神聖教義会の暗躍 その5
―――カツカツカツ―――バタン――
「古代魔法’無音術’」
ライアはウィズたちが発令所に入ると扉を閉めて遮音魔法を唱えた。
「これで、この中の音は外にもれなくなりましたね…では改めて、以前話あったことですが……」
「ウィルヘイムの人口が減っているのではないかという事か?」
セイトがライアに尋ねた。
ライアは頭を縦に振った。
「そうだ……以前、神都の人口が減っている理由について各々で調べてもらっていたな」
「そうですね。でも僕たちが市中で調べてみたけど……人口減少に繋がるようなこと……例えば、明らかに犯罪が増えて治安が悪化しているとかはなかったですよ?」
エモルが椅子に腰かけてウィズに伝えた。
「私の所の調べでも同じだ。 統計局の知り合いに聞いてみたが、犯罪数も転居率も以前と明らかに変わらなかったぞ?」
筋肉質の男性、アイドスがライアの肩に手を載せて伝えた。
「……そうですね…確かに犯罪率や人口の流出は変わりありませんでした…しかし失踪者数はどうでしたか?」
ライアは声を低く抑えて、セイトに尋ねた。
「ふぅ……ライアの爺様はよく見てるなぁ。俺っちが調べたところでは神都の失踪数はこの5年で2倍に増えていたよ。しかも失踪しているのは女たちだ」
セイトは呟くような声で皆に伝えた。
「それはどこの情報だ?統計局には届け出がなかったぞ?」
アイドスがセイトに尋ねるとセイトは少し悩んでから皆に伝えた。
「……これは表に出ない数字だろうよ。なんせ失踪しているのは貧民窟の娼婦達だ」
「それは確かに表の数字には出てこないな。とくに貧民窟は神都においては存在しない物とされているからな。ある意味では私達と同じか……」
ウィズは、机に肘をついてスライン達を見ながら告げた。
「それを聞いた上で、私が耳にした情報を伝えたい。消えた女たちは熱心は神聖教義会の信徒だったそうだ。そして消える前に皆同じことを言っていた。曰く―――私たちは神に選ばれたのだ―――とな」
ライアはウィズを見ながら告げた。
「ここからは私の私見になるが、神聖教義会が人を選んでわざとさらっているのではないか?消えているものはおそらく天涯孤独な者のはずだ」
「爺様……そのとおりだ。失踪したのはすべて独り身の若い女だ」
「……神聖教義会が何を企んでいるかは分からんが…少なくともまともなことではないだろうな」
ウィズは大きなため息を吐いた。
「ウィズ様、この時期に我らを神都から出し、機人国での潜入調査依頼とは出来すぎではありませんか?」
スラインはウィズに告げた。
「とはいえ、この依頼は拒否も出来ない。なんせ軍務部からの命令書も付けられているからな…しかも軍としての派兵ではないように偽装せよとのことだ……」
「と言うことは、ギルド経由で機人国にいくんですか?」
「そうだ、冒険者クラン’仮面舞’として機人国に行くことになった。冒険者ギルドの依頼も適当な物を見繕ってきた。一応、商人団の護衛任務という形だ」
冒険者クラン’仮面舞’は冒険者クランの中で上位5位のクランとして世間では認知されていた。
このクランの特徴は所属しているすべての冒険者が、同じ半仮面をつけていることだった。
「まずは一つずつこなしていくしかないか……しかし女性が失踪している事もほったらかしにはできん……しかたない…セイト、引き続き神聖教義会について調査をしてくれないか?」
「ん~姫ちゃんの命令なら仕方ない。わかった、姫ちゃんが戻るまでは、俺っちが調べておくよ」
ウィズが告げるとセイトは手をヒラヒラさせておちゃらけながら命令を受領した。
「では、これでひとまず解散。次は3日後だ」
―――パチン―――
ライアは指をならして魔法を解除した。
そしてウィズたちは発令所からでて宿舎にもどっていった。
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