偽りの神 その4
ーーーピッーーー
トゥエルブ・マキナが依頼書番号をギルドの受付に告げた。
「私達はこの依頼を受けますわ。 よろしくて?」
「異論はないぞ。主人も良いな?」
「ロイエル様! 私に教えてくれた蓮脚牙の特訓の成果をお見せしますね」
レイジィとアンジュルムが闘志を燃やしていた。
「トゥエルブ・マキナ殿、サンドワームという魔物はどういった魔物なんだ? 我が知っているのは人くらいの大きさでだと覚えているのだが?」
ロイエルはトゥエルブ・マキナに確認した。
トゥエルブ・マキナは頷き、ギルドにある図書室に愛子達を連れていった。
そして部屋にあるコンソールを操作して愛子達の前にあるモニターに写した
「サンドワームはそんな可愛い魔物じゃないです。 この街へのキャラバン隊を襲い、馬車ごとの飲み込む輸送の邪魔をする憎い魔物ですわ」
「馬車ごと飲み込むって言うのは比喩ではなく?」
「ええ。 比喩ではなく本当にそうですわよ。 このモニターに写っている通りの大型魔物になりますの」
愛子達の前にあるモニターには地中から現れたサンドワームが馬車をその巨大な口で飲み込む瞬間を写されていた。
「これだけ大物なら、戦闘訓練の相手として十分だな」
ロイエルが嬉しそうにモニターに写ったサンドワームを見てつぶやいた。
「ところでトゥエルブ、この魔物はいつまでに討伐することになっているの?」
「そうですわね…期限は明日までになっていますわね?」
「ええぇ〜ということは今日中に討伐しないといけないんじゃない!?」
「そういうことですわね」
トゥエルブ・マキナはニッコリと笑って愛子の肩を叩いた。
「さぁ行きますわよ!」
トゥエルブ・マキナに先導され愛子達はバエルの街の入り口やってきた。
愛子達が目にしたのは亜人国に向かう荷を積んだ馬車がバエルの街から出て行く所だった。
「ちょうど荷物を積んだ魔馬車が出るとこですわ。そうだ、少し後をついて行きましょうか? 砂漠を抜けるまで護衛をして差し上げれば良いことですわ」
「えっ! ちょっとそんな都合よくサンドワームが出るとは限らないでしょう?」
「ふふふっご安心を……サンドワームは昼間には砂漠の地表近くに隠れているんですのよ。あれだけ大型の馬車なら間違いなく食い付きますわ」
トゥエルブ・マキナは少し悪い顔で愛子達を見ると小型の魔馬と馬車を借りて、大型の馬車の後ろをついていった。
砂漠の道はある程度の整備がされているが、路面の悪さはすぐにトラブルとなって現れた。
ガタンゴトンと細かな縦揺れや、溜まっていた砂に愛子達の荷馬車の車輪が取られて動かなくなってしまった
ロイエルがまず降りて荷馬車を押してみたが……
「あ〜まったく動かないな……これは…皆で押すしかない」
「ロイエルが押してもダメなら仕方ないわ。ルルくん、ルイカちゃんも手伝ってね」
「はーい。愛子さ……!?」
「愛子、あんた後ろ!!」
「えっなに?」
愛子が後ろを振り向くとそこには、愛子達の馬車の二倍以上はあるサンドワームの胴体があった。
そしてサンドワームはその巨体をふりおろし愛子達の馬車に迫った。
「みんな馬車から降りてぇ!!」
ルルカッタとルイカが荷台から飛び出すと愛子が大声で叫んだ。
その声を合図にレイジィ、トゥエルブ・マキナ、アンジュルムも荷台から飛び出した。
ーーーバギャァーーー
アンジュルムが荷台から飛び出すとほぼ同時にサンドワームの胴体が荷馬車を押し潰し、その口が魔馬に喰らい付き地面に引き込んでいった。
そしてまた地面から巨体が愛子達の前に再度現れた。
荷馬車から飛び出したアンジュルムの顔が少し青ざめていた。
「アンジュルム、大事ないか?」
「ロ…ロイエル様ぁ…怖かったですぅ」
アンジュルムがロイエルに抱きついて腰に手を回していた。
ロイエルの胸元に顔を埋めているアンジュルムの頭をロイエルが優しく撫でて優しくつぶやいた。
「そう怖がらずとも良い。我がいるだろう?」
「ロイエル様ぁ」
キラキラした瞳をしたアンジュルムが、下から見上げるように上目遣いでロイエルを見つめた。
そして、徐々にその唇をロイエルに近づけていった……その時!
