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あの空に近づきたくて  作者: 巳椿によ
第一章
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Ⅳ 眠り姫と魔法

あっという間に屋上の上に着き、両腕に抱えた小さな彼女を傷つけぬようそっと後ろ足で降り立ち下に続く階段へと歩みを進めながら人の姿に戻る。

円状となっているこの場所は広く反対側までは20メト(メートル)程ありちょっとした庭園となっている。

多く使う事のない子の場所は竜の姿に転じ、跳び脱時であったり今回のように降り立つ時に使っている。


階段を下りればすぐ側に控えていた兵が俺に気づき即座に敬礼をするが俺が抱えている者の正体に気づくや否や鳩が鉄砲玉を食らったかのような間抜け顔をしていた。

するとすぐにイシスが血相を変えて走り寄ってきた。

 「陛下!窓から陛下のお姿を見ましたので急いでっその者は!?あの、離宮に向かわれたのでは?」

側に着くや否や珍しく焦り様取り乱すイリス。

今まで女に対して無関心だった俺がいきなりしかも離宮に向かう途中で見知らぬ女を抱え急いで戻ってきたのだ、驚くもの無理ないだろう。

 「説明は後だ。あの男を呼べ!」

 「聞こえたな!お前はすぐにフォンフォード様を呼んでくるんだ!急げ!」

俺の声にすぐに切り替え、近くにいた兵士に的確に指示を出す。

 「お前はメイドに空き部屋の用意を、」

 「いや、時間が惜しい。あの部屋でいい。フォンフォードもこの部屋に来させろ。」

イシスの声を遮って上から指示を出せば俺の示した部屋を見て更に驚きしかし、と続けるイシスを無視し彼女を抱えて部屋に向かえば諦めたかの様に後ろで再度、支持を促していた。

俺が扉に手をかけるよりも早くイシスが素早く扉を開け入れてくれた。

白を基調とした壁紙や家具の置かれた部屋の隅にある天蓋(てんがい)のついたクイーンサイズのベットにそっと彼女を寝かせた。

 「陛下、いったい何があったのですか?」

少し落ち着いたのを見計らってイシスが問いかけてきた。

「・・・たまたま森で出会った。急に意識を失ってしまった為ここに連れてきた。」

「身元の分からない娘を連れてきたのですか!?」

「ああ、・・・だがお前ももう気付いてるだろう。」

そう言って視線を向ければグッと、押し黙った。

  やはりな。感の鋭いイシスだ、おそらくこの世界の者ではないのは気づいてるはずだ。


コンコン

扉からノック音が響いた。

 「フォンフォード様がお見えになられました。」

 「入れ。」

 「やあ、待たせたな。」

颯爽と現れたこの男、ダドリー・フォンフォード。この国で魔力に関する事について研究しており父の友でありまだ父が王だった頃から色々世話になっている。

普段は王宮の地下に部屋と研究室を持ち、そこに籠っては何やら研究に明け暮れている。

白いローブを着こなし金髪碧眼で綺麗な顔をしているが現在人間の娘に3股しているという根っからの女好きだ。

 「それで、この可愛らしい娘は?」

 「・・・この近くの森にいた。おそらく異界の住人だろう。」

俺の言葉に2人が驚き俺の顔を見る。

それもそのはずだろう。

多くの学者は異界の存在を認めていはいたが実際に異界に行った者や住人にあった者は居なかった。

俺自身、未だに信じられないが事実こうして目の前で寝るっている彼女を目の当たりにするとやはりそうなのだろう。

 「・・・この身なりですか?」

「それもある。だが、そもそも言葉が通じなかった。」

俺の答えに半ば納得したのか少しこわばっていたイシスの表情が少し緩んだ。

 「にしても、・・・魔力量が凄いな。」

今まで黙っていたダドリーが口を開いた。

 「最初は魔力はこれほどまでは無かった。」

 「どうゆうことだ?」

俺の言葉に疑問に思ったダドリーに彼女に会った時のことをすべて話した。

話が終わったあと何やら考えながら彼女の前にしゃがみ、彼女の額に手をいたり首筋に手を置いたりし始めた。

おそらく彼女の中に流れる魔力について調べているのだろう。


魔力。人間は個々に魔力を持っており、それは命と比例している。だが多くの人間はそれを感じ取る事が出来ず、魔力そのものを持ち合わせていないと勘違いしている者がほとんどだ。

しかし稀に生まれながらに魔力を感じる事ができ、尚且つ他の人よりも多く魔力を持つ人間もいる。

だが過去に魔法が身体に当たったなどといった弾みで自身の中の魔力の枷が外れて魔法を使えるようになったという者もごく僅かに存在する。

これを触発(しょくはつ)と呼び、今では生まれて間もない子に親が魔法に触れさせて魔法が使えるか試すという習慣が根付き始めている。

そうして魔法の使える者で尚且つその能力を認められたものだけが魔法部隊に入ることが許される。

そこでは日々魔力を上げる鍛練や魔法を扱った戦闘などの訓練が行われている。そういった状況下では大抵の者が魔力の上昇がみられる。魔力は自身の体と比例しており、体を精神を鍛えれば鍛えるほど魔力はの量は増えてゆく。

勿論個人差はあり、同じ時期に入ってきた人間が同じ訓練をつづけたとしても同じ力量を得るとは限らないのだ。

だから今目の前で眠る彼女の魔力の大幅な上昇には異常と思う程に急激だったのだ。

しかもこの現象が発生したのはおそらくあの森で彼女の手に触れた時、ということだ。

先ほども言ったが

魔力に触れることによって自身の魔力が出される事はあるが、彼女の場合は魔法にって作られたあの花に触れる前だった為魔力に触れていない可能性がある。しかも僅かに手に触れただけだ。なのに出されてる魔力の量がかなり多い。もしかしたら魔法部隊の精鋭クラスと同じくらいだろう。さらに鍛えればもっと上がる程だ。


