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古の神殿 その12


 愛子たちがギンゲムと共に神殿オラクルからでて一日が立った。

 今日は皇帝ギンゲムが、ヴィスタ帝国を奪回したことを宣言する日だ


―――コンコン―――


「入れ」


「失礼します。 ギンゲム樣、予定のお時間です」


「うむ、では行くか」


 ギンゲムは執務室から出てヴィスタ城の一室に向かった。


―――バンッ!―――


 ギンゲムは扉を勢いよく開けた

 その部屋には、とある魔道具が設置されていた。


「皇帝陛下、ご入来!」


 モーニングコートを着た魔人族の青年が魔道具に向かって王の登場を告げた。

 

―――カツカツカツ―――


「私が! 第三十九代皇帝ギンゲム・ヨル・ヴィスタだ!」


 ギンゲムは魔道具の向かいに用意された祭壇に登壇した。

 皇帝の両隣には美しい二人の魔人族の女性が立っていた。

 一人はメイド長のシイネ、もう一人はメイド服に着替えたチャームの統合フィジロイ体だった。


 

―――わぁぁ―――


 王都の広場に設置された映像出力魔道具には、ヴィスタ城に設置された対の魔道具によって撮られた皇帝ギンゲムの姿があった。

 そして王都の広場には多くの魔人族が皇帝の発言を聞こうと集まっていた。


「あっアイコ様! 兄王様が映りましたよ」


「本当だね、何か大きな映画館にあるスクリーンみたいね」


「アイコ、アレなクライクラスト商会の新商品らしいで。 なんでも映像魔道具キネマティックって言うんやて。 王都が解放されてから二コラが王に売り込みに行くってコリーが説明してくれたからな」


 愛子とルルカッタ達はその広場に集まった民衆に紛れていた。

 そしてギルゲムはさらに続けた。


「私は、魔人国すべての国民に謝らなければならない!! この国を護るという責務があるにも関わらずこの国を一度、神人国ウィルヘイムに奪われてしまったことを! 私の力が足りないばかりに皆につらい思いをさせてしまい誠にすまなかった!!」


 ギンゲムは壇上で頭を下げた。


「くっ…そうだ! お前ら王族が頼りなかったから俺たちは…俺たちは……」


 広場で映像出力魔道具キネマティック越しに見えるギンゲムに罵声を浴びせる魔人族もいた。

 愛子とルルカッタ達は、そんな暴言のなかでもギンゲムの姿を見つめた。


「だが国民よ。安心してほしい。 私は、頼れる部下や友と共にこの国をもう一度取り返した! 今、この国に神人族の魔法師はいない! 我らが撃退したのだ!」


 ギンゲムは力強く声の力を上げた。


「私は皇帝として国民に誓おう! もう二度とおなじ過ちは繰り返さないと! われら魔人族は魔法力マナが高い資質を秘めている種族だ。 我らは神人国ウィルヘイム二度と負けたりはしない!」


 ギンゲムが民にさらに力強く言い放った。


「その為に我らは学ばなければならない。 国を護るために、友を、恋人を、家族を護るために。 私はもう同じ過ちは犯さない。 だがもし、また神人族がこの地を襲うならば私は先陣に立ち、この国を護るために力をささげよう!」


 ギンゲムはさらに力を込めた


「我らが民よ。 誇るがいい我らがヴィスタ帝国の復活を! そして我らはこの国を護るために今日よりさらに力をつけていくのだ! 誰でもない! 我らが自身の手でこの国を護るために!」


 広場での罵声はギンゲムが話すたびに少なくなっていった。


―――わぁぁぁ!! 皇帝ギンゲム万歳!!―――


 代わりにいたるところで皇帝ギンゲムに賛辞が響いた。

 愛子たちは魔道具キネマティックによって映し出されたギンゲムを見たていた。

 そして国民に対する放送は終わりを告げた。


―――カツカツカツ―――


 ギンゲムは踵を返して玉座の間に戻ってきた。


―――ドガッ!―――


「さて……今日宣言した言葉を、私自身が現実に変えていかねばな」


「ご立派です。ギンゲム様」


 ハイネが皇帝のお隣でこっそりと告げた。


「チャーム、早急に軍備増強計画に移りたい。」


「はい、ギンゲム様。 戦力の増強のために現在できる事は魔法師の育成です。 幸いフェザより騎士の見学に数名の魔法師が王都に来ている状態です」


 メイド長のハイネとチャームが交互にギンゲムに意見を言った。


「そうか…ではフェザの魔法師による実践的な模擬戦闘を行うように通達をだすんだ。 ところで……ルルカッタ達はもう出たのか?」


「私が観測衛星【モテット】で確認すると、彼女たちはまだこの王都ヴィスタに、場所は王都の正門前に居ます。 いまなら呼び戻せますが、いかがなさいますか?」


「いや、呼び戻さなくてよい。」


御意イエスマイロード


 チャームは深く軽くお辞儀をした。

 誰にも聞こえないほどの小さな声でギンゲムが呟いた。


「巫女殿……ルルカッタを頼んだぞ」


 そのころ、愛子たちは王都を出ようとしていた。


「さ~て! みんなで行きますか!」


「はい。アイコ様」


「せやな、また旅やな」


 愛子たちは笑顔で軽口をたたきながら、イゼルへ向かう為に王都をでたのだった。

いつも読んでくださりありがとうござます。

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