機人国潜入 その10
守護者登場
光に包まれた愛子が現れたのは暗い一室だった。
同じ光に包まれたはずのルルカッタ達はその場所には居なかった。
代わりに愛子の前には水門によく似た結晶があった。
「あれ? ルルクン? ロイエル? ミッタマイヤ? ルイカちゃん? みんなどこ?」
愛子がルルカッタ達を呼んだ時、結晶は形を変えた
「何用ですか、異物よ」
結晶は人型に姿を変えて愛子に尋ねた。
「何用って、私達は機人国に行きたいのだけど、必ずここに寄れってチャームが言うから来ただけよ」
「チャームとは第5世代型統一演算機構のことですか?」
「なんでそれを?」
人型になった結晶は大きく頷くと手に光を纏った。
「ふむ、彼女が貴女をここに寄越したのですね…なるほど、理解しました。ではここが世界に6つある転移の為の施設ということも貴女はご存知ということですね?」
「転移?それは知らなかったんだけど……」
結晶体が差し出した右手はさらに輝きを増した。
「そうですか。ここは転移施設 ’六帝門’の一つ水門です。そしてここを使うためには一つの試練があります」
そして右手から放たれたのは光の槍だった。
「ちょっと!危ないじゃない?」
愛子は光の槍をギリギリ跳ねて交わした。
結晶体はさらに両手に光を纏い輝くと光槍を両手に持ち愛子に駆け出した。
「試練、それは私、守護者に打ち勝つことです」
そして結晶体は手に持つ光の槍を、愛子目掛けて投げつけた。
またもやギリギリで交わす愛子。
「ちょっと!シャレにならないんだけど! 圧縮」
愛子が右手を光の槍に向けて魔法を唱えた。
右手の前に薄い紫色の魔法陣が描かれた。
そして投げつけられた光の槍を黒い球体が飲み込み消滅した。
「ほう…やりますね? では、こちらはいかがですか?」
さらに光の槍を具現化した結晶体は槍を高速で投げつけた。
「ちょっと! ならば、こちらも本気で行かせてもらうわ!圧縮」
愛子の右手に魔法陣が描かれると同時に愛子は跳躍した。
そして空中で愛子の義足からスラスターが現れ空中を飛ぶように愛子は結晶体に近づいた。
「はぁ!加速踵落とし!」
愛子が光の槍を魔法で消し去った後、上空から踵落としを結晶体に打ち付けた。
結晶体は愛子の足を受け止め、掴むと愛子を投げ飛ばした。
「これは、上空からの加重加速を加えた蹴りですか?甘いですね」
投げ飛ばされた愛子は、スラスタをを再度展開し空中で姿勢を変えた。
「これを受け止められたのは初めてよ……なら!」
ーーーフィィィィンーーー
愛子はさらに義足のスラスターを使い加速した。
「はぁ!!闇脚」
更なる加速を加えた上段回し蹴りを結晶体の顔目掛けて蹴り込んだ。
結晶体はそれを右手で薙ぎ払って愛子の腹部に打撃を加えた。
「撃掌」
「ウグゥ!」
愛子はその場で崩れ落ちた。
「ウゲェェ」
愛子は胃の内容物を全て吐いた。
結晶体の腹部への打撃は愛子にとって初めて受けた攻撃だった。
そして結晶体の回し蹴りが愛子の顔面を襲った。
ーーーバギィーーー
愛子の体に絶躰があるかぎり愛子の体は傷づかないはずだった。
蹴り飛ばされた愛子はゆっくりと立ち上がり結晶体に尋ねた。
「なに?さっきの打撃は?」
「ふむ、貴女の外殻は打撃が効きませんが、内部は他の生物と同じですね。振動などは効くのでしょうね」
愛子は吐き出した唾液を右手で拭うと改めて構えた。
それは師匠から教えられた技の一つ。
「はぁぁぁぁ! くらぇぇぇぇ!」
スラスター全開で結晶体に迫る愛子。
「はぁ何度も同じ攻撃をされても私には効きませんよ?」
「これが同じかどうかは身をもって知ってもらうわ」
加速した愛子が下段へ回し蹴りを放った。
それを結晶体は受け止めた。すると愛子は受け止められた足を軸にさらに反対の足で回し蹴りを中段に放った。
結晶体は両手で回し蹴りをガードしたが、あまりの勢いで背中に蹴り飛ばされた。
「まだまだ!」
愛子が蹴り飛ばさらた結晶体にさらに加速し迫ると結晶体に向けた踵落としを放った。
結晶体が両腕で蹴りを受け止めると結晶体の腕にヒビが入った。
「クォノォ!砕けろぉぉ!」
愛子の放った右足のスラスターがさらに光を放ち加重をかけた。
ーーーバギィィンーーー
結晶体の両腕が砕けた。
「どうだぁ! まだやるの?」
「……まさか、この私の腕を砕くなんて……わかりました……認めましょう……貴女を」
結晶体は、つぶやくと光輝き周りを白く塗りつぶした。
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