表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/216

ダンジョン攻略 その1

いよいよダンジョンに入っていきます。


9月28日

中身を再度考えなおし修正しています。


「あいつら何をゆっくりしてやがったですか? 」


 街道を歩く二人の人影から離れて、ひっそりと歩いているフードを被った女性。

 うっすらと汗をかいている様子で、顔はほんのり赤い。

 走り回っていたのだろうか、額に汗が光輝いていた。


 身に纏ったローブからは、銀色のプレートメイルが見えた。

 鈍い光を放っていた。


 そしてローブのお尻部分には切れ目から出ている物が、その女性が人族でないことを物語っていた。

 そこから出ていた物は、フッサフサのシッポである。


「この美少女アンジュルム様が汗だくになっていたのに!!」

 

 キイイィ!と唇をかむ獣人族の女性はつぶやいた。


「はぁ、これじゃ隊長に怒られちゃいますよ。貴様!それでも’第三騎士団サードの騎士かって」

 

 彼女の胸元のステータスプレートが光って見えた。

 そこには獣人’アンジュルム・クライン’と書かれていた。

 彼女は、数時間前をふと思い出した。


「ふん、この匂いをたどれば、すぐに追いつけますね」


 彼女は獣人特有の能力、嗅覚を最大限活用し洞窟神殿から逃げ出した二人を追跡していた。


「あれっ?ここで匂いが消えている……いや、違うここで何かに乗ったんですね」


 道の途中で急に匂いが消えた時は心底焦った。


「ふふん。私は’探索師サーチャー’ですよ。これくらいなら探せますからね。’香追跡フレグランストレース’」


 そう叫ぶと彼女の目の前に魔法陣が現れた。

 そして光が指し示した方向に歩き始めた。


「あっ見つけたです」


 アンジュルムは二人がクライクラスト商会の会館に入り込んでいく所を発見した。

 そこからが、彼女の受難だった。


「もうこの壁どこに入口ありやがるですかぁ!! 」


 アンジェルムは入口を探したが、一切見つけられなかった。


「ふんっ!探索師サーチャーを舐めないでほしいです。こんな壁なんて登ってしまえばいいです」


 仕方なくアンジェルムは、壁を登って超えようとした。

 探索師である彼女にとって壁登クライミングりは、もっとも得意なことのひとつだった。


「いょっし登り切ったぁ! んっ? 」


 登り切った壁の上で、小さなゴーレムが待ち構えていた。

 ’3’と胸に掛かれていた。

 そしてゴーレムと目が合った彼女は、ゴーレムにより蹴とばされ地面むけて落とされた。


「なぁ、なにしやがるですかぁ! 」


 アンジェルムは思わず声を上げた。 

 蹴落とした本人である小さいゴーレムを睨みながら、地面に華麗に着地をするつもりで空中で回転した。


「ふんっ! こんなの華麗な着地で決めてやるです。」


 足を地面に付く直前に大きな網が、地面から空中に向けて射出された。

 網は彼女をからめとらると、壁ぶつかり固定された。


「なんでこんなに手が込んでやがるですかぁ!? 」


 アンジェルムは、自分の身を包む網をショートソードで切り裂き地面に着地した。

 どうやらこの館の中に入ることは危険であると分かった。


「なぁに、このあたりで出てくるのを待っていたらいいです。さすがアンジェルムちゃん賢いです。」


 壁を登れば蹴落とされるし、入り口も見つからないので、アンジュルムは適当に壁の近くで愛子とルルカッタが出てくるのを待っていると正面の小さな壁が開いた。

 

