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偽りの神 その17

決着!

「その構えは……」


「……これは、私の最愛が教えてくれたものだぞ」


 エクス・マキナは刀剣モードの魔法銃を水平に構えた。

 そしてウィズも同じように水平に構えた。


「なぜ君たちはそれほどまでに、この次元結晶を壊そうとするんだい…依頼だと言ったが…せめて誰の依頼なのかを言うことはできないのかい?」


「……くどい!」


「そうか…君の剣技は私の最愛によく似ている…私は君に次元結晶アレを壊されるわけにはいかない…それに…私は君を助けたい……最愛によく似ている君を……それが私の意思だ」


「……ならば私は、次元結晶アレを壊すことが使命だ」


「決して交わることが無いのなら…この一撃で決めよう」


「……望むところだ!」


 二人は互いに射抜くような瞳で互いの瞳を見つめた。


「決着をつけよう……」


「……では……」


 二人は魔剣を構えた。

 周囲の剣戟や魔法がぶつかり合う音が周囲に響いた。

 しかし二人には音が聞こえることはなかった。

 最初にウィズが動いた。


「エダラ流奥義’氷雪連舞’」


「…剣舞’木葉連舞’」


 ウィズの放つ吹雪くような斬撃をエクス・マキナの風に揺れる木葉のような薙切りが弾いた。

 魔剣と刀剣モードの魔法銃がぶつかるたびに火花が散った。


「……君の剣が泣いているのが伝わるよ……」


「貴女に何がわかる! 貴女みたいに王として生きていく機人ヒトと私のように決められた道を歩む人間ヒト……私は生き方を選ぶことなんてできなかったんだ!」


 剣がぶつかり合うたびに、心が通うように二人は言葉を述べた。


「とても悲しいことだ……」


「だからこそ!依頼は絶対だ! たとえ神聖教義会グズドモの依頼だとしてもだ!!」


自分ミズカラの意思ではないとしても……なのか?」


「これが私の生き様だ!!」


「悲しいね……」


 ウィズの斬撃を切り払いながらエクス・マキナが近づいてきた。

 ウィズの首筋に冷や汗が流れ落ちた。

 そんな二人の間を壊すように全てを破壊する一閃が二人と背後にある次元結晶に向けて放たれた。


極切断ディパニッシャー


 放ったのは大鎌を構えたガルドス・ルルガス。

 ウィズの背後から飛来した全てを切断する斬撃だった。


「危ない!!」


「なにっ!?」


 エクス・マキナは手にした魔剣を手放すとウィズを押し倒した。

 

ーーーザシュッーーー


 飛来した斬撃はエクス・マキナの体を斜めに切り裂いた。


「ふん…仕留め損ねましたか…でもこれで邪魔はなくなりましたわ! 極切断ディパニッシャー


「だめだ! やめろぉぉぉ!!」


「やめてぇぇえ!」


 トゥエルブ・マキナが手を伸ばし叫んだ。

 愛子も魔剣を構えたままガルドスに叫んだ。


ーーーパリィィィンーーー


 ガルドスの斬撃で小さな氷片が飛び散るように次元結晶は砕けた。


「……なぜ私を助けた……?」


「……言っただろ? 君を助けたい…って……最後に教えて欲しい……君にこの依頼をしたの……は誰なんだ……い……?」


 半身に分かれたエクス・マキナが手をウィズの頬にあてて尋ねた。


「……神人国ウィルヘイムの神聖教義会だ……」


「そうか…ウィルの国か……」


 エクス・マキナが次に伝えたのは驚くべきことだった。


「……君たちが壊した次元結晶でおそらく…アイツの封印が緩むだろう…もしも…自らを神と名乗る者が現れたら…その者の言葉を鵜呑みにしないで欲しい…」


「……それは偽りの神だから…」


 エクス・マキナがウィズに答えた。

 そして周りの喧騒がウィズの耳に響いた。


「……逃げなさい」


「なっ! なぜ私に逃げろという!? 私は貴女を切り裂いた者と同じように次元結晶アレを壊しにきたんだぞ!」


「……言っただろ…私は……君を助けたい……って」


 ウィズはエクス・マキナの手を握り頬から離した。


「最後に…贈り物をしておくよ……’真心象アイズ’」


 エクス・マキナはウィズの胸元に手を当てて魔法を唱えた。

 ウィズの胸元に小さな魔法陣が描かれ黄色い魔法力マナがウィズの中に入り込んだ。


「さぁ…生きなさい」


 エクス・マキナを自らの体の上から地面にゆっくりとおろすとウィズは告げた。


「総員! 撤退!!」


「「「「おおおっ!!」」」」



「’黒霧アンリアス’」


 ウィズの言葉が響くと魔法師たちは魔法を唱えた。

 周囲は黒い霧に覆われ音も遮断され、いっ時の静寂が訪れた。

 

「みんな!無事? どこにいるの?」


 愛子は声を上げたが、音が遮られているのか誰の声も届かなかった。

 やがて黒い霧が晴れると、そこには砕けた次元結晶と半身に分かれたエクス・マキナの体が横たわっていた。


「アイコ様! エクス・マキナ様が!!」


「叔母上!!」


 トゥエルブ・マキナの声が響いていた。



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