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あの空に近づきたくて  作者: 巳椿によ
第一章
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Ⅴ 眠り姫と変化

今いる王の間から彼女の居る部屋はすぐ隣であり足早に向かった。

自ら扉を開ければ、中にいた侍女が驚き頭を下げた。

 「何があった?」

側に駆け寄りながら彼女の眠るベットの側に立つ侍女に聞いた。

 「陛下・・・その、髪が・・・。」

かなり動揺しているのか、視線が彷徨っている。

侍女の言葉に彼女に目を向けると、艶やかな真っ黒の髪の一部が若草色に変わっていた。

おそらく、ダドリーの言っていた体への異常だろう。

まさか髪に来るとは思いもしなかったが、逆に言えばまだよかった方なのかもしれないとも思う。


彼女の枕元に腰掛け、そっと若草色の髪を(すく)う。

すると彼女の魔力に再び変化が起きた。

彼女の髪がまた変わり始めたのだ。まるで紙に水が染み込んでいくようにジワジワと、全体に染まっていった。

完全に髪が変わっても尚、魔力の微妙な流れが彼女の中で渦巻いていてもしかすると髪以外にも異常が起こっているのかもしれない。

 「陛下、手を・・・。」

隣でずっと見ていたイシスが何かに気づいたのか、声をかけた。

「これは・・・。」

言われるがまま彼女の手を見てみると、かすかに光っていた。

先程の異常で多少魔力が放出されたことにより安定し始めたのだろう。魔力が具現化し始めた。


魔法にはそれぞれ属性というものが存在し、それは人それぞれが必ず一つは所有するものでもある。

大まかに分けると、火・水・風・土・光・闇がある。

例えば何もないところから炎を出したり風を起こしたりなどといったところだろうか。

稀に、非常に珍しい事だが人によって2属性を持ち合わせる者も居れば、長年の努力により2属性扱えるようになった者もいるが、ほんの一割と満たないのだ。

俺やイシスもその中の一人で、俺は火と風の魔法をイシスは土と光を魔法を操れる。


そしてどの属性を操れるのか分かるのが、魔力が身体の外に放出された時だ。

身体の中に溜まっている魔力を集中させて外に出す事によって、ある程度の属性が分かる。

そして彼女の手にはまさに魔力が集まっており、外に出されようとしていた。

 「・・・。」

微かに声が聞こえ、再び彼女の顔を窺う。

 「・・・・・・・ん。」

瞼が少し動いたかと思うと、そっと瞼が開いた。

部屋に静けさが広がる。

暫く静かに瞬きを繰り返していた。現状を理解しようとしているのだろう。

視線が動き俺たちと目が合った。

言葉が通じない以上、なんて声を掛けてやればいいのかも分からず、ただ反応を窺うなかった。

「%$¥・・・。」

どうやら俺の顔を覚えていたのか、落ち着いていて何かを呟いた。

何を思ったのか上半身を起こそうとし案の定ふら付いた。

即座に支えてやると、驚いたように俺を見た。

  っ!?

