機人国潜入 その5
―――カチャ―――
愛子たちがイゼルの街ですごす宿をアインスから紹介された。
それはイゼルの街で広い区画にあった為、今回の神人族襲撃でも壊れることなく残されていた。
「風情がある館ね」
その館は、まるで和風建築のようだった。
なんでも東国にある建物を模して造られたとアインスから説明を受けた愛子たちは館に入った。
「いらっしゃいませ。 お客様。 アインス様から承っております。アイコ様とお付きのかたですね」
浴衣のような服をきた魔人族の女性によるお出迎えを受けた愛子たちは案内されるまま奥の座敷に案内された。途中に見える景色はどう見ても温泉旅館のそれに愛子からは見えた。
「この20号室と21号室が皆様のお部屋になります。ではごゆっくり」
そう告げた魔人族の女性はそそくさと奥の部屋に行ってしまった。
「まるで温泉旅館みたい!!」
「アイコ様、温泉旅館ってなんですか?」
「ここは、まるで龍人国の屋敷みたいやわ」
「ここを解放した時にはきがつかなかったなぁ。なぁロイエル」
「そうだな…あの時は闇夜だったし水門の屋敷が目的であったからなぁ」
「ロイエル様、私もご一緒してもいいんですかぁ?」
ひとり聞きなれない声が聞こえた。
それは一人の獣人の少女。
「っ!?」
「アンジュルムだったか? なぜここに?」
「なぜって私、ロイエル様を見つけてからずっと一緒にいましたよ?」
アンジュルムは探索師の技能をフルに発揮してロイエル達にくっついていた。
まるで認識阻害でもしているかのように自然と愛子たちにくっついていた。
神人族達がいた館にも付いていたのだがそれはロイエルには伝えずにいた。
「まぁいいかな。ここってアインスさんのおごりだし。止まっちゃいなよ」
「はい!お世話になりますぅ。ねぇロイエル様ぁ」
アンジュルムは飛び切りの笑顔で愛子たちに伝えた。
そして皆が寝静まった闇夜に一つ動く影があった。
―――キィィィ―――
「レイジィ様。起きてください」
「う~ん。も食べられない!」
「また、べたな寝言を……第三騎士団のウィズ様からの伝言ですぅ」
「はっ! 誰だお前は?」
「もう、起きたと思ったらそれですか……私は第三騎士団のアンジュルムですぅ。第三騎士団のウィズ・フィ・エダラ様からの伝言です。『帰ってくるな』だそうです」
「……『帰ってくるな』だと……」
「はい。ウィズ様は皆さんが生きていることを知っていますよ。その上で伝えているんです……今、神人国に戻るのは危ないと!」
アンジュルムはレイジィに告げてこっそりと何かを渡した。
「ウィズ様は現在、クラン’仮面舞踏会’として機人国に向かっています。」
「そうか……ご苦労だったな。ついでにここに来た理由はそれを伝える為だけか?」
レイジィはアンジュルムに尋ねた。アンジュルムは少し朱色に染まった頬で答えた。
「だけでないですよ。恋も全力なんですぅ。では!!」
―――シュン!!―――
アンジュルムはレイジィに告げると部屋から音も立てずに消えた。
まるで初めから何もなかったかのように消えたのだった。
「『かえってくるな』か……ウィズは何を知ったというのだ……」
レイジィは呟くと天井を見上げて考えた。
脳裏に浮かぶのはある老人達の姿だった。
―――チュンチュン―――
「朝霞か……」
レイジィじゃ結局一睡眠も出来ずにこの日を迎えた。
そう…・・・決闘の日にちを
「覚悟はいいかしら!? さぁ決闘をはじめましょう?」
愛子は広場で魔剣を身構えた。
愛子の剣が薄う輝きを放った。
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