ダンジョン攻略 その5
すこし残酷な表現あります。
通路を歩く愛子は、突き当りに扉を見つけた。
その扉は大きな鉄で出来ていた。
「これは、もしかして…ボス部屋?」
愛子は、ゆっくりと扉を開けた。
すると大きな槍が愛子の頭上を飛んできて壁にぶつかり刺さった。
衝撃が愛子を襲った。
―――ドガアアアアァァン―――
「おうぅ!ボス部屋だぁここ!」
そして愛子が部屋を見た。
骸骨で出来た鎧に覆われた3メートルくらいのボーンソルジャーがそこにいた。
「うわぁこれ強いやつだよね。ぜったいに!」
骸骨鎧武者の魔物は、素早いスピードで槍引き抜いた。
「ウヴォォォ!」
「うわぁ強そうだぁ!」
この魔物はボーンジェネラルというボーンソルジャーの最上位種である。
攻撃力と残忍さはボーンソルジャーの比ではなかった。
ボーンジェネラルは愛子をその眼下に収めた。
そして槍を放った。
「ちょっと! なにぃいきなりぃ! 」
愛子はそうつぶやくと、ロングウィップを手にした。
その武器はもはや愛子の一部であった。
素早くロングウィップで槍を狙い放った。
―――ギィン―――ドゴ!
ウィップは槍に当たり槍の軌道を反らした
「ギリッ! こんなの勝てるかぁ!」
奥歯を噛み締める愛子。
鎧武者の攻撃で全周囲に轟音が鳴り響き、死の嵐が吹いた。
「逃げるしかないわよ。こんなの」
槍による刺突であるが、そのスピードにより風鳴りと衝撃波が発生していたのだ。
「うわぁ!ぁぁぁぁ!」
槍風は衝撃波となって容赦なく周囲の空を切り裂いた。
魔法もなく、逃げるだけの愛子は走った。
それが、今の愛子にできる精いっぱいの抵抗であった。
―――ヒュンヒュン―――
「はぁはぁ何なのこいつぅ」
「ギアァ! 」
「少しは手加減でもしてよぉ」
愛子は全力で迫りくる暴力から逃げ出した。
「はぁはぁはぁ……ほん……と……きっつ……」
「ギイアギヤガア」
そんな迫りくる暴力と逃避が30分くらい続いていた。
愛子は一つの回復薬を、腰に付けてるウエストポーチから出した。
―――パリィン―――
愛子は手元から回復薬を落とした。
無情にも割れてしまった。
「そんなぁ……はぁはぁ……」
愛子の体力は減る一方であり、言葉を発することも出来なくなった。
体から流れる汗と、呼吸音がこの空間に響いていた。
「このままじゃ、や…やられる…はぁはぁ…」
この状況を打開するための決定打にかける愛子。
ボーンジェネラルの砲撃と見間違うかのような暴威を秘めた攻撃。
愛子の身体はすぐに限界を感じ力がつきてしまいそうだった。
「ガアアアアアアアアア!!! 」
骨鎧の武者の雄たけびが響いた。
その雄たけびで愛子の脚が止まってしまった。
「くっ!しまったぁ…」
立ち止まると途端に、今までの疲労が愛子の全身に襲い掛かった。
砲撃のような暴威と全身の疲労という内側からくる攻撃に愛子は体の限界を感じた。
「……ったく……こんな……しつこいやつ…………ゲームでも……出てきたこと……ない……わ……よ……あっ……だめ……限……界……」
愛子は思わず、自分で限界を声に出してしまった。
声に出したことでより一層、体に蓄積された疲労が愛子を襲った。
膝が震えだした。
ボーンジェネラルが雄たけびを叫び終わると同時に、タイムラグなく槍による刺突術の暴力が愛子に襲い掛かった。
「くっ……そっ……し……つ……こいぃ……」
そして、ついに愛子にその槍の一手が襲い掛かった。
――――グサッ!!