 ウィーーーーン

 ガシャンガシャ


「なぁっ、何でここに出てきやがるですかぁぁ!! 」


 壁に開いた隙間から、自分を壁上から落としてくれたチビゴーレムが現れた。

 なぜそれが自分を落としたゴーレムかわかったかというと、胸元に3と彫られていたからであった。

 そしてアンジュルムめがけて突進してきた。


「もぅいい加減にするでぇす!! 」


 アンジェルムは全力で逃げ出した。


「ピーーー!! ピピピーーー! 」


 ゴーレムは何やら電子音を叫びながら追いかけてきた。

 そんなこんなでチビゴーレムに夜の間ずっと追いかけ回されたことは、親愛なる団長ウィズ様には秘密である。


「ゼェゼェ……あっあいつら出てきやがったですぅ」


 そうしていると何もない壁から愛子とルルカッタが、出てくるのを見かけたアンジュルム。


「もうぅこれで最後でぇす」


 アンジェルムはチビゴーレムとの鬼ごっこ振り切ると、二人の後をついて歩き始めた。

 そうして歩き始めてから少ししたときに上の発言である。


「あいつら、なんかさっぱりした顔してやがってですぅ」

 館から小綺麗にして出てきたときは、自分の様子と見比べて恨ましい気持ちがでてきた。


「まぁ、しかたない。私はサードのアンジュルム。諜報活動が得意なアンジュルムちゃんですぅ。追跡することが自分の使命ですぅ」


 自分に言い聞かせると、アンジュルムは尾行を再開した。


 そんな二人を尾行すること半日。


 街道から少し離れたところにある、大樹の根元まで二人は来た。


「うわぁおっきいね。これ6mくらいあるかも!」


「すごく大きいですね。もしかしたら近くに魔法力溜まりが、あるのかもしれないですね」


 愛子が、その木の大きさに感嘆の声を上げた。


「これだけの大きさって言うことは、きっと精霊が加護をあたえているんだと思います」


「精霊?」


「はい、精霊は、魔法力マナが集まって生まれると言われています。エレメンタルと呼ばれる4大精霊は別ですが…」


 愛子が、精霊という言葉に食いつくと、ルルカッタは精霊について教えてくれた。


「ルル君こっちの方を見てみよう」


 愛子が手をを引っ張り大樹のふもとを歩き始めた。


「そうですね、もしかしたらどこかに隠された扉とかでてくるかもしれませんしね」


「それにしても、樹の周りの雑草がすごいね。私たちの腰くらいまであるよ」


 愛子は木の周りをウロウロしながらその根元を調べてみた。


 愛子がルルカッタと手を結び、一緒に地面を見て歩いた。


―――ゴン!―――


 愛子の脚が何かを蹴とばしたようだ。


「何か踏んだかも。ルルクンちょっと離れて見て」


 愛子は手で自らの足元を探った。

 硬質な感触があったので、愛子は叩いた。


―――コンコン―――


「あれっなんかある。」


 木の幹と根本に明らかに他の場所と違い、地面にむけて硬い物が触れた。

 扉のようだと愛子は感じた。

 どうやら木が成長して半分ほど扉を飲み込んでいたみたいだった。


「んっ!? ルル君どうやら樹の下になんか扉みたいなものがあるわよ」


「そうですか、おそらくダンジョンの封印の一つかもしれませんね」


「ならさっそく見てみようか。’完視ヴィジョン’」


 地面にある扉は鉄扉ではなく木製の扉のようだった。

 愛子は固有魔法’完視ヴィジョン’を唱えた。

 愛子の目に扉と情報が写った。


―――ダンジョンの封印扉―――


「ルル君この扉、隠し扉みたいよ。ただし何か封印されているみたい」


 愛子が隠されていたダンジョンへの扉を見つけた。


「ルル君、念のため魔道具の録画モード開始してもいいかな? 」


「はい。僕もそれがいいと思います」


 愛子は右腕に、ルルカッタは左腕にブレイをつけていた。


「「呼出コール魔道具ブレイ録画開始ムーブスタート!」」


 愛子たちは、コリーから聞いた録画の為のコマンドを叫んだ。


 そして腕に力を籠める感覚を意識するとブレイに魔力が注がれたようで、

 青く光ると同時にコンソールが空中に出現し、ブレイの一部が赤く光った。

 コリーさんが教えてくれた録画モードが起動したことがわかった。


「これで、録画ムーブが、入ったはずなんだけど……」

 