「ちょっとそこのバカップル! 状況を考えて状況を!!」
愛子は時と場所も考えずに甘い空間を醸し出しているロイエルとアンジュルムに告げた。
「サンドワームよ。 みんな準備はいい?」
「よくないけどやるしかないやん!」
「主人よ!我の力をみるがよいぞ。輝け!星剣」
レイジィの握る魔剣の柄が光り輝き、反りのある光の刀身が現れた。
そして愛子も魔剣を抜き構えた。
「我が剣技とくとご覧あれ! クレイ流剣技’光刃’」
レイジィが星剣を構えて剣先を横凪にて一線した。
すると星剣の刀身が輝き放たれた光の刃が、サンドワームに襲いかかった。
「では! 私も」
トゥエルブ・マキナが手にした魔法銃の照準をサンドワームに合わせて引き金を引いた。
魔法銃の銃口から青い魔法力が光の弾となってサンドワームに強い光を放ちながら放たれた。
「ギシャアァァァァ」
二人の攻撃は胴体に直撃したが、サンドワームはまるでダメージを受けていなかった。
そしてサンドワームはその巨体を激しく叩きつけ地鳴りを起こした。
「くっ!あれだけ巨体だと流石に聞かないか」
「貴女の剣技に私の魔法銃を上乗せしたのに無傷とは……恐れ入りますわ」
サンドワームはその長い胴体を用いて愛子達の上から押し潰しにかかってきた。
飛び退く愛子達だが、地鳴りが続いているせいで跳躍での脱出が遅れてしまい、愛子は押し潰されそうになった。
「くっ! ちょっとビビったわ」
愛子がキツくサンドワームを睨みつけて体勢を立て直した。
わずかな冷や汗を愛子は感じていた。
「ちょっ…この地鳴りが邪魔や! 仕方ない! うちとルルカッタでアイツを足止めするで!」
「わかりました! ルイカ様」
ルルカッタとルイカは腰に装着していた魔法杖を構えて真言を唱えた。
「歌え!望歌鍵」
「歌え!愛歌鍵」
ルイカには桃色の魔法力が、ルルカッタには青い魔法力がそれぞれの持つ魔法杖からあふれ光の粒子となり全身を覆った。
光が消えた二人の服装は、まるで魔法少女のような色違いのミニワンピのように愛子からは見えた。
二人はサンドワームに向けて杖を構え、魔法を唱えた。
「真滅氷結!」
「極滅氷結龍!」
二人が魔法を称えると杖の先端に魔法陣が描かれ、片や極大の氷塊が無数の槍となり、片や氷で作られた極大の龍が咆哮を上げサンドワームに襲いかかった。
ーーーキィィンーーー
サンドワームの胴体が凍てつく氷に閉ざされた。
そして凍てつく氷の上から氷結龍がさらに襲いかかった。
「今や! 地面にあいつをとどめているうちに!」
ルイカが叫ぶとロイエルとアンジュルムが飛び出した。
勢いよく地面を蹴り飛ばし空中に跳躍したロイエル達はヲルフガング流決闘術の構えをとり、空を蹴りサンドワームまで宙を駆け抜けた。
「行くぞアンジュルム!」
「はいロイエル様!」
「「ヲルフガング流決闘術!蓮脚牙」」
ロイエルとアンジュルムが凍てついたサンドワームの胴体に連続した脚技を繰り出した。
それは高速で放たれる弾丸の如く、凍てついたサンドワームの胴体を削り取った。
「さぁ私たちでフィナーレですわ。 魔法銃刃形態」
「決めるわよ。アヴェリーティア!」
「主人! 任せろ。 星剣」
トゥエルブ・マキナ、愛子、レイジィが地面を蹴り跳躍した。
トゥエルブ・マキナが握る魔法銃が輝き、銃口に緑に輝く刀身が現れた。
それを渾身の力でサンドワームに振り下ろした。
刀身から甲高い音を立てながらサンドワームの身を切り裂いた。
その上から別の角度で愛子の持つ魔剣が輝き、サンドワームの身を縦一文字に切り裂いた。
そしてレイジィが握る星剣が赤く輝くと刀身が炎に包まれた。
そしてサンドワームに袈裟斬りを話その身が切り裂かれたのだった。
サンドワームは三人の剣戟によりその身を焼き斬られただの肉塊への豹変したのだった。
ーーードドォォォンーーー
「よし。これで大丈夫ですわね。 無事に依頼達成ですわ」
トゥエルブ・マキナが笑顔で愛子達に告げた。
そしてトゥエルブ・マキナがサンドワームから結晶石を取り出した。
流石に巨大な魔物であるせいか取り出した結晶石も巨大であった。
そして愛子達はバエルの街に戻っていった。
その頃、機都ではクラン’仮面舞’がある場所に向かっていた。
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