「うっ、ヴァァアアァァァ!! 」
愛子の脚に鋭い痛みが走った。
顔が激痛で歪み、全身からさらに汗が噴き出てきた。
いままで感じたことのない強烈な痛みで気が遠くになりそうだった。
「グウウウガァ! 」
ボーンジェネラルの口元が歪み叫んだ。
その眼窩は明らかに光悦の表情を灯していた。
そうボーンジェネラルの槍が愛子の右足に深々と刺さっていた。
「うぅぅ足がぁぁあしがぁぁぁ!」
そして武者は、槍を引き抜いた。
槍を持ち換えると、口元をニヤァっと歪ました。
「いたいぃいたいぃぃぃぃ!!」
愛子の大腿から血が流れる。
そして武者は愛子の脚に向けて槍を刺し貫いた。
「いっぎゃァアアアアアアアアアア!!!! 」
愛子の叫びがホール全体にこだました。
愛子は全力で叫んでいた。
脚からは血が吹き出した。
そして……
―――ドサッ!
「うぎぃ!!ぎぃヤヤヤアアアアアアアアアアアアアア、いたいぃぃぃイタイィィィィィ!! 」
愛子のさらなる絶叫がホールに響いた。
愛子の健康的でほっそりとした美しい脚が地面に落ちた。
深々と差し込まれた槍により足が切断されたのだ。
「クゲゲゲゲゲゲ!」
ボーンジェネラルは、笑った。
愛子の絶叫と痛みで床をのたうち回る姿をみると大きく口を開きカラカラ笑った。
そして地面に落ち、血まみれになった愛子の足を拾いあげた。
「いやぁイタイぃイタイィヨォォォォォ!! 」
愛子はロングウイップも手放して切断された太ももを触った。
―――あぁ、足がない!! ―――
手にはべっとりと自らの赤い血が付いた。
「あぁあぁぁあああああ!」
愛子は絶叫をまき散らしながら周囲を転げまわった。
まるで駄々をこねる子供のように。
愛子の周囲にはドクドクと流れ出た血が広がり血だまりを作った。
「あぁぁこのままじゃ血が出すぎて死んじゃう!!」
愛子は急に転げまわるのを止めた。
愛子は持ち前の知識でウエストポーチからロープを取り出した。
両手に渾身の力を入れ切断面より少し上の太ももの中心部をロープで力の限り絞めた。
「ぐぅう!!」
大腿にあり下腿を栄養している大腿動脈は、人間の血管の中でも特に太い血管である。
愛子は思った。
―――死んじゃう!死んじゃうよぉ!止血しないと死んじゃう!!―――
愛子は看護師としての知識を総動員して止血を行った。
「ロープを!ねじらなきゃ!血を止めなきゃ!いぃぃいたあぁぁぃいい!」
愛子の知識は救急外来で看護師をしていた時に得たものであった。
現状での一番の解決策は、結紮により止血を行うことであると考えると愛子は冷静に対処した。
元の世界で看護師という職業病として身についたものであった。
―――すぐに止血しないと、すぐに出血多量で死んでしまう―――
愛子は冷静かつ迅速にロープで止血を行ったのである。
結び目に棒を突っ込みさらに増し締めを行うという徹底ぶりである。
「ぐぅういたいぃぃ」
愛子の脚を切断された痛みはよりひどく愛子を襲った。
心には、動揺がひろがっていた。
「ううぅ、いたいよぉ……」
その様子を足を拾い上げた武者は、ニヤニヤした顔つきで見ていた。
右手に槍を左手に愛子の切断された脚をまるで戦利品を愛子に見せつけるように持ちながら愛子に見せつけて行動した。
「うぅ!うっ…うそ………うそでしょぉぉぉぉ!」
愛子の足をかじり貪り付いた。
そしてゆっくりと愛子の方に近づいてきた。
一歩一歩確実に死が愛子に迫ってきた。
―――ガシャガシャ―――
―――ガシャガシャ―――
鎧を鳴らしボーンジェネラルが近づく。
「逃げなきゃ逃げなきゃ…」
愛子は思わず体がビクつきながら後ろに後ずさりした。
手と唇は震え恐怖と痛みで体が震え始めていた為、うまく後ろに下がることができなかった。
容赦ない視線による暴力が愛子に突き刺さる。
その視線は捕食者ではなく、新しいおもちゃを見た子供のそれに近い、無邪気に遊びを楽しむような視線であった。
そんな視線をあびた愛子の顔が引きつる。
―――チョロチョロチョロ―――
「うぅ逃げなきゃにげなきゃ…」