 それがのちに二人のダンジョンにおける残酷なまでの事がらと、その場所でおきたすべてを証明するものになるとはこの時の愛子たちは知る由もなかった。


遠くから愛子たちの様子を見ていたアンジュルムは愛子たちの腕をみて驚いた。


「なにあれ!? 魔法具? あんな光る腕輪タイプ見たことないですよ」


 かなり驚いている顔は、目は思いっきり見開いていた。

 まるで子供が新しいおもちゃをみて欲しがっているときの表情とそっくりだった。

 そして自身が親愛なる隊長ウィズ様から拝領した腕輪を見ると少し悲しげな表情でこういった。


「私もあんな光る細身の腕輪タイプがほしかったなぁ。これすこし重いし、見た目が明らかにゴツイんですよねぇ……はぁ……。私がこの任務頑張ったら、あんな光る細身タイプの伝達魔法具もらえないかなぁ。それに、この魔法具すこし古臭いし、なんかカビてるんじゃないかな?あぁーいいなぁ。あんな最新式の伝達魔法具ほしいよぉ……」


 任務そっちのけでゴロゴロ地面をのたうち回りながら自分の気持ちをおさえきれてないアンジュルム。


 このつぶやきとその時の様子はなぜか伝達魔法具に記録され、のちのウィズへの報告の時に露呈して少しあきれた表情でアンジュルムがお叱りをうける原因となるのだった。

 アンジュルムがゴロゴロのたうち回っているとき、愛子たちは問題の扉の上で調べていた。


「ねぇ、ここなにか文字みたいなのがあるっぽいよ」


「この文字は……神代文字です。今使われている文字ではないです」


「ルル君、なんて書いてるかわからないかな? 」


「すいません、確かに僕たち司祭は神代文字も読めますが、これは埋まってて文章になってないんですよ。周りをきれいにしたらも少し読めるかもしれません」


 この扉は外には飾り文字が彫っていたのだろうか、土で埋まり扉の文字はわからなくなっていた。

 しかも扉の上には土がのっかっており、その土からは背の高い草が一面に生えており一見してそれが扉の上であることは誰からもわからなくなっていた。


「しかたない。少し周りをきれいにしよ。」


「はい。」


 愛子たちは扉の周りをキタムヤで購入した刷毛で軽くなぞり、積もった土を払いのけた。

 そして”完視ヴィジョン”で確認した通りに扉の淵が現れた。


「ねぇ、何か淵に別の文字みたいなものがみえるわ」


 愛子とルルカッタは扉の近くの土を、のけていこうとして扉の上に乗った。


”ミシッ・・・ミシミシミシミシミシッ・・・バキャッ!”


 なにかが避ける音がすると突如、愛子たちの姿は消えてしまった。

 まるで地面から引っ張られて消えたみたいだった。。


「「アァァアァーー!」」


 愛子たちがいた場所には暗い穴が広がっていた。

 どうやら経年劣化で扉が腐り、愛子たちの体重を支えきれなくなった為、扉ごとダンジョンに落ちたみたいであった。


・・・ドン!


