継承の儀2
次の日
俺はベガと初めて会った森の開けた場所に来ていた。
どうやらここで儀式をするそうだ。
「継承と言ってもする事は簡単だ。俺がそれっぽい言葉を言うそしてお前が返事をする。それだけだ。」
え、それだけ?
しかもそれっぽい言葉って……。
「お前が次の世代に継承するときもそれっぽい言葉を言えば良い。」
て、適当だなー
「なんか思ってたのより簡単そうだな。」
「あぁ、簡単だ。だが、それにこそ意味がある。」
俺が受け継ぐ龍神と言う名も。
「さぁ、では始めるか。」
ベガはそう言ってローブを脱ぐ。
始めて見るベガのローブを脱いだ姿。
黒のアンダーシャツみたいなものとズボン。
以外と引き締まってるんだな。
あ、腕の部分に変な模様?的なのがある。
「準備は良いな?」
「何時でもいい。」
そう返事をするとベガは目を少しの間綴じて、それっぽい言葉を言いだした。
「我、龍神のベガは汝、タジマ・ソージに龍神の全てを受け継がせる。」
みじかっ!
言い終わったベガの腕の模様が突如光りだした。
そして、俺の身体も光りだした。
「これが継承か。」
ベガは興味深そうに呟く。
ベガの身体から光の粒が溢れ出す。
そしてその粒が俺の身体にどんどん入ってくる。
「⁉︎っ。うおぉぉぉぉぉ!」
腕に変な模様が描かれていく⁉︎
その模様の部分から力が流れ込んでくる!
そして暫くしてその光が収まった。
「よし無事に受け継がれた様だな。」
まるで、肩の荷が下りた。といった感じのベガ。
「さて、そろそろ俺は神として天に召される筈だ。」
そう言われて思い出す。
確か、ベガ達亜神は次の世代に受け継がせると、神として天に召されると言う事を。
「なに、そんな顔をするな。姉にでも頼んで夢の中にでも出して貰おう。」
するとベガの身体がさっきと違う輝きを放つ。
「俺が来ていたローブを着ろ。それと身分証明が必要時はこれを差し出せ。」
そう言って手紙を差し出す。
「それとこのお金、魔物の素材も全てお前にやる。」
「こ、こんなにたくさん。」
俺の使える空間魔法に入りきるかな?
そんな俺の考えを見透かす様にベガが言う。
「龍神の名を継いで魔法の精度も上がった筈だ。多分入りきる。それに、入らなければこの魔法のポーチに入れろ。空間魔法が刻まれてある。」
そう言ってポーチを差し出す。
「ベガ。」
「なに、お前は亜神の中でも【技】と呼ばれている龍神の名を継いだのだ。そんな、奴から物を盗もうなんて考える奴はいないだろう。」
そこじゃ無い。
俺が言いたかったのはそれじゃ無い。
「街って何処に行けばありますか?」
一瞬なにを言われたかわからない様な顔をしたベガ。
だがすぐにいつもの調子に戻る。
「この森から北上するとあるぞ。」
「ありがとうございます。」
より一層光が強まる。
「俺と仲間達で創り上げた国は遠い。世界を見て回る時に寄る機会があれば行くといい。」
「国の名前は?」
「【ヒラギス皇国】だ。覚えたな?」
「ああ、機会があれば行くよ。」
ベガの体が段々と光の粒になっていく。
「そろそろ時間の様だな。ではまたな、ソージ……違うな。【龍神のソージ】よ!」
「またいつか俺も神として会いに行くよ!」
「それは楽しみだな。」
嬉しそうに顔を歪める。
この顔を見るのも、もう当分無いんだな。
ふと、気付くと涙が溢れていた。
この世界に来て5ヶ月、ベガにはかなり世話になった。
怪我して治してもらったり、服を貰ったり、文字を教えて貰ったり。
この5ヶ月の様々な場面が蘇ってくる。
「フッ。ではまたな」
その言葉を最後にベガは完全に光の粒になって天に昇っていった。
俺はその光が見えなくなるまで、空を見上げていた。