継承の儀1
6/12本文を少し変えました。
「ソージ」
何時もの鍛錬兼、食料調達(魔物狩り)から帰ってきた俺にベガが珍しく声を掛けてきた。
「何だ?ベガ」
俺はベガの事はさん付けでは無く呼び捨て呼んでる。
さん付けで呼ばれるのはよそよそしくて嫌らしい。
ついでに敬語も辞めた。
無理してるのがバレバレらしい。
「お前がこの世界に来てから早5ヶ月が経った。この5ヶ月でお前はかなり強くなった。そうだな?」
この問いに対してハイと答えていいのか少し迷ってしまう。
強くなったと言っても俺はベガよりもまだまだ弱い。
果たしてベガの言う強くなったとはどこからのことだろう。
でも取り敢えず強くなったと言いたい。
気持ち的に。
「……あぁ。強くはなったよ。前に比べれば。」
「でもお前はまだ俺よりも弱い。これはきちんと理解してるな?」
「そこはわかっているつもりだ。」
俺がそう答えるとベガは何時ものむすっとした顔を嬉しそうに歪めた。
正直に言って怖い。
だが、嫌な笑みではない。
「そもそも転生して5ヶ月で俺を越えようと考えるだけ無駄だ。だが、今のお前は強い。それこそ、龍神を継がせても良いくらいに。」
「!でも、俺は…」
ベガよりも弱い。
そう言いかけて止められた。
「確かに何度も言う様に俺よりも弱い。だが強さだけが龍神ではない。俺も龍神と呼ばれ始めた時は今のお前くらいだった。それでも、俺は鍛錬を続けた。お前だってこれから鍛錬を続けると、そのうち俺を越える。」
そう言われて思い出す。
俺はベガに、何故国を出て行ったのか?と尋ねた事があった。
その時にベガは
『龍神となった俺は、その時から年をとらなくなった。だが、周りは普通に年をとって老いていく。自分だけ年を取らないと言うのは存外に辛いものだ。だから俺は早く誰かに後を継がせて、神界に行きたいのだ。そこならば、また姉上にも会えるしな。それに、神になれば死んだかつての仲間達とまた会う事も造作は無いしな。』
と言っていた。
つまりベガは自分の人生を終わらせたいのだろう。
自分だけ早死にするのも辛いが、自分だけ死ねないのもまた辛いのだろう。
「察した様だな。では話が速い。明日継承の儀を執り行う。そのつもりでいろ。」
「わかった。」
俺もいつかは今のベガと同じような気持ちになるんだろうな。
その時はきちんと現実を受け入れるだろうか?
この世界もまた楽では無いな。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
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