 暗い穴の中からまた衝撃音が響いた。

 無事に地面に落ちたようである。


 その様子をみていたアンジュルムは眼をまた見開き、口はアングリ大きくあけて驚いていた。


「あいつら、この下に落ちやがったです。」


 アンジュルムが穴に近づき中の様子を見ると暗い底からには光る光点が二つ見えた。


「うーん。このまま入るのもいいですけどぉ、念のため隊長ウィズに報告です」


 そのまま一緒にこの穴に入るべきか悩んだが優秀な諜報員でもあり、傭兵のアンジュルムはこのまま装備を持たないまま入るのは危険だと考えた。

 装備を整えるのと同時に親愛なる団長、ウィズ様に報告をする為、アンジュルムは近くの街に戻っていった。




「アアァァァー! おちるぅううう!」


 愛子は叫んでいた。

 急に地面が抜けた事で感じる浮遊感と落下のスピードに声を出さざるを得ない状況であった。



「アアァァァーーー!! アイコさまぁーーこのままーではーぶつかりますぅーー!」


 ルルカッタも叫んでいた。

 今迄経験したことない浮遊感と落下スピードが自分たちが落ちていることを自覚させるには充分であった。


「ルル君!こっち!」

 愛子はルルカッタの腕を引っ張った。

 ルルカッタは愛子に抱き着いた。


「そうだ!魔方、まほうぅ!」


 愛子は落下の衝撃に対して、自身の固有魔法を思い出した。


「’絶躰ゼアペス’!」


 愛子が魔法の名を叫ぶと、魔法陣と薄い紫色の光を全身に纏った。

 地面にぶつかる前に、愛子の魔法が展開された。



―――ゴォォーーン!―――


 愛子はルルカッタの抱きしめたまま、地面に足から着地した。

 二人の体に、ダメージは一切なかった。


「真っ暗ね。そうだガイさんが確かこれをくれてたっけ」


 愛子はキタムヤで購入したスティックタイプの魔道具ライトマテリアルを使った。


ポキッ!



「あっなんか光はじめた。」


 折ると薄い明かりが周りに照らされた。


「コレ確か結構持つって言われてたっけ?」


「アイコ様、確か3時間とガイさんは言ってましたよ」


 薄くてらされたダンジョンから上を見上げると、黒い中にぽっかりと光る穴が開いていた。

 まるで闇夜をてらす月のようだと愛子は思った。


「なんか道があるね」


 愛子は魔道具ライトマテリアルをあたりに向けた。

 壁に左右一本ずつ道が続いていた。


「なんかここは、広場みたいね」


「アイコ様、一緒に出口探さないと帰れないですね。階段みたいなものもないですし」

 

 あたりに登れるものは何もなかった。


「はぁ……」


 思わずため息が出る愛子であった。


「しかたない!ルル君いくよ。取り合えずこっちに歩こう」


 愛子とルルカッタは右側の道を進むことにした。


「それにしても広い通路ね。縦横6メートルくらいありそう」


 二人は手を握りあい、お互いの鼓動を確かめ合いながら通路を進んだ。

 一人では気が参ってしまいそうな暗闇は、それだけで精神力をそぎ落としてしまう。

 しかしお互いに握った手の鼓動がそれを少し和らげてくれていた。


「アイコ様が一緒でよかったです。一人では心細いですから」


 ルルカッタが言ったこと


「そうね。私もルル君と一緒でよかったわ」


 愛子は、思った『 一人ではない 』ことが安心感につながっていると


―――ピチョン!ピチョン―――


 壁から水滴が落ちる音が不気味にこだまする。

 どれくらい歩いたのだろうか。

 通路は一本道であり今迄歩いたところに分岐などもなかった。


―――ゴソゴソ!―――


 通路の先で物音が聞こえてきた。


「なにか音がしない?」


 愛子がライトバーで照らしてみると動く物体があった。

 ルルカッタが魔法を唱えた。


「”魔光サンライト”」


 するとルルカッタを中心として光が通路の端まで広がった。

 先ほどの音の主がこちらを見ていた。


――――キィイ―――


 白い体毛に覆われた毛玉がそこにあわられた短い耳はウサギのようであった。

 そして3つの金色の瞳がこちらをみていた。

 大きさは2メートルはありそうな大きな3つ目ウサギ。

 それが愛子の素直な感想であった。


「かわいいぃ!」


「アイコ様気を付けて!あれは魔物です」

 

 ルルカッタが叫ぶと同時にウサギは飛び込んできた!