その時気づいてしまった。

髪への異変が起こった後も、魔力の流れが生じていた理由が分かったのだ。

彼女の瞳、髪と同じように綺麗な黒い瞳が魔力の影響か全く違う色に変わっていた。左目が薄い青色で右目が赤茶色に変わっていたのだ。

彼女はまだ自分の変化に気づいていないのか、キョトンとしていた。

彼女の背に枕を置き背もたれ出来やすいようにさせ手を放すと、今の気配りを気づいたのかお礼するかのように少し頭を下げた。

  ・・・早いうちに真実を伝えるべきだろう

だが、言葉が伝わらない以上どう伝えればいいのか。

 「%$、##」

何かを呟き、視線の先を見ると、魔力により未だ淡く光る彼女の両手だった。

肘のあたりから光り特に手全体が強く光っていた。しかもよく見ると、左右の光の色味が違う。左手は青白く、右手は赤っぽく光っているのだ。

もし予想があっているとすれば、属性の表れだろう。もしそうなると、彼女は2属性持ちの可能性が高い。

 「陛下、先ほどの知らせでフォンフォード様もお呼びするよう他の者に伝えましたが、これは・・・。」

 「あぁ、2属性持ちだろう。」

滅多に見ない2属性持ちにイシスも驚いているようだった。

おそらく、魔法自体知らないであろう彼女には今、自身の体に起こっている変化に戸惑っている事だろう。

未だ自分の手を見つめている彼女の手の側に自分の手を近づけ、魔力を少しだけ込め、小さな炎を出した。

最初に彼女に鉱石の花を作ってみせたように、あの時と変わらず、驚いた表情を見せた。

自分の手と俺の手を何度も見比べたり、手を開いたり閉じたりを繰り返したりした。

 「もしかして、真似をされているのですか?」

そう聞いたイシスの言葉にも、やはり通じないのか首をかしげるばかりだった。

そういわれると確かにそう見えなくもない。

もう一度、手を近づけ先ほど同様に小さな炎を出した。

確かにクロエが言うように、じっと俺の手の動きを観察しているようにも思う。

 「「「っ!?」」」

すると手が今までよりも赤く光った瞬間、20()以上の温度が一気に上昇した。

炎は出なかったものの確かに魔法は発動した。

薄々気づいてはいたが、これは間違いなく火属性だ。しかも彼女のは少々特殊だ。

俺の操る、火属性は炎を出すことに対し、彼女のはおそらく『温度』だ。

手を中心に温度を上げる事が出来るのだろう。


見た感じ、彼女への影響は見られない。

そうなれば、もう一つ試したいことがある。今魔法が発動したのは右手だ。

今起きた事に驚いているのだろう、不安げに俺や後ろに控えてる2人の顔を窺っていた。

そんな彼女を落ち着かせるように肩に手を置く。

 「大丈夫だ。」

あくまで落ち着いた声でそういえば、言葉は分からないだろうに少しずつ肩の力が抜けていくのが分かった。

 「今度は、左手で、もう一度だ。」

彼女に伝わるようにゆっくりと言いながら、右手を指さして左手に動かし、もう一度というように指を立てる。

考えていたのかしばらく視線動かしていたら、意味が分かったのか、躊躇(ためら)いがちに左手を出した。

暫くすると、青白く光っていた手がまた強く光り出し、そしてさっきよりも強く魔力が発動した。





 「ダドリーだ、入るぞ。娘の様子がって寒っ!!?!?!」

ノック音とともに扉を開けたダドリーが声を上げた。


それもそのはずで、だいぶ広いこの部屋の半分が厚い霜で覆われてしまっていた。

 「おいおい。どうゆう事だ、これは。」

明らかに困惑しているダドリーの息でさえ白くなっているほどだ。

 「力の制御がまだできていなくてな。」

霜で覆われた服を叩き落としながら答える。

 「はあー、こうなると思たから気をつけろと言ったんだぞ。」

あからさまに盛大なため息をつきなだらこっちまで歩いてきた。

その度に、サクサクと鳴る音に違和感を覚える。

 「#$&%っ!」

聞こえた方に視線を向ければ顔を歪め、繰り返し何かを言っては頭を下げていた。

 「#$&%っ#$&%っ!」

必死に何かを伝えようとする彼女にイシスが言う。

 「もしかして、謝罪を?」

 「ああ、なるほど。そう言われればそうかもしれんな。」

 「・・・気にしなくていい。」

未だ顔を歪めていた彼女の頭を躊躇いがちにそっと撫でれば、伝わったのかもう何かを言うことはしなかった。

 「で、その手に持っているのは何だ?」

ダドリーが入って来た時に持っていた物に視線がいった。

黒い何かを持ったそれを示せばああ、と思い出したかの様に彼女の目の前に出した。

 「魔力補助具だ。研究室の隅に置いてあったものを出してきたんだ。」

そう言って広げて見せた物は一見ただの黒い軍手の様だが、れっきとした魔法使い専用の軍手だ。

普通の軍手とは違い、薄い生地で出来ており特殊な繊維を編み込んでいる為非常に丈夫で、手首の関節あたりより少し短く手のひら辺りには穴も開けている。

そして何よりこの軍手には魔力の放出を抑える特殊な魔法がかけられている。

非常に強力な魔法な為、壊れることはそうそうない。

だがこれは主にまだ魔法を扱い始めたばかりの子供に自分の魔力の出力の具合を分からせ、慣れさせるために作られている。

大人に近い彼女に、しかもそこらの子供よりもはるかに魔力の高い彼女に使えば、容量オーバーで壊れかねない。

 「無理だ。魔力量が違いすぎる。」

分かっているだろう、と言うようにダドリーに言えば、ニヤリと笑った。

 「ふっふっふっ、勿論想定済みだ。そう思って早々に彼女に合わせて魔法を掛け直してきた。だがこの様子だともう一度掛け直した方がいいかもしれないな。」

自信ありげに答えたもののこの部屋を見たからだろう、彼女の魔力量が分からず予想で作ったのだろうがそれ以上の量に顔を引きつらせていた。

 「まぁ、これは仮でという事でしばらく使ってもらおう。それまでにまた新しく用意してこよう。」

ダドリーは簡単に言っているが、かけている魔法自体少々工程が面倒なのだが普通のであればまだ簡単に量産が出来るが彼女にとなるともっとややこしくなる。

普通の人間であれば何週間もかかるであろうことなのだが、こんな男でもやはりダドリーの腕は確かなのだろう今持ってきたものもこの3日間で作り上げてしまったのだから。


 「さ、お嬢ちゃん、これをつけてもらえるかな。」

そう言って微笑みかけながら彼女の前に差し出す。

突然現れたダドリーに少し警戒し躊躇っていたがそれを受け取り手にはめた。

 「よし、これでしばらくは大丈夫だろう。あとは・・・彼女との会話だな。」

ダドリーの言う通りだ。

こうも会話ができないと不便でならないが仕方がない。

 「だが、彼女もまだこの状況に盛り込めていないだろうし疲れもあるだろう。暫くは様子を見て追々言葉を思えた貰うなりしよう。」

 そういった俺に2人も何か考え納得したように頷いた。




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