 「・・・・おそらくだが、触発(・・)だろう。」

数分後、確信を持てないのだろうぽつりと言った。

 「だが、魔法に触れる前だったぞ。」

 「あぁ、問題はそこなんだ。もう少し見てみない事には分からないが、陛下に触れたのであればおそらく陛下の纏う魔力にに当てられたか、お前の渡した石と触れた事の連鎖によって起こったのかもしれないし、ここを渡った時の時空で何らかの影響で体に変化が起き、触発したのかもしれないし、もしくはこの世界の環境に体が合わされたのかもしれない。」

 「・・・つまり、原因は分からないということか。」

 「ま、そうゆうことだ。・・・しばらくは様子見だな。言葉が通じないのは少々大変だがまずは彼女が起きるまで待つしかないだろう。」

 「そうか・・・。」

ダドリーの結論になぜここまで落ち込むのか分からなかった。

なぜ最初に見た涙を流す彼女の顔が何度もフラッシュバックしてはこんなにも胸を締め付けられるのだろうか。あの儚げと警戒の色を向けた同じ黒い瞳を思い出すのだろう。

 「・・・ダドリー、お前、顔が変だぞ。」

眠っている彼女を見ていたら横から視線を感じてドレイクの方を見ると、なんとも間抜けな顔をしていた。

 「お前、まさかって変とは何だ変とは。」

何を言いかけたなのか気にはなったが俺の言葉に変に絡んで来ようとしたので無視した。

 「だが魔力がこのままの状態であれば何も問題はないが、見る限りだど彼女の体以上の魔力を感じる。また何かの弾みで今度は自身の体事態に何らかの異常がみられる可能性もあるのと、今はまだ表に出てきていないがもしそうなった場合暴走する可能性もあるから十分気を付けたほうがいいぞ。」

急に真剣な表情に戻したダドリーが言う。


ダドリーの言っていることはもっともだ。

普通は心身を鍛える事によりそれに合った魔力が付くはずだが彼女の場合は何故かそれが逆の状態になっている。

過去に体がその魔力に耐え切れずに体自体に異常をきたしたという例もいくつか存在する。

例えば、体のどこかに文字が浮き上がってしまったか、片腕が石に変化してしまったとかなど様々だ。

今はまだ眠っているせいかその反動が起きないがいつそれが起きてもおかしくはない。

また目覚めたとしてもいきなり授かった魔法を簡単に制御できるとも限らない。自身の魔力に怯え、感情によって暴走した魔法により甚大な被害をもたらしたところも少なくない。

もしそんなことがここで起きれば、どれだけの被害が出てしまうのか。

それは何としてでも避けたい。

 「しばらくはあまりこの辺りに兵を来させないようにしよう。あと信頼のできる侍女を呼んで彼女の世話をさせろ。それと、・・・離宮に断りの遣いをを出しておいてくれ。」

 「ではすぐに。」

ダドリーの言葉に頷き、イシスに指示を出せば神妙な面持ちで取り掛かりに部屋を出て行った。

 「それじゃ俺も色々と調べなおしてこよう。」

そう言って扉に近づいたダドリーがあ、と何かを思い出したかの様に振り返った。

 「・・・襲うなよ?」

不気味な笑みを向けてくるダドリーにお前と一緒にするな、と言えば何が面白いのか声高らかに笑いながら出て行った。

はあ・・・と深いため息をこぼし、彼女に視線を向けた。




あの後侍女のカーラと共に来たイシスと彼女の事を話した後自室へと戻った。

  今日で3日か・・・

彼女を入れた部屋、王妃の間では未だに眠り続けもう3日が経つがまだ目覚める気配がない。

あれから暇を見つけては度々、彼女のもとに訪れた。

ただ静かに眠る彼女にどうする事もできずに、ただその場にいる事しかできない自分にいつもイライラしていた。

キャロラインでさえ一人の女に自分の感情が動かされる事はなかった。

事実こうして気を紛らわせようと業務を黙々とこなしているが、彼女の存在が頭から離れることはなかった。


 「・・・・陛下、少し、休まれてはいかがですか?いくら何でも流石に休息も取られないままですと陛下が倒れてしまいます。」

側に控えていたイシスが控えめながらに言った言葉でやっと文字を追っていた目線を上げた。

 「ああ、・・・すまない。」

その一言に、少しばかり安心したのか肩の力が抜けたようで、俺もため息をつき椅子に背を預け瞼を下ろした。

今までにも何度か夜道し業務を行うことはあった。

 「・・・しばらくお休みになられてはどうですか?あとは私が引き継いでおきますので。」

だが今回は状況が状況なだけにどうも変に不安がられてしまったようだ。

根を詰めすぎたせいかあまり眠気を感じないが、一度手を休めてもいいかもしれない。

 「・・・そうだな。5分経ったら呼びに来てくれ。あと何かあったら構わずすぐに言いに来い。」

そう言って隣の部屋にある寝室に向かおうと立ち上がろうとすると、何やら騒がしい音が聞こえたと思うと部屋をノックする音がした。

「ああ。入れ。」

城付きの従者が頭を下げる。

「失礼致します、陛下、あの娘に変化が起きたと!」

イシスも驚きを露わにし、俺は次の瞬間、座っていた椅子をけり倒すようにして立ち上がった。

「すぐ行く、イシス、悪いがお前も来てくれ。」

イシスの返事を横に足早に部屋を出た。



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