた魔法銃だった。
そして腰にはもう一丁の魔法銃が輝いていた。
意気揚々と話すトゥエルブ・マキナを尻目に愛子は頭を抱えて尋ねた。
「貴女の気持ちはよくわかったわ。 でも国のトップが長期不在というのはいかがなものなのかしら?」
「まぁアイコさんの心配はごもっともですわ。 ですがご安心を! ラプチャアを私の権限で女王代理にしていますので。 地位としては宰相という形ですわ」
胸を張ってトゥエルブ・マキナが答えた。
「それに彼女の統合体は色々便利ですのよ? 私の外観を真似て顕現させることもできますの。 もっともその為に私の体を隅から隅まで全てそれこそ内部機関まで全てチェックさせる必要性があったのですけど……」
少し頬を朱に染めてトゥエルブ・マキナは話し続けた。
「宰相って言っても国の人たちはラプチャアを知らないでしょ? よくそんなことできたわね」
「女王の権威の賜物ですわ。 それに我が機人国は原則女王統治による法治国家ですのよ? 女王が法に則って正式に宰相に任命したら、それを覆せる者は誰もおりませんのよ」
トゥエルブ・マキナはクックックっと黒い笑みを浮かべながら愛子達に話した。
「そっ、そうね。 なら貴女はこれからどうするの? 仇って言っても神人国に戦争を仕掛ける訳にもいかないでしょ?」
「ええ。 戦争は最終手段ですわ。 それに今、あの国と揉めるのは得策ではありませんの。 ですので私はアイコさん。 貴女方と行動を共にしますわ!」
「「「ええーーーーー!!」」
愛子とルルカッタを含めた全員の顔が驚愕の表情となって固まった。
「何を驚いていらっしゃいますの? あの場で次元結晶を守るため戦い、叔母上様を看取った皆様は言うなれば家族も同然ですわ。 なら私も一緒に行動するのが当たり前ですわ」
「どうする? ルルくん……いきなり王族として尊敬する人が来ちゃったけど……」
「アイコ様。 僕、前言撤回します」
ルルカッタは頭を垂れながら深いため息を吐いた。
「まぁええんちゃう? うちも同じ王族やし。 トゥエルブ・マキナの言うこともわからんでもない」
ルイカが落ち込んだルルカッタに代わり愛子に答えた。
「幸いにもエクス・マキナ仕込みの整備師ガインもおるし、トゥエルブ・マキナのボディの整備もなんとかできるやろ?」
「おう! 師匠が俺に教えてくれたこの技術。 アイコさんの義足だけじゃなくてトゥエルブ・マキナ様の整備もしてみせる。 だから安心してくれよ」
ガインが笑顔で拳から親指を立てて笑顔でトゥエルブ・マキナに告げた。
「年の為、言っておきますけど……私の整備と言っても私自身の体の中は触らせませんことよ? 私の武器や機獣をお願いしますけど」
「大丈夫! 痛いことはしないから。 ほんの少しだけだから」
両手の指で揉むような仕草をしながらトゥエルブ・マキナに近づいていくガイン。
「卑猥! 卑猥ですわ! 私の体を弄り回すつもりなんですね」
顔を真っ赤にしながら叫ぶトゥエルブ・マキナ。
「ガインさんが嫌なら無理について来なくていいですよ。トゥエルブ・マキナ様」
ルルカッタが冷静に告げた。
トゥエルブ・マキナへ感じていた王族としての尊敬はどこかに飛んでいったようで、嫌味を言う時の顔は真顔だった。
「行きます! 行きますわよ! さぁでは次の目的地にいきましょう!!」
そう告げるとトゥエルブ・マキナは愛子の手を引っ張りながらバアルの街にある隠された扉を開け地下への階段を降りていくとそこには設置型の転移門があった。
「私たちを土門へ」
「解。土門へ転移します」
愛子が転移門に移動先を唱えるとその場にいた者は全て土門へ転移した。
「六帝門、土門起動します」
硬質な男性の声がナイチンゲールの皆の頭に響いた。
「疑、どちらに行かれますか?」
「私たち総勢28名 冒険者クラン ’看護団’を竜人国の近くへ」
愛子が目的としている場所を告げた。
「解。 では現、竜人国の首都、竜都から3kmの地点にある六帝門、炎門への転移設定を行います。 転移シークエンス開始まで45セクト。 座標設定完了。 転移開始します」
土門結晶が眩しく輝き空間を白く塗りつぶした。
愛子達が次に向かうは炎門。
そして竜人が住まう竜の国だった。
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