愛子から水音が聞こえた。正確には愛子の座り込んでいるそこからである。
しかしそれに気を取られている時間はない。
―――ガシャ―――
後ずさりする愛子、ゆっくり近づく骨鎧のボーンジェネラル。
その鬼ごっこは唐突に終わりを告げた。
―――ガンッ!―――
愛子はホールの壁にぶつかった。
そしてボーンジェネラルは、愛子の前に立ち舐めるような視線で愛子をみた。
愛子の目には、ボーンジェネラルが持つ自分の脚が写った。
ところどころかじられ、肉が欠損し骨が出てきていた。
ボーンジェネラルの口元には血がこびりついていた。
「ああぁ!」
骨鎧のボーンジェネラルが右腕に持つ槍を振り上げた。
―――殺される!―――
愛子は思った。そして、ボーンジェネラルの右手が槍と共に振り下ろされた。
容赦なき暴力的な激痛が愛子を襲った。
―――グサッ!!―――
「うわあぁぁあぁヴぁあああ」
愛子の左太ももに武者の槍が刺さった。
血が噴き出る太もも、それは赤い噴水のように愛子と鎧武者にかかり全身を染めた。
「イギィィィイタァァイィィィィ!! 」
愛子はさらに絶叫した。
「いだああああぁぁいいぃいい」
二度にわたる激痛により愛子の精神が軋んだのを感じた。
そして襲い掛かる暴力が愛子の心を容赦なく抉り取った。
ニヤニヤしながら見るボーンジェネラルの窪んだ眼窩には明らかな愉悦の表情が見て取れた。
―――グリグリッ―――
「イガァアアアイタァアアイィィ」
ボーンジェネラルはさらに槍を小刻みに震わせ右左と揺らしながら力を入れた。
あたかもおもちゃを壊すことが楽しいとでも言うように。
「イイイイタァアアアアイイイィイイ」
―――ジャキィッ!ガィィィンーーー
そして鎧武者の槍が地面当たる音がした。そして太ももから流れ出す赤い液体……
愛子の左足も切断されたのである。左足もほっそりとしているが健康的で美しい足だった。
刺突という暴力にさらされた愛子の脚はそれを避けることができなかった。
そして容赦のない一撃は愛子の肉体と精神を破壊、蹂躙した
「ウアアアアアアァァ……」
もう愛子の顔は涙とよだれと脂汗でぐちゃぐちゃになっていた。
そしてボーンジェネラルは切断した左足を拾い上げる為に膝をついた。
拾い上げられた足をボーンジェネラルは左手の指で持ち、ぶら下げた。
そして見せつけるように切断された脚を愛子の顔に近づけてきた。
「ウゥゥ……」
愛子は体に力が全く入らなかった。
「いぃぃ」
流れ出る血液だけの性ではない、体力と精神が限界だったのだ。
「し…死んじゃう…死んじゃう」
その状況でも愛子はロープを取り出し左足も右足と同じように止血をした。
「グゲゲゲ!」
ボーンジェネラルは愛子の目の前で左足をかじり始めた。
まるで刈り取った獲物を味わうさまを見せつけるようにゆっくりと食べていった。
「グガガ」
「うううぅや…やめ……てぇ……」
ボーンジェネラルは愛子の服を手持ちの小刀で縦に一線切り裂いた。
豊満ではないが健康的でツンと上向きに育った果実のような愛子の白い乳房がさらけ出された。
「グガゲケケケケ」
その行為は、まるで捕食する為に邪魔なものを捌くように。
「ガァアアアグルウゥ」
愛子をつかみ上げ頭を自らの方に向けたボーンジェネラル。
その眼窩に写るのは両足が血で染まった愛子であった。
ボーンジェネラルは愛子を壁に投げつけた。
―――グシャ!
音を立て、倒れた愛子。
「グガアアァ?」
ボーンジェネラルは立ち上がり、愛子に背を向けると地面に刺さる槍に近づいた。
そして槍を掴むまでの、一瞬の隙。
それが最後の光景となるとは、ボーンジェネラルはその瞬間まで思わなかった。
いつも読んでくださりありがとうございます。
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シリアス編続きます。
残酷で容赦ないシーンが続きますが
愛子がなにかに覚醒するまではこの感じで行きたいと思います。
次回更新は 火曜日20時を目標にします。