「アイコ様!」


 突進してきたウサギは愛子の顔の横を通り過ぎた。

 愛子の頬が斬れて、血が地面に落ちた。


「うぉ!あぶなぁぁい!見た目と違って厄介ね」


 愛子は右手でロングウィップを放った。


 ロングウィップは愛子のイメージした通りの軌跡を描き攻撃した。


―――ヒュンヒュン!―――

 

 愛子は右手に持ったロングウィップを思いっきりふるった。

 腕を上にあげ、下に思いっきり振り下ろした。


―――ヒュッ!!バシィン!!―――


 ロングウィップは愛子の腕の動きと呼応すると、空中で波を描くようにウサギに向かう軌跡を描いた。


「ギャブ」


 ウサギはロングウイップで撃たれると、断末魔を残して切り裂かれるように両断された。


「へっ?斬れた……」


 愛子は驚いた。鞭で魔物が斬れたことに。

 するとルルカッタが教えてくれた。


「アイコ様、すごいですね。魔物を両断したのは、まだ魔法の効果が残っているからですよ」


 固有魔法’絶躰ゼアペス’が掛かったまま振り下ろされたウィップの一撃は、とても刃のように切り裂いた。

 

「これ、とんでもない威力ね。うさぎさん。ごめんね」


「アイコ様、この魔物は’グーラ’です。それほど強い魔物ではないので良かったですね」


 それほど強い魔物ではない。

 それをきいて愛子は実感した。


「わたし、本当に異世界にきたんだ」


 この世界で初めての魔物との戦闘を経験した愛子は、グーラを倒した後にその場にへたり込んでしまった。


「アイコ様だいじょうぶですか?」


「えっ?ええ大丈夫よ。こんなことで驚いていられないしね」


 愛子はそういうと、ルルカッタの手を取り立ち上がった。


「アイコ様、魔法石をとりだしましょう」


 ルルカッタは先ほど倒したグーラの近くに行き、その体内から何か光る石を取り出した。

 ルルカッタは愛子にその石をみせて話をした。


「アイコ様、これは結晶石という魔物が持つ魔法石です。魔物はこの石のおかげで、体が素早く動いたり、特殊技能を使えたりします」

 

 ルルカッタの説明に愛子は首を縦に振った。


「これはマジックアイテムにも加工できるので、魔物を倒したら必ず回収してください。それに体に残したままだと、魔物が復活することがあるので」


 そういうと琥珀色の石を、愛子のウエストポーチにしまってくれた。

 二人はさらに通路を進み始めた。



「あっ!またグーラです」

「そぉい」


 その後もグーラと遭遇したが、愛子のロングウイップの一撃で両断された。

 倒した体からは、結晶石を回収していった。


「アイコ様、なにか部屋がみえてきましたよ」


 通路を進んでいると半円状のドームみたいな空間に出てきた。

 奥には下に向かう階段のような物が見えている。


「よくゲームとかならこの辺で、なにか中ボスみたいなのがでるのよね」


「げーむ?」


 ルルカッタにRPGゲームの話をしながら、ドーム内に進んだ愛子とルルカッタ。

 するとドームの中心がひかり、小さい魔法陣が出現した。


「ほら、やっぱり」


 魔法陣は白い光を放つと人型の魔物が3体現れた。

 全身を白い毛におおわれている所は先ほどのグーラと同じでだ。

 ただ違うのはその雰囲気と風貌である。


「あれは、アイコ様!気を付けて上位種です」

 

 身長は3メートルはあるかと思える大きさであり、頭部は体毛で覆わていた。

 そして3つ目から放たれた金色の光がこちらを見据えている。

 まるで獲物が来たといわんばかりである。

 そして二脚歩行で下半身と上半身は毛でおおわれていた。


「二本足で立ってる!」


 先ほどまでのグーラは四脚歩行の魔物であったが、目の前の敵は二脚歩行だ。

 しかも大きさも先ほどのグーラよりも大きかった。


「なにか持ってるけど!あれ剣かな」


 その手にはロングソードと木槌が握られており、その木槌にはべっとりと赤黒い何かが付着していた。


「アイコ様、あれは、グーラ―の上位種、ラマンです」


「うぇなにこいつ! あきらかにボスっぽいんですけど! 」


 ルルカッタは告げた。

 そして愛子は身構えた。

 これから始めて人型魔物に対して戦うのだと思った。

 緊張で冷や汗がでてきた。

 ドームが赤い光で閉ざされた。

 

「アイコ様、結界を張られました。これで逃げることできません」


 愛子はロングウイップを右手で強く握りしめ叫んだ。


「これくらい、やってのけるわよ」


 愛子が叫ぶとラマンも咆哮を上げた。


「「「「ガラァァァァァァァァアァァァ!! 」」」


 グーラマンが吠えた。


 「ツッ!! ゼアペス! 」


 愛子は叫び唱え、鞭を振り下ろした。


「魔法で硬化した鞭の力思い知りなさい」


―――ニィ!――

 

 ラマンは口角を上げると、愛子の鞭を掴んだ。


「うっそ!」


 愛子は今まで通り固有魔法を使い、敵を破断していこうと思っていた。

 ここに誤算があった。

 相手は人型の魔物である。


―――ヒュン―――


 ラマンは鞭を掴んだまま横に投げつけた。

 愛子は鞭ごと投げ飛ばされた。


「くぅ!まさかつかんでくるなんて」


「アイコ様、避けて」


 目の前に先ほどのラマンとは別のラマンが一体現れた。


「’雷撃ボルド’」


 この空間では火の魔法は使えない、使えば酸素を消費して自分たちが動けなくなる。

  ルルカッタの魔法でラマンが1体黒焦げになった。


「’雷撃ボルド’」


 続けて2体目のラマンにルルカッタは魔法を放った。

 ラマンは黒焦げになり倒れた。


「グゥガアアアア」

 ラマンが叫ぶといきなり向きを変えてきた。


「’雷撃ボルド’」


 残る1体は魔法をよけ、体の向きを変えた。

 そしてその勢いのままルルカッタに向かってきた。

 ルルカッタに木槌がせまる。



「あぶない!!」


愛子はルルカッタに向けて走るとあっという間にルルカッタとラマンの間に現れた。


「バキャッ! 」


 ラマンはニヤッと笑った。


 殺した!

 おれがカッタ!


 ラマンは思った。

 しかし、次の瞬間その表情が固まった。

 いや凍っていた。


「もうぅいたぁい!」


 敵を撃墜した木槌が砕けていたのである。 

 もちろん目の前の人物は無傷。


 「グラァァアアアア! 」 


 「残念ね。あの世で反省なさい」


―――ヒュンヒュッ!バシュッ!―――


 愛子のロングウイップが迸る。

 軌跡は先ほど違って、うならせながらラマンを切り裂いた。

 

 「ギャアアア!! 」


 ラマンの悲鳴が響く。

 ラマンの右腕が木づちと共にふきとんだ。

 ラマンはまだ闘争心が残っているのか険しい表情で愛子をにらむと、とび蹴りを放った。


「いい蹴りね。しかし威力とスピードが足らないわ 」


 愛子も思わず、ロングウイップでなく右足で相手の飛び蹴りを受け止めた。


「蹴りはこのようにするものよ」


 愛子は右足の蹴りで応酬した。

 技能’闇連脚シャドック’ではなく、蹴技に対する想いを乗せて蹴り上げた。

 

「イャッ!ハイッ!! 」


 愛子はハイキックを繰り出し、相手の左上段から右下段まで重さを載せて振り落とした。

 ラマンは袈裟切りされたみたいに体が二つに分かれた。


「いい、これが技というものよ! 」


 愛子は笑顔で、ラマンをみつめて告げた。


「さて、では魔法石回収しないとね」


 愛子とルルカッタは急いで魔法石を回収した。 

 それは今までの中でひときわ大きかった。

 

「あぁしんどかった」

「アイコ様、宝箱が現れましたよ」


 へたり込みそうになる愛子をしり目にルルカッタは告げた。

 先ほどの魔法陣に現れた場所に宝箱が現れた。そしてそれをあけて見てみた。

 中には手紙と一つのカギが入っていた。


「手紙?」

「アイコ様開けてみてください」


 その手紙が次なる試練への招待状であることはあきらかだった。

 手紙の封筒にはこう書かれていた。


―――グラマナスサイコのダンジョン―――

 

 

  

いつも読んでくださりありがとうございます。

感想、ご意見、誤字脱字があれば報告お持ちしております。


いよいよダンジョン編です。


次回の更新は木曜日20時までに行いたいと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